2017.12.02
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「保護者も巻き込んだ実践に」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

NIE実践の難しさ

 現在、勤務校でNIE(教育に新聞を)の活動を進めています。NIEは現在の学習指導要領でも、先日告示された新しい学習指導要領においても重要視されています。学習内容を社会との関連を意識しながら学ぶことができる大変良い資料となりえると考えています。

 勤務校があるさいたま市では、市教委と県のNIE推進協議会が連携し、さいたま市の全小中高等学校、特別支援学校でNIEが進められています。しかし、実際は学校によって温度差があり、新聞が効果的に活用されているとは言いがたい状況です。その要因として、児童の能力や保護者の考えではなく、指導をする教員の方が新聞活用に慣れていないためであると考えています。この現状を打破し、少しずつでもさいたま市の児童が新聞を活用して生き生きと学習できるようにしていきたいところです。

 「発達の最近接領域」として

 新聞活用がなかなか進まない原因として、「小学生には新聞は難しい?」という先生方の考えがあると思います。確かに、一般紙の新聞は中学校3年生ぐらいで読めるぐらいの語彙や文章のレベルであると言えます。しかし、新聞はすべて読めなくても、低学年の児童でも新聞写真などを活用して学習することができます。新聞には決まった活用法があるわけではないので、その分授業で使う難しさはありますが、反対に教師が工夫できる度合いが高いので、活用し甲斐のある教材であるともいえるでしょう。

 また、新聞は難しいと感じる際には、新聞を保護者と一緒に読んでもらうことも考えられます。私の実践では、東日本大震災の記事をもとに、日々の防災について考える活動を行ったことがあります。そこで、新聞記事を保護者と一緒に読んでもらい、考えなどを交流していただいたことをもとに、授業で話し合ったことを紹介する学習を取り入れました。少し難しい記事でも、保護者に補助してもらうことで児童の理解も深まります。

 これは、ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」であると、発達心理学の先生に教えていただきました。「発達の最近接領域」とは、児童が自分ではできないものの、大人の助けを借りてできる範囲のことであるとのことです。児童が、大人の助けを借りながらも、新聞から情報を読み取ったり、その情報から考えを深めたりする活動は、必ずその後の学習に生きてくると考えています。

児童・教師・保護者で学ぶ実践をしていく

 1月に勤務校で研究発表会を行い、私が国語科(NIE)の授業を公開します。そこでは、児童が新聞記事をもとに調べたいことを決めて、グループで調査活動を行い、分かったことを発表し合います。授業の中で資料として新聞をたくさん使います。そこで、保護者の方と一緒に家庭で新聞を読む活動も盛り込みました。保護者の方にも参加していただき、児童の学習がさらに充実するようにしていきたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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