2017.09.26
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考えのつながりから見えてくるもの

子どもたちの考えが分かれた時、ディベートのように「どちらか」と決めてしまうのはもったいない。違いをつなげることから新たな見えてくるものが出てきます。

京都教育大学附属桃山小学校 教諭 若松 俊介

5年生担任です。
国語では、もうすぐ「大造じいさんとガン」(椋 鳩十 作)の学習が終わります。
どの教科書会社にも載っている教材ですので、
一度は実践された先生も多いのではないでしょうか。

私の学級では、以前紹介させていただいたように、
子どもたちの「問い」から学習を始めています。

先日、学級で
「大造じいさんの『残雪に対する思い』が1番変化したのはどこか」
というテーマで話し合いました。

「が、なんと思ったか・・・」

→これまでの大造じいさんなら撃っていた。残雪のこともずっとつかまえたかったのに、そのチャンスを活かさなかった。ここに大きな変化のポイントがあらわれている。

「残雪の目には・・」「いきなり敵に・・」

→この残雪の姿によって、心が大きく動かされた。だからこそ、大造じいさんも打たなかったのである。これまでの大造じいさんなら、「チャンス!」と思って撃っていた。

「堂々たる態度」「最期の時を感じて・・」

→大造じいさんがいてもなお、頭領としての威厳を失わない姿に心を打たれた。「ここで撃ってはいけない」と感じた。最初に「たかが鳥」と思っていたが大きく変わった。

「強く心をうたれて・・・」

→直接大造じいさんの心情が描かれている。はっきりと分かるからそこが一番のポイント。「ただの鳥に対しているような気がしない」と、はじめとの印象が大きく変わっている。これまでの積み重ねで一番大きく変わった。

「迷っている」

→「ここで一番変わった」ということは決められないのではないかという考え。様々なことが積み重なって大造じいさんの心情は変化している。直接心情が描かれているのは「強く心を打たれて・・」のところぐらいである。

と分かれました。
ここで「ここが正解」と子どもたちは決めたがります。
だからと言って、ディベートみたいにしてはもったいないです。

それぞれの立場の子が
「どこを、どう読んで」
ということを話していくと、
物語の全体像が見えてきます。

授業後の子どもたちのふり返りを紹介します。

私は、この交流で、答えは様々なところにちりばめられていると考え、それにはつながりがあると思いました。
変化①のところをきっかけに、変化②に向けて少しずつ大造じいさんが残雪に対する気持ちが変わっていきます。
ここを答えがちりばめられた大切なポイントだと思いました。
また、めあての「変化」という言葉と①②のときの「変化」の言葉の違いは、こうして全体で交流したから気づいたのだと思いました。
①のところは、行動の変化だと思いました。
例えば、うとうと思った、でも打たなかったという動作の変化だと思いました。
でも「心情の変化だと思う」という意見もあったので読み深める必要があると思いました。
②の変化は残雪に対する見方が変わった変化だと思いました。
でも、やっぱり①が見方が変わったと思った人もいたのでここも深めていきたいです。
この交流を通して、1人読みの時は、「大造じいさんは強く心を打たれて、ただの鳥に対しているような気がしませんでした」のところが絶対にここだと考えていたけど、別のところだと思う人の意見を聞いているとこういう考え方もできるなぁと思い、自分の中でもやもや状態になってしまいました。
でも○○くんの「いくつもある」という意見を聞いて、確かにそうかもしれないと思い、徐々にもやもやが晴れていきました。
結局、この物語の大造じいさんが残雪を思う気持ちの変化は、様々な場所に散りばめられていて、1つにはまとまらないことがわかりました。
これからの話し合いで意見を1つにまとめようとせず、様々な方向から考えていきたいです。



交流した後にふり返りの時間をとることによって、
そこから学んだこと、読み深まったことを整理していくことができます。

「見方」の視野が広がることによって、
物語を読む時の世界が広がっていくことでしょう。

上の子どものふり返りにも、
次に深めたいことが書かれています。

子どもたちが探究的に読み深めていけるような場を
これからもつくっていきたいと思います。

若松 俊介(わかまつ しゅんすけ)

京都教育大学附属桃山小学校 教諭
「子どもが生きる」授業を目指して、日々子どもたちと共に学んでいます。子どもたちに教えてもらった大切なことを、読者の皆様と共有していければ幸いです。国語教師竹の会所属。

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