大学での子ども講座
夏休には各施設や大学などで小学生を対象としたイベントが開かれます。埼玉県新座市にある、十文字学園女子大学では昨年度より小学生対象に「新聞スクラップ」講座が開かれています。児童が新聞に親しみ、社会的な事象に対して興味関心をもってもらうために、同大学メディアコミュニケーション学科の石野栄一教授が企画をしてくださいました。その講師を私が務めることになりました。
普段は担当する学級の児童を主に指導しているので、どうしても慣れが生じます。そこで、初めてあう児童に指導することで、自分自身の指導の仕方についても見直すことができると考えました。また、1月の研究発表会に向けて、新聞を活用することが児童の教育にどのような効果をもたらすかを改めて考えるよい機会にもなると思いました。
これまでの経験を踏まえて指導
講座には大学近隣の市町村から小学生が21名参加してくれました。ほとんどの児童が学校で少しは新聞に触れたことはあっても、自分で学習する記事を選んだり、それをスクラップしたりする経験はあまり無いようでした。そこで、まず、新聞を使って学習することの意義を説明しました。
特に、学校で学習していることと社会的な事象との橋渡しになるのが新聞であることを強調しました。例として、4年生の算数で「a(アール)・ha(ヘクタール)」という単位を学習した後に、新聞でその単位を見つけてみることで、具体的に広さを実感することができることなどを挙げました。聞いている児童は、新聞をめくりながら、算数で学習した単位が記事の中でたくさん使われていることに気が付いていました。
その後で、いよいよスクラップ指導です。初めての児童も多いので、「記事を選ぶ段階」、「記事を貼りつける段階」、「記事の感想などをまとめる段階」と分けて指導しました。また、児童の座席も工夫し、同じグループの中で異学年を配置することにして、高学年の児童がアドバイスをしてあげられるようにしました。さらに、私が作ったモデルを示し、児童が迷わずに活動できるようにしました。これらの方策をとることで、初めての児童もスクラップを行うことができました。普段は担当する学級で行っている指導が、他の学校の児童にも有効であることが分かり私自身も大変良い経験になりました。
指導の成果と課題
今回、大学の子ども講座の講師を務めて、これから準備をしていく1月の研究発表会の公開授業に向けて、大きな成果がありました。それは以下の通りです。
・児童にモデルを示すことで、迷わずに活動できるようになる。
・児童に授業の流れをあらかじめ示すことで、児童が自分の活動を俯瞰し、きちんと時間内
に活動を終えることができる。
・新聞から自分が好きな素材を選ぶことで、児童が興味関心を高めることが分かった。
・少人数で協働の活動を取り上げることで、苦手な児童も課題をこなすことができることが分かった。
反対に課題としては、初めての児童ということもあり、一人ひとりに合わせた声掛けができなかったことです。もし、児童一人ひとりをよくわかっていたら、もっと適切な声掛けができたと思います。担当する学級では、より児童のことが分かっていますので、一人ひとりに合わせた声掛けや支援の方法をこれから考えていきたいと思います。
今回は、初めて指導する児童と活動を行い、大変良い勉強になりました。今後もこのような機会を積極的に作っていきたいと思います。
菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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