教師が新聞の活用を仕組む
先日公表された、新学習指導要領案では、現行の指導要領に引き続き、新聞の活用が重視されています。今回は総則にも新聞の活用が盛り込まれ、その重要性が認められています。また、新聞を学校に配置するための予算も増やされる予定です。
私の勤務するさいたま市では全国に先駆けて、NIE(新聞活用)に取り組んでいますが、現状は学校ごとに温度差があり、実践が全市にわたっているとは言い難い状況です。それは、指導をする教員が新聞にあまり親しんでいないこと、そして、新聞を教材化する感覚をもてていないことが原因なのではないかと考えています。そこで、私も少しずつ、新聞を活用した実践を広めていく必要があると感じています。
現行の指導要領では新聞の活用が重要視され、それは「教科書からの離陸」であると表現する方もいらっしゃいました。そこで、実際に児童を指導する教師が、意図的に新聞を活用する場面を仕組む必要があります。
既存の単元で新聞活用
現在の指導要領では、主に国語科において新聞の活用が盛り込まれています。中学年では「新聞を作る」活動が、そして、高学年では「新聞を読む」活動が例示され、教科書にも取り入れられています。しかし、教科書の該当単元でのみ新聞を取り上げるだけでは、本当の意味で、新聞を効果的に活用していることにはなりません。その他の学習場面でも積極的に新聞を活用していくことが必要であると考えます。
しかし、新聞を活用した新設単元を作ることは難しいことであると言えます。そこで、既存の単元において、新聞を活用できる場面を取り入れることが効果的ではないかと思います。普段は、新聞に親しんでいない教師でも、単元の中に取り入れることによって教材研究もしやすくなります。以下で、活用例を示したいと思います。
新聞を活用した単元例(「便利新聞を作ろう!」)
4学年国語科で、「ポスターを使って発表しよう」という単元(教育出版小4国語)があります。その前の単元で「便利ということ」という説明文があり、それを受けて、便利をテーマに調べたことを発表する学習が組まれています。この単元を活用して、「ポスター新聞」づくりを言語活動として設定した学習を計画しました。
前の単元において、児童は「便利」ということについて詳しく考えてきました。同じものでも、使う人によって便利でなくなる場合もあることを学びました。そして、「体の不自由な方にとっての便利」というテーマで新聞スクラップも行いました。次の単元の「ポスター新聞」づくりでは、体の不自由な方にとっての便利なものを紹介する目的を立てました。
児童は、まず身の回りにある資料や、教師が提示した新聞資料をもとに、調べてみたい課題を設定しました。普段は自分でなかなか課題を設定できない子も、いくつかの新聞例から調べてみたい課題を決めることができました。
「ぼくは、体を動かせない方のためのロボットスーツについて調べる。」
「わたしは、介護ロボットに関心があるので調べてみたい。」
「わたしは、耳の聞こえない方に映画の字幕を表示する機械を調べてみる。」
と、友達同士で、調べる内容について紹介し合っていました。その他、自分で本や身近なものから調べたいと思う課題を見つけてくる子もいました。
次に、設定した課題に対して調べることを明らかにした後で、調査活動を行いました。本やインターネットなどを主に活用して、詳しく調べていきました。その際に気を付けたことは、調べた情報の出所をきちんと把握することです。新聞づくりの際にも、きちんとその出所を示すようにしました。
情報が集まったら、新聞づくりです。事前に教師が出来上がりの新聞を提示し、イメージをもたせるようにしたので、児童はすぐに新聞づくりに取りかかることができました。自分の調べる課題について4~5つぐらいの記事をまとめ、読み手を意識してまとめていました。新聞づくりの行い方については、既習事項なので、その時の学習を振り返ることで、時間の短縮になりました。出来上がった新聞は廊下に掲示し、友達同士で見合えるようにしました。
教師の新聞活用力もアップ!
この単元の学習では、同じ学年の他クラスにも取り組んでもらいました。新聞を活用したことのない若い先生もいましたが、単元に関わる新聞を読むことで大変勉強になったと述べていました。既存の単元で新聞の活用を考えていくことが、NIEの広がりにも効果があると思います。これからも積極的に新聞を活用した学習を進めていきたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
同じテーマの執筆者
-
兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
-
京都教育大学附属桃山小学校 教諭
-
大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
-
戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表
-
小平市立小平第五中学校 主幹教諭
-
西宮市教育委員会 勤務
-
明石市立高丘西小学校 教諭
-
木更津市立鎌足小学校
-
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
-
愛知県公立中学校勤務
-
大阪大谷大学 教育学部 教授
-
神奈川県公立小学校勤務
-
寝屋川市立小学校
-
明石市立鳥羽小学校 教諭
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事

「教育エッセイ」の最新記事
