NIEに取り組む困難さ?
私の勤務するさいたま市では市の教育委員会と県のNIE推進協議会が協定を結び、NIEを推進しています。その内容は①各校への新聞提供(年に2回程度・42部)②新聞記者の講師派遣③研修会の実施です。行政と推進協議会が連携をして取り組む例はまれで全国的にも注目をされています。市民にも全市立小中高等学校、特別支援学校でNIEを実践していることをアピールしています。行政のバックアップがあると、学校でNIEに取り組む際に大変円滑に活動を行うことができます。また、保護者に対してNIEを説明する際にも理解を得やすくなるように思います。
しかし、必ずしもさいたま市の中でNIEが盛んにおこなわれているとは言えない状況があります。毎年行われる研修で先生方の話を聞いていると、
「新聞をどう使ってよいか分からない。」
「新聞を使う単元がない。」
「低学年では新聞は使えない」
「教科書で新聞が出てくる単元でのみ実践している。」
という話が聞かれます。NIEは教科等の指導と違って、教師が自分で工夫することが求められます。それ故に授業に取り入れる際に難しさを感じてしまうのではないかと思っています。先生がまず新聞に親しみ、新聞を使う「感覚」を磨いていかなければならないと感じています。
児童のスクラップを生かす
そこで、提案したいのが、今盛んに行われるようになった児童のスクラップ活動を取り入れることです。丸ごと一部の新聞から気に入った記事を選び、ノートなどに貼ります。そして、記事の要約や感想、考えたことなどを書いていく活動です。この活動は慣れてくると15分ぐらいでできるので、業前の時間などを活用して取り組むことができます。
児童は自分の興味関心に基づいて記事を選びます。児童がスクラップした記事を先生が読むことで、児童が関心のあることについて知ることができます。また、教科等の学習に生かせる素材も発見する機会になります。私自身も、児童がスクラップした記事の中から授業で取り入れる記事を選ぶことが多くあります。
今は若い先生が多くなり、新聞に親しんでいる方が少なくなっているようです。また、教師の仕事は忙しいので、ゆっくりと新聞を読んでいる時間もないでしょう。そこで、まずは児童のスクラップした記事を読むことから始められたらよいのではと考えています。
手軽に取り組める授業実践例
4年生の国語科で「点(、)の打ちかた」という短い単元があります。(教育出版4年国語下)この単元では、読点の打ち方の原則を学び、自分でも読点を打って分かりやすい文を書いてみることが学習内容として示されています。この単元でも新聞を活用してみました。
まず、児童のスクラップをして記事の中から全員が興味をもち、読みやすそうな記事を選びました。そして、児童と読点を打つ原則について学習をした後に、記事から読点を探す活動を取り入れました。すると、児童は夢中になって記事から読点を探し、積極的に発表をすることができました。
読点を探した後には、1つひとつ、その読点がどの原則に基づいて打たれているのかを考える活動を行いました。本当にあっという間の1時間で、授業が大変盛り上がりました。
このように、特に大きな準備をしなくても、手軽にNIEを取り入れることができます。まずは、児童のスクラップから学ぶことを提案したいと思います。
終わりに
現在、私自身、日本新聞協会のNIEアドバイザーとして、NIEを推進する立場になっています。これまでは、自分の実践を行うことに主眼を置いていましたが、これからは実践を積み重ねつつ、若い先生方に手軽に取り組んでもらえるような実践例を提供できたらと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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