2017.02.15
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

小学校英語で思考力を伸ばす! PART3「英語を使ってコミュニケーションをはかる方法とは・・・」

「逃げる」と言われる2月も半ばを過ぎました。年度末が近づくことを実感する頃だと思います。あせらず、次の学年につながるようなまとめをしていこうと自分に言い聞かせる毎日です。

 さて、昨日はバレンタインデーでした。子どもたちの中で意識している子も多かったのではないでしょうか。今回はその話題から。そして、「小学校英語で思考力を伸ばす!」PART3の情報提供を行っていけたらと思います。

倉敷市立連島南小学校 教諭 江尻 寛正

バレンタインデーって・・・

 日本では、女の子(女性)が好きな男の子(男性)にチョコレートをあげて告白するというイメージがあります。また最近は、「友チョコ」、「強敵(とも)チョコ」、「逆チョコ」、「自分チョコ」といった話も聞きます。

 ですが、バレンタインデーのそもそもの起源を子どもたちは知っているでしょうか。知る必要はないのですが、トリビア的な話(もう死語かもしれません…)を好きな子もいるものです。

 そして、ホワイトデーという日は外国にはほとんどないということを知っているでしょうか。これは、「えっ、そうなん?」という子も多いと思います。「じゃあ、お返しはどうするん?」と話題は広がることでしょう。まさにインフォメーションギャップがある話題です。

 また、ブラックデーという日があるという国の話を聞いたこともあります。「どんな日だと思う?」と聞けば、いろんな答えが返ってくることでしょう。

 このように、「バレンタインデー」という子どもたちの興味関心が高い外国文化を英語の授業の中で扱えば、必然性がうまれ、授業への取り組み方がアクティブになると思います。タイムリーなテーマとして扱ってみてはいかがでしょうか。

あこがれの人との突然の出会い・・・そんなときあなたはどうする?

 私は小学校に入学したときから大学卒業まで、ずっとサッカーをしていました。雑誌を毎月買い、当時はたまにしかなかったサッカー中継は必ず見て、行くことができる範囲で日本サッカーリーグの試合が行われる時は必ず観戦に行っていました。

 そんな私がサンパウロ(ブラジル)日本人学校に派遣になったのです。うれしさが分かると思います。でも、さらにうれしいことが現地でありました。赴任してそれほど経っていないので現地のポルトガル語はほとんど話すことができない頃の話です。なんと、FIFA最優秀選手を3度受賞しているロナウド選手とばったり会ったのです。日韓W杯の得点王であり、この時の髪型が“大五郎カット”として話題になった選手といえば、イメージが湧く世代の先生も多いと思います。ずっとサッカーをしていた私が、こんな超有名選手に会ったのです。この時の興奮度合いが伝わるでしょうか。

 さて、ここで一度小休止。

 ご自分にあてはめて考えてみてください。

 すごく憧れている人(スポーツ選手でも、女優・俳優さんでも、アイドルでも)が目の前に突然表れたことを想像してください。しかも、その人は日本語が通じません。もちろん英語もです。

 さあ、あなたはどうしますか?

小学校英語で育てる力は「コミュニケーション能力」

 私のブラジルでの経験は小学校で育てたいコミュニケーション能力とつながっていきます。英語という言葉を覚えることが授業のゴールではなく、言葉を使って人とかかわることができる力を育てていくのが英語教育だからです。

 ともすると、「大きな声で言わせなきゃいけない」「発音よく言わせなきゃいけない」という部分に力が入りすぎて、この本質を見失うことが私はあります。だからこそ、時々はこの経験を思い出して自分に言い聞かせるとともに、子どもたちには帯学習としてコミュニケーションをはかる時間を確保するようにしています。

コミュニケーション能力を育てるために4段階のスパイラル!

 コミュニケーション能力を高めるために行っている帯学習を紹介します。

 私は4段階で考えています。

  LEVEL1  ペアトーク(日本語)

  LEVEL2  ペアトーク(日本語禁止)

  LEVEL3  Change Game

  LEVEL4  Talk Time

 LEVEL1とLEVEL2は朝の会に行います。小学校担任だからこそできる取り組みだと思います。詳細については以下の記事をお読みください。

 担任だからできるコミュニケーション能力の素地の育てかた PART2!

 LEVEL3とLEVEL4は英語の授業の最初に帯学習として行っています。

 LEVEL3のChange Gameについては以下の記事をお読みください。

 小学校英語を“学習”にする方法 PART2(モジュール活動実践紹介)

 LEVEL4のTalk Time(記事の中ではPair talk challenge)については以下の記事をお読みください。また、Talk Time2も読んでいただけたらと思います。

 外国語活動の授業の実際 PART2

 小学校英語を“学習”にする方法 PART3(モジュール活動実践紹介)

 これらの取り組みを継続して行うことで、子どもたちは「うまく伝わらない…」という経験をして、「もっと伝えたい」という意欲をもっていきます。そして、「どうすれば伝わるんだろう」と思考しながら試行し、「こうすれば伝えられる」という自信もつけていきます。

継続は力なり

「イギリスでは3歳の子どもも英語を話せるんだよ。」

 こう子どもに話すと、「すげーっ!」と驚いてくれることがあります。まあ、担任におつきあいしているだけだと思いますが…。この話で伝えたいことは、「言葉は、“学ぶ”だけではなく、“使う”ことで話したり聞いたりできるようになる。」ということです。

 これから教科化をむかえるにあたり“定着”といった部分も大切になってくると思います。その時に、「英語を覚える」という視点ではなく、「コミュニケーション能力が身についているかどうか」という視点を忘れてはいけないと思います。そして、そのために行っている取り組みが本当にコミュニケーション能力の伸長につながるものかどうかをいつもチェックしておく必要があると思っています。

P.S.

 結局、ロナウド選手とは、数個のポルトガルの単語と大きな大きなジェスチャーと熱い気持ちをフルに動員してコミュニケーションをはかることができました。ロナウド選手も「Yokohama! Yokohama!」と日韓W杯のことを日本語で言おうとしてくれました。そして、2人で写真を撮り、サインをもらい、最後は一緒にビールで乾杯をしました。私にとってこの経験は「英語教育を充実させて、子どもたちのコミュニケーション能力を伸ばしていきたい!」というモチベーションになっています。

江尻 寛正(えじり ひろまさ)

倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。

同じテーマの執筆者
  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop