2016.07.04
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小学校英語を”学習”にする方法 PART2(モジュール活動実践紹介)

倉敷市立連島南小学校 教諭 江尻 寛正

 前号では”学習”する時に大切にしたいことについて紹介しました。今号では、具体的な実践を紹介したいと思います。

 

前号のふりかえり

私自身が大切にしている”学習”のポイントは次のようなものです。

 

 ○意味のある繰り返しを行う(必然性・達成感が生まれるようにする)
 ○双方向のコミュニケーション活動を仕組む(ビデオで終わらず、人とのやりとりを行う)
 ○言葉を使う場をイメージできるようにする(話す・聞くではなく、使う視点を大切にする)

 

こういった要素をできるだけ入れるような活動を行っています。

 

Change Game

外国語を使ってコミュニケーションをはかる場合、自分が言いたいことを言葉で表すことができなくてはがゆく思うことがあるものです。

例えば、好きなものを尋ねられた時、「霜降り牛肉が好き」と頭に浮かんだとします。でも、”霜降り”の部分を英訳することは難しいわけです。だから違う単語を使って伝えることになります。またはジェスチャーをしながら”舌の上でとろける”といったことを表すかもしれません。とにかく、言いたいことを言い換えて伝えることが必要不可欠になります。

これをゲームにした活動が”Change Game”です。

 

(1)ペアをつくる。
(2)ジャンケンをして、負けた子たちが顔を伏せる。
(3)勝った子たちに対して、教師がピクチャーカード(または文字)を見せる。

 例:警察官のピクチャーカード(または「警察官」と書いたカード)

(4)勝った子は何のカードだったかを”Police”という言葉を使わずに20秒以内で伝える。

 例:Car,Black,White,Red  または「Speed Over "No!!!"」と言いながらジェスチャーをする

(5)20秒後に何を伝えようとしていたかを負けた子たちに聞く。
(6)”Police”という答えを全体に伝える。
(7)役割を交代して行う。

 

この活動はまさに”コミュニケーション能力の素地”を養うものだと思います。

私自身がブラジルで生活をしている時がまさにこうでした。

自分が言いたいことはポルトガル語では言えないけれど、伝えたいことはある。だからこそ、自分がもっている力を全て使って伝えようとする。そして相手は、何とかわかろうとしてくれる。

「外国語で相手と話す時は、こうやって何とか伝えようとすれば分かってくれるよ。」
実際に外国語でのコミュニケーション場面とつなげてやるのが効果的だと思います。

そして、自分が何とか伝えようとしたことが伝わったかどうかが実感できます。

「やった!言いたいことが伝わった!」
この実感が生まれた時、「次も何とかしたい!」「もっとうまく伝えたい!」という気持ちになると思います。

 

現場の役割として

私が見てきたモジュール活動は”定着”がメインになったものが多かったです。

例えば、前の45分授業で扱った単語を復習するために行うものです。具体的には、「前の授業で果物を扱ったので、その単語をキーワードゲームやミッシングゲームで再度行う。」というものです。もちろんこれは、単語を知っておくことで次の授業がスムーズに進むという教師の優しさだと思います。

ですが、モジュールでこそコミュニケーションを大切にしたいと私は思っています。

回数が多くなるからこそ、「英語を覚えること」よりも「英語を使うこと」を中心に活動することで、子ども自身も「英語を使ってコミュニケーションをはかることが大事なんだ」と実感できると考えるからです。「英語でたくさん言えるようになった」という機会よりも、「英語でたくさん伝えることができた」という機会を増やしたいと思っています。

 

私自身、英語は学習の対象として学んできました。だからこそ、あえて意識しておかないと自分の経験が前に出た授業になってしまいます。「1つでも単語を多く言えた方が・・・」「きちんとした表現で言えた方が・・・」といったことです。でも、小学校で英語(外国語教育)が始まった主旨は、そうではなかったはずです。指導要領の主旨を授業で具現化し、子ども自身と共有していくことが現場教師の大切な役割だと思っています。自戒をこめて。

 

次号でもモジュール活動で私が行っている実践を紹介していきます。

江尻 寛正(えじり ひろまさ)

倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。

同じテーマの執筆者
  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

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