2015.03.30
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外国語活動の授業の実際 PART2

倉敷市立連島南小学校 教諭 江尻 寛正

小学校5年外国語活動「買物をしよう」指導案

 BRASILの風(9)

 前回の解答から。

 ブラジルの子どもたちが気持ちの良いあいさつをするようになるのはどうしてか?

 特に統計的な解答があるわけではありません。ただ、私がそう感じたという解答です。

 それは、「あいさつの本質をついている」ということです。

 私がブラジルに住んでいたとき、大衆飲み屋に行きました。店の人と言葉を交わし、楽しい時間を過ごしました。そして、支払を済ませて店を出ました。

 その2週間後、再び同じ店に行きました。その時の店員さんの対応に驚きました。「Oh~っ、HIRO~!!!」と、まるで数十年ぶりに会った旧友のように声をあげ、涙目になった店員さんとハグをして再会しました。私は、喜ぶのと驚くのとが同じぐらいでしたが、とてもうれしい気持ちでした。

 それ以来、その店に行くと、毎回私も数十年ぶりの出会いのようなあいさつをすることになったのは言うまでもありません。

 あいさつは”する”ことが目的ではありません。それなのに、「自分から」「大きな声で」「笑顔で」と、形式だけを教え込まれることで、逆にやりたくなくなるのかもしれません。心理的リアクタンスですね。本来なら、”お早う御座います”という言葉には、相手を気遣う気持ちが込められているはずです。それが相手に伝わることが大事ではないでしょうか。

 これを日本の学校に当てはめるなら・・・

 子どもを迎えるときに、「あいさつをきちんとしなさい」という目で見るのではなく、「今日も学校に来てくれてうれしいぞっ!!!」という目で見ることができれば、何かが変わると思います。出会いを喜べる相手だったら、必ず自分からあいさつしたくなるはずです。大人がまずそういう存在になっていくことができれば・・・自戒をこめて。

 

 

 外国語活動の授業の実際 PART2

 前回は「モジュール活動」での Question time について紹介しました。

 今回は Pair talk challenge について紹介します。

 指導案は冒頭の写真です(リンク先の「指導案&アイデア集」でお読みいただけます)。

Pair talk challenge(「英語を話したい」という願いをかなえよう)

 Question time では、教師が子どもに既習の表現を使って、質問を投げかけます。

  ”What color do you like?”

  ”What food do you like?”

  ”Do you like apples?”

  ”How many pencils do you have?”

  ”Can you swim?”

 それに対して、子どもが班ごとに答えていきます。

 これをベースにして、2人組での Pair talk を行います。

 

 まずは、今日のタイム設定を決めます。30秒から10秒刻みで60秒まであります。

 決まったら最初の質問を発表します(例: How old are you ?)

 その質問をスタートにして、2人の英語だけでの会話が設定時間の間、続けられるようにします。その時には、先程まで教師が発話していた表現を使うことができます。

 

 ”What color do you like?”

  ”What food do you like?”

  ”Do you like apples?”

  ”How many pencils do you have?”

  ”Can you swim?”

 

 設定した時間が来たら、達成できたかどうかを子どもに問いかけます。続いたところがあれば、拍手をしたり、” Good job! "と賞賛したりすると良いと思います。

 でも、ここで終わりではありません。

 質問するだけではコミュニケーションとは言えないと思います。

 ここで大切なのが、冒頭のあいさつの話です。

 形式的なものだけを教えるのではないということです。

 私は設定時間が終わった後、「友だちの良かったところを発表してください。」と子どもたちに投げかけるようにしています。

 そうすると、「ジェスチャーを使って伝えてくれた。」「答えに困っていると、質問を変えてくれた。」「ずっと笑顔だった!」「うなずきながら聞いてくれたからうれしかった!」といった言葉が並びます。教師の立場としては、コミュニケーションをはかる際のポイントを引き出すことができるし、子どもの立場としては、良いところとして友だちに発表されるとうれしいし、次へのモチベーションにつながります。

 形式を覚えることよりも、相手を思いやること。

 コミュニケーションの大事な部分だと思います。

 

 終わりに

今回が私のレギュラーでの執筆の最後となります。

小学校外国語活動の変革期にあたる今、情報発信をすることで誰かの一助に少しでもなればという思いでした。実際、「読んでいます」「参考になります」という声を聞くことができ、とてもうれしい気持ちでした。今回も「レギュラー執筆の降板を残念に思う」という連絡もいただき、恐縮するとともに、喜びの気持ちでいっぱいです。これからはイレギュラーでの執筆を行っていきたいと思います。

 

小学校での外国語教育は、大きな大きな変革期を迎えています。

私も自分に与えられた役割を精一杯に取り組んでいきたいと思っています。外国語教育に興味がある方とは、いろいろな場所でお会いすることでしょう。一声かけていただければと思います。

今までありがとうございました。

江尻 寛正(えじり ひろまさ)

倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。

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  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

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