好き嫌いのある児童が多い課題
11月には勤務する学校で「給食月間」の取り組みがあります。勤務校のある埼玉県でも県を挙げて、地産地消の取り組みに重点を置き、埼玉県の野菜のよさや昔から伝わる郷土料理を紹介する取り組みなどを行っています。
現在担任する学級では、好き嫌いのある児童が多く、給食の残菜が毎日出てしまうことが課題となっています。私自身、担任としてこれから成長期を迎える児童には、好き嫌いなく何でも食べ、健康に成長していってほしいと願っています。そして、食事を作ってくれた調理員さんたちの気持ちを考えたり、食材を作っている方の思いを感じたりしながら給食を食べることで、心も成長させてほしいと思っています。しかし、思うようにうまくいかないのが現状でした。
子どもたちは「適応」している
これまでも、同じような課題を持つことがありました。そのような時に、海外の飢餓で苦しむ子どもたちの写真を見せたり、統計資料で食事ができない子どもがどのくらいいるかを示したりしていました。しかし、このような指導はあまり効果をあげませんでした。
私が尊敬する、元総持寺で後堂をしていらっしゃった、野田大燈老師は講演の中で、
「引きこもりが多いということが問題になっている。しかし、それはそういう環境に適応しているからだ。環境を変えていかなければならない。」
というお話をされました。このお話を聞いて、私は、これまで食事ができない子どもの話をして、給食を残さないようにという指導をしてきましたが、担当している子どもたちは(私自身もですが)食べ物に困ることがない状況にあり、嫌いなものは捨てても問題はない状況に適応しているので、「食べられなかったら・・・」という話をされてもそのことを想像できないのではないかと考えました。
「NIE」で食育を
そこで考えたのが、子どもたちと食べ物(特に野菜)の距離を短くし、野菜に対する興味を高めることが有効なのではないかということです。担当するクラスでは日常的にNIE(教育に新聞を)の活動に取り組んでおり、新聞に親しんでいます。そこで、新聞を使って野菜に興味をもたせる取り組みをしました。
小学生新聞には学習用に、野菜の産地や栄養などを取り上げて紹介するコーナーがあります。これは、主に5年生の社会科で産業について学習する資料として使われますが、この資料を活用して食育に取り組むことにしました。
具体的には、その日の給食で出されるメニューの中でメインとなるものに使われている野菜をピックアップし、朝の会で紹介します。特に、栄養面や産地について紹介し、その野菜について関心をもたせます。
そして、給食の際にはその野菜をよく味わい、レポーターになったつもりでコメントを書かせるようにしました。子どもたちは、
「ニンジンのやわらかさが、大豆の食感を引き出していた」
「かぼちゃの甘みが、スープの味をさらによくしていた」
など、本当のグルメリポーターのようなコメントを書いていました、
さらに学習を発展させて
今回の取り組みで、少しずつですが、残菜の量が減ってきています。給食月間の間、この取り組みを続けていきたいと思います。また、3学期には県の野菜作りを学習する社会科授業があります。その授業ともリンクをさせ、今回学習したことが、有機的に教科の学習にも生きてくるようにしたいと考えています。
菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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