2016.11.26
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「学習と生活が新聞でつながる」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

生活とリンクする学習を

 現在、新聞を活用した学習(NIE)に積極的に取り組んでいます。新聞は社会の縮図であり、今どのようなことが社会で起こっているのかを知ることができます。そして子どもたちが、自分で新聞から素材を選んで学習することができます。授業においても、新聞を積極的に活用していますが、それは、学習していることが社会の中でどう生きているかを子どもたちに感じてもらいたいと思うからです。

 新聞から授業で学習することと関連のあることを紹介すると子どもたちはいつも目を輝かします。以前、尊敬してやまない無着成恭先生が私に、

「子どもは今も昔も、真実を見せられた時に目を輝かせる」

とおっしゃったことがもとになっている気がしています。

 次期学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」ということが重要な視点となるようです。社会に開かれるとは子どもたちの生活と学習がリンクした授業をしていくことであるととらえています。そのことを念頭に置いて指導を進めていきたいといつも考えています。

算数「概数」の学習で

 担当する4年生で算数の概数を指導しました。子どもたちが概数のよさを理解し、実際に四捨五入を行いながら複雑な数字を概数に直す学習を行います。この学習においても新聞を活用しました。

 まずは、新聞記事の中から概数を見つける活動です。新聞では記事の中には正確な数字になっていることが多いのですが、見出しには概数が使われていることが多くあります。新聞を配ると、子どもたちはすぐに概数を夢中で探し出しました。

「先生、約30億円とあるよ」

「約2000人という概数があったよ」

と、楽しそうに報告をしてきます。そして、うれしいことに、

 「先生、これは熊本地震で避難をしている方の数だよ」

 「これは会社の損をしたお金の値段みたいだよ」

 「これは東京オリンピックの会場をつくるのにかかるお金みたいだよ」

などと、見つけた概数の意味を捉えていました。このような活動を通して、子どもたちは自分が学習している概数の有用性を理解するのではないかと考えています。

社会科の学習で

 4年生の社会では、県の産業について学習をします。また、前学年でスーパーの仕事を学習し、スーパーの方の仕事について詳しく学びました。その学習とも新聞を関わらせる実践を行いまいました。

 ちょうど、学校で「給食月間」に入るところでしたので、給食の献立表を見ながら子どもたちとどんな野菜が給食で使われているか、また、どんなところから食材が運ばれているかなどを確認していました。すると、来月の給食に全く「ピーマン」が使われていないことに気が付きました。そこで、野菜に関する新聞記事を探してみると、台風の影響で野菜の値段が高騰しているというものを見つけました。

 子どもたちは、すぐにスーパーのチラシを見たり、保護者に野菜の値段について聞いたりしながら調べ始めました。そして、継続して、スーパーでピーマンの値段を調べていくことになりました。

 このように新聞記事やチラシをもとに学習した内容と関連付けることによって、子どもたちの学習意欲が高まります。きっと子どもたちにとってはスーパーも教室になるのではないかと感じています。

結びに

 次期学習指導要領では「アクティブ・ラーニング」が重要な事項として取り上げられます。しかし、子どもたちが夢中になるためには、単に子どもたち主体に学習を進めるだけでは成り立たないと感じています。普段から、子どもたちが学習に対して興味関心をもてるような工夫が必要だと思います。そのためにも、新聞を活用することは有効です。これからもさらに実践を深めていきたいと思います。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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