2016.10.17
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探究的に学ぶ意欲を受け止める

京都教育大学附属桃山小学校 教諭 若松 俊介

先日、本校では理科の授業(3年「豆電球にあかりをつけよう」)で校内研が行われました。

本校の研究主題は、
・自らの学びを深め、探求していこうとする子の育成
研究の柱は、
・一人ひとりが主体的、意欲的に学習に向かうための課題の持たせ方
・子ども同士の学び合いが活発になるための教師の役割
です。

授業や研究討議を通して、探究的に学ぶ子をどう育てていくかについて考えさせられました。

今日は、少し理科の授業でのことを書きたいと思います。
昨年度、私は5年生の子ども達を受け持っていました。
理科では「植物の発芽・成長」の条件についての学習があったのですが、
どのような実験をしていくか考えていく時に、

「先生、豆腐の上で発芽の実験をしたい。」

と言ってきた子がいました。
冗談ではありません。本気の目をしています。
皆さんは、その子がどうしてそんなことを言ってきたと思いますか?
「ふざけているのでは?」とは思いませんでしたか?

私も最初はその意図がよく分からなかったので、
「どうして?」と聞いてみると、

「豆(発芽させるインゲン豆)と豆(豆腐)で、より発芽・成長しやすいと思ったから」

とのことでした。
皆さんならどうしますか?
私は、「子どもってこんな発想するんだなぁ。」ととても驚かされました。
子どもの発想力に感心したぐらいです。
だからこそ、学級の皆で「どうなるだろう。」と考えた後に、
実際に実験してみることにしました。
(もちろん、教科書に載っているような実験も行っています。)

結果は・・、
やっぱり発芽も成長もしませんでした。
しかも豆腐は腐ってしまうことに・・・。

ただ、そこで終わらせては学習にはなりません。
子ども達は、冷蔵庫に入れて実験した豆腐は腐らなかったことに目を向けました。
・腐る時と腐らない時の違いは何なのか。
・なぜ発芽・成長しなかったのか。
という疑問から、
・「腐る」ってマイナスのイメージだけど、「菌の発生・成長」と捉えたら、豆の発芽や成長の条件と似てくる。
・豆が水を吸収して発芽・成長していくためには、表面が少し濡れるだけはダメ。
・発芽からさらに成長していく上で、根を張っていくために土などが必要。
・発芽、成長していくための栄養は、それぞれの場面で適切に与えられていくことが必要。

・・といったことに気づいていきました。

もちろん教科書通りの学習も大切だとは思いますが、
子ども達の発想から出てきたことをしっかりと受け止めることによって、
さらに気づいていくことや、日常生活でのあらゆることに目を向けていくことにつながりました。

理科が専門の先生からすると、
「こんな授業はあかん」と言われるかもしれません。
ただ、この授業をしている時は、
子どもも私もワクワクして面白かったです。
それって結構大切なんじゃないかなと思います。

子どもと一緒に学ぶ意識を持っていると、
教師も改めて学ぶことがたくさん出てきます。
もちろん教材研究をしっかりと行っておくことが大切ですが、
子ども達って教師の想像の枠を平気で乗り越えます。
その時に、教師の枠でおさめてしまうのか、
子どもの広がりを大切にしていくのかで、
「探究的に学ぶ」力が育つかどうかが決まってくるのだと思います。

これからも「子ども達と共に授業をつくる」というイメージで、
一人ひとりの探究意欲を受け止め、成長させていきたいなと思います。


若松 俊介(わかまつ しゅんすけ)

京都教育大学附属桃山小学校 教諭
「子どもが生きる」授業を目指して、日々子どもたちと共に学んでいます。子どもたちに教えてもらった大切なことを、読者の皆様と共有していければ幸いです。国語教師竹の会所属。

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