
目的に応じて読む力をつける
4学年国語科で、「ウミガメの命をつなぐ」という説明文(教育出版)があります。この説明文では、愛知県の名古屋港水族館が絶滅の危機に瀕したウミガメを保護する活動を行っていることや、ウミガメの生態について詳しく研究していることなどが説明されています。ここでは、説明文の要約をするという言語活動を取り入れて、自分が紹介したいことに合わせて、説明文から必要な情報を得ながら読んでいくという学習が行われます。これまでの説明文の学習では、段落ごとに大事な文を抜き出してまとめたり、段落のつながりを考えたりするということが多かったのですが、ここでは、「紹介したいこと」に必要な情報を主体的に読み取る能力が求められます。
新聞の活用で意欲を高め読解に生かす
この単元の学習に際して、まず、積極的に新聞を活用していきました。名古屋港水族館でウミガメの卵を人工的に育てている記事や、ウミガメを放流してその動きを調べていることが報道されている記事を児童に示しながら、説明文の内容に興味関心をもたせました。まだ、4年生児童には新聞記事をすべて読むのが難しいので、記事に付けられている大きな見出しや写真、そして図や地図などをもとに分かることを話し合うようにしました。それらを見るだけでも、記事の大まかな内容を理解することができます。記事を通して、名古屋港水族館の取組を知ることで、説明文の内容を理解することにも役立ちました。また、この単元で一番の課題である「要約」に関しても、新聞記事の見出しを参考に考えることができました。
読む課題をつかむ児童
新聞記事を補助資料として使いながら、説明文を読み始めた児童の次なる課題は、自分が紹介したいと思う内容に合うことを説明文の中から抜き出す作業です。児童の立てた課題(紹介したい内容)は以下のものです。
・水族館の取り組みについて
・人工的に卵を産ませる難しさ
・ウミガメの長い旅
・飼育員さんの工夫
・名古屋港水族館の研究で分かったこと
児童は自分の課題に合わせて、説明文の中から必要な情報を探していきました。これまで、新聞を活用した取り組みで、大事だと思うことを見出しにする活動に取り組んでいるので、説明文の中からしっかりと必要な情報を得ることができました。
「接続語カード」で論理的に要約する
必要な情報が見つかったら、それらを結び付けて要約文にしていきます。そこで活用したのが、「接続語カード」です。児童は20の接続語が書かれたカードをもち、抜き出した情報をどのようにつなげるかを考えながら要約文をまとめていきました。接続語を意識することで、スムーズに抜き出した内容をまとめることができたようでした。
今回の学習では、新聞記事をもとに、児童の興味関心を高め、要約についても意識させることができました。これから、自分の目的に応じて読む力がこれまで以上に求められてきます。そのために新聞は有効なツールになりえることを改めて感じました。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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