さいたま市で行われている「NIE」
さいたま市では、23年度より、市の教育委員会と県のNIE推進協議会が協定を結び、すべての小中高校・特別支援学校でNIEを行っています。しかし、実際は学校での実践に温度差があり、どの学校でも充実した学習を行っているわけではありません。毎年行われている研修会での報告を見ても、教科書で新聞を扱った単元の学習のみの指導で終えている学校が多いように思います。今年度、私の勤務する学校が、日本新聞協会のNIE実践指定校になりました。さいたま市のNIEを充実させる意味でも、実践を幅広く紹介していきたいと考えています。
本校でのNIE
本校でも、これまであまりNIEが実践されてはいませんでした。NIEという言葉すら知らない先生方もおり、まだまだ新聞を活用した指導が未経験の方もいらっしぃました。実際に行われていた学習としては、国語の単元で新聞を作ったり読んだりする活動のほか、社会科の調べ学習のまとめとして新聞づくりを行うぐらいの活動でした。
これからNIEを充実させていくためには、児童が教科の枠を超えて日常的に新聞に親しめる環境を作らなければなりません。そして、そのためには、児童の指導を行う教員が新聞に親しまなければいけないと考えています。本校では毎年新採用の教員が赴任し、大変若い教員集団になっています。毎日、朝早くから夜遅くまで勤務し、きっと新聞をゆっくり読む時間などもてないようです。
NIEは素材の宝庫
新聞には授業の素材となる資料やアクティブ・ラーニングのヒントとなる素材が多く掲載されています。例えば、「台風で北海道の野菜が打撃を受けている」という記事をもとに、地域の新聞で野菜の値段の移り変わりを調べたり、実際にスーパーに行って調べたりする活動ができます。そのような深い授業を作る意味でも、新聞に親しむことは必要です。
また、新聞は言ってみれば、料理で言う食材のようなものです。料理人である教員の活用次第でいろんな使い方ができます。和食・中華・イタリアン・・・といろんな素材として活用することができます。これからアクティブ・ラーニングが重要であるといわれます。そのためには教師自身がアクティブに教材探しをしなければならないと考えています。新聞の活用はまさに、教師のアクティブ・ラーニングにつながるのではないでしょうか。
研修会の実施
そこで、研修会の時間を活用して、先生自身が新聞に親しむ活動を行いました。具体的には、児童に紹介したい新聞をスクラップし、コメントを書くという作業です。忙しい合間でしたが、参加した教員は楽しそうに活動に参加し、それぞれの校務に合わせた記事を選び、児童に紹介するスクラップ新聞を作ることができました。
作成したスクラップ新聞は昇降口に掲示し、児童がいつでも閲覧できるようにしました。児童は先生が作ったスクラップ新聞を熱心に見ていました。これまで、掲示してある新聞の1面コーナーには目もくれなかった児童も、先生の選んだ記事とその解説を読んでいます。教師が記事にコメントを入れることで、児童の関心を大いに引くことができることが分かりました。これからもこの活動を続けていきたいと思っています。そして、少しずつ、授業の実践においてもNIEを充実させられるようにしていきたいと考えています。

(本校のNIEコーナーです)

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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