「教える・教わる」から「気づく」外国語科指導へ (前編) 西宮市立甲陽園小学校「英語」授業リポート
西宮市立甲陽園小学校で専科教員として英語の授業を担当している羽渕弘毅教諭。小学校の思い出の発表を通じて学校の魅力を英語で伝えるパフォーマンス課題を設定し、英語使用者の育成に取り組んでいる。2022年10月、羽渕教諭が担当している6年生の英語の授業を取材した。
●授業概要
学年:小学校6年生
教科・単元:英語「My Best Memories ~小学校の思い出を伝える~」
指導者:羽渕 弘毅 教諭
使用教材・教具:大型ディスプレイ、タブレット端末(1人1台)
テンポよくウォーミングアップ
「みんな、タブレットの準備をして!」
38名と人数が多いため、教室は子どもたちで賑わい活気づいている。始業のチャイムが鳴り響くと、羽渕教諭のかけ声で授業が始まった。初めの15分はウォーミングアップをする。
○Story
「前回の続きから!」
大型ディスプレイにデジタル教科書が表示され、青い鳥を探す二人の物語”The Blue Bird”が2回再生された。聴き終わると、子どもたちが拍手をした。
「いい話だったね。キーフレーズを確認しましょう!」と羽渕教諭。
Happiness is always here with us.
「Hapinessは幸せ、alwaysの意味はいつも。」
3回目の再生時、「次、来るよ!」キーフレーズが再生される直前に羽渕教諭が注意を呼びかけた。
○Enjoy Reading & Word Chants
次はEnjoy Readingへ。チャンツのリズムに合わせて、子どもたちがデジタル教科書の文を読み上げていく。
I am tall.
I have long legs.
I have a long neck.
Are you a giraffe?
Yes, I am.
「じゃあみんな、3回読んでみよう!」
各々が3回読み終わるとすぐにWord Chantsへ。
大型ディスプレイには、絵とともに次々と形容詞が表示され、リズムに合わせて全員で語句を読み上げる。
「small!」「short!」「happy!」「nice!」「interesting!」
羽渕教諭が質問し、リズムよく答えていく。
「fast or slow?」「fast!」
「small or large?」「large!」
○Talk & Quiz
「今日の日直は誰かな?今日のクイズはこれね!」
日直の子はディスプレイを見ないように促され、つちのこの絵が表示された。子どもたちの歓声が上がる。つちのこをどうやって英語で表現するか、子どもたちが考える時間だ。
「ペアで相談してください!」
子どもたちが相談を始める。「animal?」「strongかな?」
相談が終わると発表の時間だ。「fantasy snake!」「Japanese monster!」
「つちのこ?」日直の子どもが答える。
「正解!!」
○Listen&Talk
その後、Listen&Talkへ。ディスプレイに表示された絵と表現を、元気に歌うように読んでいく。
「今日のトークテーマは、Where did you go last weekend?」
I went to the lake.
I saw a rainbow.
I enjoyed swimming.
I ate icecream.
中学校で習う過去形になるが、授業中に「過去形」という言葉は一切出てこない。文法というルールにとらわれずに表現方法を覚える授業だ。
「では今日のペアトーク!じゃんけんで勝った人はペアに質問してね。」
Where did you go?
What did you eat?
What did you enjoy?
「じゃんけんで負けた人は質問に答えよう。Hiroshima!じゃなくて、まとまりとして答えてね!」と羽渕教諭。
ペアで質問し合う子どもたち。「What did you eat?」「I ate ぱりぱりやきそば!」「めっちゃ日本語やん!」笑い声が漏れる。
「I ate しょうがやき」と答えると、「I like すきやき!」とペアの子どもが笑顔で返した。
本時の活動
中間発表のふりかえりと、こまっトーク
「今からみなさんにプリントを返します。中間発表の自己評価ですが、1ヶ月後の目標、ゴールを書きましょう!」
「じゃあ次は、こまっトーク!カイル先生の小学校の思い出を聴きましょう。動画を観て、いいところ、アドバイスがあれば書いてね」
この動画は中間発表の際に多く見られた、聞き手に一方的に話しているB評価の例を実演したものだ。この動画にアドバイスすることを通して、自分の発表をさらに良くすることがねらいである。
大型ディスプレイにはALTのカイル先生が映し出された。常駐の先生ではないので今日は不在だが、録画ビデオでの登場となる。
「カイル先生!」と喜ぶ子どもたち。
カイル先生が、自身の小学校の思い出について話している動画が再生された。動画が終わると子どもたち全員が拍手していた。
「アドバイスはある? いいところは?」再び問いかける羽渕教諭。
「イケメン!」
「2回目、流しますよ!」動画が再生され、羽渕教諭が問いかける。「アドバイスは?」
「もっとカメラ目線で!」何人かが答えた。
「もう1回流すね!」動画が再び再生された。
「では班で作業してもらいます。アイデアを出して、アドバイスを完成させましょう!1番の人はアイデア担当。タブレットを開いて動画を再生して!動画のところに原稿も入っています。2番の人は時間、3番は進行、4番は記録。班のアドバイスをまとめて書いてあげて」
お互いの画面をのぞき込みながら、4人グループでの作業が始まった。羽渕教諭の英語の授業ではMicrosoft Teamsを活用し、全員でファイルを共有しているので、大型ディスプレイには全グループの記録係が入力したアドバイスの内容がリアルタイムで表示される。
「他の班が気づかないところに注目して!改行してどんどん入力していってください!OK!では机を元に戻して、タブレットを閉じて。順番に見ていこうか」
子どもたちが入力したカイル先生へのアドバイスは以下の通り。
・カメラ目線でゆっくりしゃべる
・質問を入れる
・楽しそうにしてほしい
・写真などを用意する
・笑顔で声を大きくしてしゃべって
「じゃあ、もっと発表を良くするために、どこに質問を入れる?」羽渕教諭が問いかける。
「卒業式はいつ?」
「卒業式はいつ?を英語で言うと、When do you have graduation?カイル先生は5月。みんなは?」「3月!」
「他のクラスはsingingに注目して、Do you like singing?っていう質問が出ていたよ」
自分の発表を改良
「色々なアドバイスが出たけど、実はこれはカイル先生からみんなへのアドバイスだよ。みんなが出したアドバイス、自分の発表に活かせない?最後にもう一度タブレットの準備をして!今日の授業で出たアドバイスを1つ選んで、ペアに発表してみよう。」
授業の総まとめの時間だ。「自分の体験を交えながら甲陽園小学校の魅力を伝える」が今学期のパフォーマンス課題だ。習ってきたさまざまな表現方法をパフォーマンス課題の発表で活用する。
「じゃあペアを組んで。約束!話しているときはしっかり聴いて、アドバイスやコメントをしてね!3分で発表が終わったら交代。」
ペアで互いのパフォーマンス課題を発表していく。
I went to Hiroshima.
I ate もみじまんじゅう
Very very delicious!
I enjoyed shopping.
Thank you very much!
英語と日本語を混ぜて原稿を書いている子、すべてカタカナで書いている子もいる。生徒によってさまざまだ。
「I saw 二条城. Have you been to 二条城?行ったことある?」「Yes!」
どのペアも大きな声で発表し合い、クラス中に子どもたちの声が響き渡る。
「今日決めたゴールに向けてラスト1ヶ月、頑張りましょう!」
羽渕教諭の声とともに、終業のチャイムが鳴った。後編では羽渕教諭へのインタビューをリポートする。
関連記事
取材・文・写真:学びの場.com編集部
※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事

「教育リポート」の最新記事
