千葉県市原市GIGAスクール「IChiHaRaスタイル」(前編) 市原市立国分寺台西小学校「算数・校内授業研究会」リポート

文部科学省が2019年12月に表明したGIGAスクール構想、2020年春の「コロナ一斉休校」を受け、2020年11月に県内でいち早く、市内62校の全普通教室にPC一体型の65インチの電子黒板を設置し、2021年1月からキーボードを分離できる2in1型のWindows10の1人1台タブレット端末の使用を開始するなど、教育の情報化を牽引してきた千葉県市原市。
2024年11月20日に、Microsoft Innovative Educator Expertの生田勲先生が校長を務める、市立国分寺台西小学校で行われた校内授業研究会「自分の頭で考え、自分の言葉で表現できる児童の育成~楽しく分かる算数科の授業を通して~」を取材した。前編では、うち2コマをリポートする。
授業1)3年 分数
「分母が同じ分数のたし算は、どのように計算すればよいだろう。」
【授業概要】
授業者:菊池 龍太朗 教諭
使用教材・教具:タブレット端末、電子黒板、1Lマス(計量カップ)
単元の目標:
- 分数を使った数量の表し方を理解し、分数の大小比較や、同分母分数の加減計算をすることができる。(知識及び技能)
- 単位分数の何個分かに着目し、分数の大きさや同分母分数の加減計算の仕方を考えることができる。(思考力・判断力・表現力等)
- 分数に進んで関わり、ふり返りを通して単位分数の何個分かに着目することのよさや分数で表すことの意義に気づき、生活や学習にいかそうとする態度を養う。(学びに向かう力、人間性等)
具体物、ヒントカード、電子黒板を効果的に活用
4時間目に実施された3年2組の授業。黒板の横には電子黒板と書画カメラが、書画カメラの前には1Lマスが2つ置かれた。1Lマスの1つには2/5リットル、もう1つには1/5リットルのオレンジジュースが入っている。
菊池教諭「では、電子黒板を見てください。全員で問題を読んでみましょう。せーの」
児童「ジュース2/5リットルと1/5リットルを合わせると何リットルですか。」
菊池教諭「では赤えんぴつと青えんぴつを持ってください。分かっていることを赤線、聞かれていることを青で波線を引っ張ってください。」
児童たちは問題が書かれた紙片をノートに貼り、指示に従って文章に線を引く。
菊池教諭「分かっていることは何ですか。」
児童「ジュースが2/5リットルあることです。」「ジュースが1/5リットルあることです。」
菊池教諭「聞かれていることは何ですか。」
児童「合わせて何リットルですか。」
菊池教諭「足し算で答えが出せることが分かりました。では、ノートに計算式を書いてみてください。」
児童は各々計算式を書く。
菊池教諭「分かった人?」
児童「2/5リットル+1/5リットルです。」
菊池教諭「何を使ったら分数の計算ができそうか教えてください。」
児童「数直線」「1Lマスの図」
それを受けて菊池教諭は、数直線と1Lマスの描かれた紙片(ヒントカード)のどちらか1つを選び、ノートに貼るように指示。その紙片に色を塗ったり、矢印を引いたりするなどをして計算式を表現するのと同時に、紙片の下に自分の言葉で求め方を表現するよう求めた。
作業時間後、菊池教諭は児童2人のノートをタブレット端末で撮影して電子黒板に映し、説明させた。その後、菊池教諭は一方のマスのオレンジジュースをもう一方に移し、2/5リットル+1/5リットルが合わせて3/5リットルになることを確認した。
菊池教諭「後ろの人は見えづらかったと思うので、今の1Lマスの動きを描いた図を電子黒板に映します。」
続いて、類題「2/6+4/6の計算をしましょう」に取り組む。問題を全員で音読し、先ほどの問題とは違い、「リットル」の表現がないこと、そして、数直線で求められることを確認した。
児童たちは、新たに配られた数直線が描かれた紙片に、それぞれ自身の求め方を図と言葉で表現する。その後は、3人1組で考えを共有。「色を分けると分かりやすい」と意見をしたり、「こんな感じに描いたよ」とノートを見せ合ったりした。
菊池教諭は再び、児童のノートを撮影して電子黒板に映し、説明させる。答えが6/6になり、1であることを確認した。
最後に、2つの問題を振り返り、「分母が同じ分数の足し算は、1/5や1/6が何個分になるかを考えて、計算するとよい」とまとめ、それを黒板に書いて全員で音読し、授業を終えた。
授業2)6年 立体の体積
「複雑な立体の体積は、どのように求めればいいのだろう」
【授業概要】
授業者:菅野 裕太 教諭
使用教材・教具:電子黒板、タブレット端末、立体模型
単元の目標:
- 柱体の体積の求め方とその公式を理解し、公式を使って柱体の体積を求めたり、複合図形の体積を求めたりすることができる。(知識及び技能)
- 直方体の体積の求め方をもとに、角柱や円柱の体積の求め方やその公式、また、複合図形の体積の求め方を考えることができる。(思考力・判断力・表現力等)
- 直方体の学習をいかし、柱体の体積の学習に進んで取り組もうとする態度を養う。(学びに向かう力,人間性等)
1人1台端末を活用し、考えを共有
続く5時間目の6年3組では、3人1組で問題に取り組む。
立体模型は1つの立方体から複数の立方体を抜き取った形、複数の直方体や三角柱などからなるものなどがあり、電子黒板にはそれらの模型の写真が横1列に並んでいる。児童たちは黒板の前に並べられた立体模型の中から、1班につき1つ選んだ。
菅野教諭「立体模型の底面積の広さをしっかり考えてみましょう。まずは自分1人で考えて、ノートに書いてください。」
児童たちは立体模型に触ってサイズ(センチメートル)や特徴を確かめていく。
菅野教諭「まだ途中だと思いますが、自分の考えを班で共有し、求め方を一緒に考えてください。」
班作業の時間は20分。菅野教諭は電子黒板にストップウォッチを表示し、残り時間を20分に設定した。
菅野教諭「やることが2つあります。まずは求め方を書いたノートを撮影して、アップロードしてください。それが終わったら、別の立体模型を選び、同じように作業をしましょう。」
6年生の授業では、1人1台端末を使用。児童は班内で自身がノートに書いた計算式や、文章、図形による求め方を発表し、活発に意見交換を行なった。途中、慣れた手つきでタブレット端末の電卓機能を使って計算する様子も見られた。
児童はノートを撮影し、オンライン掲示板アプリ「Padlet(パドレット)」にアップロード。電子黒板に表示された複数の立体模型の下に、各班の解答が表示されていく。
菅野教諭「いくつかアップロードされましたね。では、アップロードしてくれた人は、解答を発表してください。サッカーゴール型の立体模型を解いた班の人、説明してもらえますか?」
菅野教諭は児童がアップロードした写真を電子黒板に大きく映し出した。該当の班の児童1人が立ち、解答までの計算方法を答えている間、他の児童は電子黒板や自分のタブレット端末でも視覚的に解答を確かめることが可能だ。
いくつかの解答方法の発表が行われた後、本日の授業をまとめに移った。
菅野教諭「立体の体積の求め方をおさらいしましょう。」
児童「底面積×高さ!」
菅野教諭「その公式だけで解答にたどり着けましたか?」
児童「求められなかった。」
菅野教諭「それでどうしたの?」
児童「足した。」「あと、引いたり」「全体から穴が開いた箇所を引いて」
菅野教諭「それを文章で表現してみましょう。」
児童「複雑な立体の体積は、底面積掛ける高さや、立体を足したり引いたりして求めることができる。」
授業の最後には、菅野教諭は適用問題が書かれたプリントを配布。児童はそこに描かれた4つの立体模型の体積を各々で計算した。
菅野教諭「他のクラスメートの考えや、先ほどタブレット端末にアップロードされた他の班の解答も参考にしてください。」
2つの授業に共通したのは、まずは生徒自身が考えて表現すること、そして共有のためにタブレット端末を活用することだ。後編では、市原市の教育の情報化に携わってきた生田勲校長、今回授業を担当した菊池龍太朗教諭、菅野裕太教諭へのインタビューをリポートする。
取材・文・写真:学びの場.com編集部
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