ある学級の出会い~教室に入りづらい子を支える居場所づくり~(4)
前回の記事「ある学級の出会い~インクルーシブ教育を支えるヘルプシーキングとケアリング~(3)」で書いた「ひとつにしようとする学級のしんどさ」への解法として、今回はさらに踏み込んだ実践論を展開します。
私たちが目指すべきは、子どもたちを特定の場所に縛り付けることではありません。「1つの箱に閉じ込めない。学級を中心としてその子を支援するさまざまな場をつくる」という、次世代の学級経営観へのアップデートです
埼玉県公立小学校 石井 雄大
教室という箱に縛られない学級経営
教師は無意識のうちに、「全員が同じ時間、同じ教室(箱)にそろっていること」を学級経営のゴールにしてしまいがちです。
しかし、子どもたちの間にある成長の差や特性の多様性を前にしたとき、全員を一律に同じ空間にとどめておこうとする指導は、かえって子どもの不適応を加速させ、教師自身を疲弊させます。
学級経営の空間を広げる概念を持ちましょう。ひとつの限定的な空間に子どもたちをとどめておくことだけが、学級経営ではないのです。
今の学校現場で本当に必要なのは、「環境の不一致」を認める勇気です。
その子がその時、その空間で苦しさを抱えているならば、無理に教室という箱に閉じ込めるのではなく、その子の状態に合わせた最適な場へと環境を調節していくことが、担任としての真の力量です。
学級をハブとした校内の居場所づくり
では、教室の外に目を向けたとき、私たちはどのような場をデザインできるでしょうか。
大切なのは、学級を孤立した空間にせず、学校全体のリソースとつながる「ハブ(中心)」として機能させることです。
別室(スクールサポートルームなど)の戦略的活用
教室に入れないことを敗北と捉えず、子どもの尊厳と学びを守るための積極的な戦略として活用します。
特別支援学級とのシームレスな連携
交流の時間を固定化せず、子どもの心のエネルギーの残量に合わせて、行き来できる柔軟な仕組みを構築します。
専門スタッフ(スクールカウンセラーなど)や専科教員とのチーム体制
担任一人の力で何とかしようとせず、多様な大人の目をその子の周りに配置します。
このように、保健室や図書室、スクールサポートルームなど、校内の居場所を多様化し、子どもがどこにいても「チーム学校」で包み込んでいく体制をつくります。
たとえ物理的な場所が離れていても、子どもたちの心がつながっていれば、それは立派に機能している学級なのです。
「いつでも戻れる、戻れなくても学べる」学びの仕組みの構築
居場所を多様化する際に、絶対に忘れてはならない鉄則が2つあります。
それは、「学級にいつでも戻れる仕組みをつくっておくこと」、そして「戻れなくても学べる仕組みをつくること」です。
教室以外の場所を選ぶことは、決して集団からの排除ではありません。
だからこそ、クラス全体に対して「あの子は今、自分のペースで頑張っているんだよ」と丁寧に説明し、互いの良さや多様性を認め合える土壌を耕しておく必要があります。
学級の子どもたちにその理解があって初めて、別室を選んだ子も「ここはいつでも自分を温かく迎えてくれる場所だ」という安心感を持ち続けることができます。
同時に、タブレット端末などを活用し、場所がどこであっても、その子のペースで学習を継続できる環境を整えます。
学級経営のあり方を「管理統率型」から、環境を柔軟にコーディネートする「状況調節型」へ。
教室というひとつの箱から子どもを解放し、重層的な支援のネットワークを広げていくことこそが、誰一人取り残さない多様性の包摂への確かな一歩となります。

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