2026.07.21
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校内研究の出発点を問い直す ―そのデータから何を語っていくのか?―

校内研究が軌道に乗り始めたこのタイミングだからこそ、その課題が子どもたちのためになっているのかを考えるために、大切にしたい考え方を紹介します。

福島市立福島第一小学校 教諭 横山 淳平

この研究は誰のためのものか?

今回から、校内研究への向かい方について、考えていきたいと思います。

ありがたいことに、校内研究を任されています。研究のテーマ決めから会議の進行、研究物作成まで、これまで以上に「この学校の研究をどう形にするか」を考えています。

だからこそ、私たちが積み上げようとしているこの研究は、本当に子どもたちのためになっているのかと、あえて一度立ち止まってみたいのです。

「80%ができている」という事実

ある学校の事前アンケートで、こんな結果が出たことがあります。

「自分の考えを、言葉や文章で表現することができる」という項目に「当てはまる」「どちらかというと当てはまる」と答えた児童が80%。

私はこの資料に目を通していました。ところが話題として取り上げられたのは、「あまり当てはまらない」「当てはまらない」と答えた20%のほうでした。

「うちの学校は、表現力に課題がある」

そうして、この項目が校内研究のテーマとして設定されていきました。

私は、これに小さな違和感を持ちました。だって、80%はすでにできているのです。
同じデータを見ているはずなのに、私たちは「80%できている」という事実には目を向けず、「20%ができていない」という事実を優先して、それを学校の課題にしてしまっている。

これは、データが「課題がある」と告げているのではなく、私たち教師が「20%のできていなさを、課題とみなす」と決めてしまっているのではないか。

8割の達成を「まだ足りない」と見るか、「もう十分」と見るか。その線引きは、数字そのものではなく、私たちの物の見方が決めています。
もちろん、20%の子に光を当てることにも大きな意味があります。ただ、その裏で、すでに表現できている80%の子たちの姿が、静かに見えなくなっていないだろうか、置き去りになっているのではないか。
こういった視点をもちたいと思うようになったのです。

数パーセントの上昇は、手立てによるものか

そしてもう一つ、考えていることがあります。
研究授業を重ねアンケートをとったとき、また、数パーセントの数値が上がることがあります。年度の始めと終わりに同じアンケートをとった場合も同様です。
その結果を見て、「この手立てのおかげで、意識が高まりました」と、報告書にまとめられていきます。

このとき、私はいつも自分にこう問いかけます。
この数パーセントの上昇は、本当にその手立てによって得られたと言い切れるのだろうか。

子どもの変容には、その時期の手立てだけでなく、家庭での過ごし方や、体調、友達関係など、いろいろなことが関わっています。一つの手立てだけを取り出して、「これが効いた」と結論づけるのは、思っている以上に難しいことなのかもしれません。
もちろん、先生方が「この子たちに、こうなってほしい」と願いながら実践していることは、とても尊いことです。
ただ、その願いが強いからこそ、数パーセントの動きを見たときに、「やっぱり手立てが効いた」と、少し都合よく読んでしまうこともあるのではないかとも思うのです。

教室は、公式に当てはめれば答えが出るような単純な場所ではありません。
だからこそ、数パーセントの上昇だけをもって「効果があった」と結論づけてしまうのは、少しもったいないことのようにも思うのです。

それでも、校内研究を大切にしたい

ここまで読むと、「校内研究には意味がないのか」と感じられるかもしれません。私は、まったくそう思っていません。
むしろ逆で、だからこそ校内研究をもっと大切にしたいと思っているのです。

大切にしたいのは、たくさんの子どもをひとまとめにして、きれいな一次関数的な結論を導くことではありません。
教室で日々起きている、一人ひとりの子どもの姿に、私たち教師がちゃんと気づき、それを胸を張って語れるようになることだと思うのです。

私たちは、「こうすれば、こうなる」という、あらかじめ決まった道の上を歩いているわけではありません。
実際にあるのは、「こうしてみたけれど、思うようにならなかった」という試行錯誤の連続です。それでも、あきらめずに目の前の子どもと向き合い続ける。

そうやって向き合い続けた先で、教師の目に映っている姿こそが、その子の本当の姿なのだと思います。それは、グラフの上の一つの点には収まりきらない、かけがえのない姿だと確信をもって思うのです。

だとしたら、校内研究の時間は、「効果があったかどうかを証明する場」であると同時に、「あの子が、あの瞬間に、こんなふうに変わった」という一つひとつの事実を、先生方同士で持ち寄り、語り合う場であってもいいのではないでしょうか。

データを対話の出発点に

今回、私たちが設定した課題が、できていない20%だけでなく、できている80%のことも、ちゃんと含めて考えられているだろうか。そして、この数パーセントの変化を、都合よく手立てのおかげだと決めつけすぎていないだろうか。という視点を紹介しました。

せっかくやるなら楽しく、本当に意味のあるものへ。校内研究は学校を変える可能性に満ち溢れていると確信しています。
皆さんはこの一学期、どんな校内研究をして過ごしましたか?
右肩上がりにいかないことこそ、現場の本質だと思います。そのこと自体を一緒に楽しんでいきましょう!

横山 淳平(よこやま じゅんぺい)

福島市立福島第一小学校 教諭


早稲田大学大学院教育学研究科修了 修士(教育学)、日本金融教育支援機構教員アンバサダー、東北社会科を面白がる会・ふくしま社会教育士の会事務局、その他FPやICT関係の資格保有。
「子どもがいるから学校がある」をモットーに、教師としてできることを考えています。

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