2026.07.24
  • x
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

AI時代に求められる「よい授業」とは

「よい授業」とは何だろうか。その問いに唯一の正解はない。
AIの進展や社会の変化により、教師に求められる授業観は大きく変わりつつある。
自身の経験を振り返りながら、よい授業を問い直し、これからの時代に求められる授業の在り方を考えたい。

目黒区立不動小学校 主幹教諭 小清水 孝

「よい授業」とは何かを問い直す

「よい授業でしたね」

研究授業や管理職の授業観察、教育委員会の巡回訪問などの後、教師ならばこのように言ったり、言われたりした経験があるのは一度や二度ではないだろう。

「A先生は、授業力高いなあ」
「B先生は、よい授業するなあ」
「C先生は、授業がうまいなあ」

何度も耳にする言葉である。
一体、よい授業とは何か?
定義はない。正解もない。では、各自がイメージするよい授業とは何か。

教育業界にいる人々は、どのような授業観をもっているのだろうか。

よい授業観は一つではない

よい授業観は、授業を観察する人の視点によって、十人十色であろう。
読者は、何を「よい授業」と捉えているのだろうか。
研究主題によるだろうが、ここでは日常の授業で考えていただきたい。

かつて私が信じていた目標達成

ここで、私自身の経験を振り返り、一人の教師としての歩みを紹介したい。
若い頃から数多くの授業研究や研修の機会をいただいた。校内研究授業や区市町村教育研究会、東京都リーダー研修、東京都教育研究員などである。

教職10年目までに、数十人規模の参観者を迎える研究授業を30回以上経験した。そのたびに、よい授業とは何かを考えた。
研究仲間と何度も語り合い、互いの授業を見合い、授業づくりを競い合った。授業力を高めることが教師としての成長であり、よい授業を追究することが使命だと信じていた。

当時の私は、よい授業とは、教師が設定したねらいに子どもを到達させる授業であると考えていた。学習目標を達成できたか。ねらいに迫れたか。子どもが意欲的に学び、一体感のある授業になったか。こうした視点で授業を評価していた。

しかし、経験を重ねるほど、私の中に一つの問いが生まれた。
教師が設定した目標に子どもが到達すれば、それだけでよい授業と言えるのだろうか。
仮に全員が目標を達成したとしても、子ども自身が新たな問いをもち、「もっと知りたい」「もっと考えたい」と思わなければ、その学びは一時間で終わってしまうのではないか。

教師が想定した答えに子どもを導くことだけが授業の価値なのだろうか。
私の問いは、「授業がうまいか」から、「これからの時代に求められる授業とは何か」へと変わっていった。

AI時代に授業観を更新する必要性

私は、よい授業観をアップデートする必要があると考えている。

多摩大学学長・日本総合研究所会長の寺島実郎氏は、「経営とは、時代認識である」と述べている。この言葉は教育にも当てはまると考える。教師は、学級や学校を経営する立場にある。だからこそ、時代を正しく認識し、その時代にふさわしい授業を構想し続ける責任がある。

私が現在重視している時代認識は、次の四つである。

◆人生100年・人口減少時代
◆AIエージェント・AGI時代(汎用人工知能)
◆地球臨界時代
◆無宗教・自己中心化が進む時代

こうした時代に共通するのは、正解を知っている人が評価される時代からの移行である。これからは、問いを立て、多様な人と協働し、新しい価値を生み出す人が求められる。

AIは知識を瞬時に提示する。しかし、何を問い、誰と対話し、どのような未来を創るかは、人間にしか担えない。そう考えると、教師があらかじめ設定した目標に子どもを到達させることだけでは、これからの時代を生きる力を育てるには十分ではない。

ここで二つの問いが生まれる。

第一に、私たちは数十年前と同じ教材を、同じ発想で教材研究してはいないだろうか。
その授業は、現代社会の課題や未来社会と本当に結び付いているだろうか。

第二に、従来型の研究授業システムで、本当によい授業を見取ることができるのだろうか。
45分間の授業だけを切り取り、教師が設定した目標への到達度を中心に評価するだけでは、子どもが問いを生み出し、対話を通して意味を共創し、学び続けようとする姿まで見取ることは難しいのではないだろうか。

教師同士が授業を見合う文化は、日本の教育が誇る財産である。だからこそ、今求められているのは研究授業を否定することではない。「何をもってよい授業とするのか」という授業観そのものを問い直すことなのである。

学習者の主体性を育てる授業へ

改めて、よい授業とは何だろうか?

私の現段階の結論は、「学習者の主体性を育てる授業」である。
私が描くよい授業とは、すなわち学校教育のパーパス、大きな目的とも言える。

よい授業では、教師の役割や振る舞いにパラダイムシフトが起きる。それは、教師の放課後の過ごし方だけでなく、学校の時間割、研究授業、校則、掃除、委員会活動、クラブ活動、テスト、学校の間取り、学級編成など、学校教育のあらゆる部分に及ぶだろう。

小清水 孝(こしみず たかし)

目黒区立不動小学校 主幹教諭


フープ1本でできる運動を3つ以上言えますか? 
現場で使える技術、できる実践、リアルな指導法を日々追究しています。
現場の先生方、共に考え、指導法の選択肢を増やしていきましょう! 
NPO教育サークル「GROW5th」代表。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop