2026.06.15
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AI時代の学校教育に必要な「生きる基軸」と人間OSの更新

AIが瞬時に情報を示す時代。
人は何をよりどころに生きるのか。
正解が揺らぐ世界で、人はどう判断し、どう歩むのか。
「君たちはどう生きるか」と問われる時代に、学校教育は何をすべきか。

目黒区立不動小学校 主幹教諭 小清水 孝

AI時代、子どもたちは何を学ぶのか

時代はAI革命。
教育現場でAIを利用する・しないという議論は終わりました。もはやAIを使わないという選択はありません。

社会はAIどころか、AIエージェントの時代に突入しています。時代の潮流を捉え、AI時代の教育に舵を切る必要があるでしょう。
すると、必然的に次の問いに正対しなければならないのではないでしょうか。

「AI時代、子どもたちは何を学べばよいのか」
生成AIの情報処理力や論理的思考力に、人間は逆立ちしても勝てません。では、学校教育は、何を提供すればよいのでしょうか。
私は、その答えを「生きる基軸」に見出しています。

ICT活用が進む教室で、私たちはどこへ向かうのか

学校教育ではICT活用が急速に進みました。
授業中、子どもたちはタブレットを自在に操ります。検索も資料整理も思考の共有も、数年前とは比較にならない速度で進んでいます。
情報は増えました。知識は豊かになりました。AIは答えを高速で出せます。そして、今後もそれは加速していきます。

しかし、です。
AIは「何のために生きるのか」を教えてくれません。
教室に、自分はどう生きたいか、どう在りたいかを語れる子はいるでしょうか。
子どもたちに生きる方向を決める羅針盤はあるでしょうか。

いや、これは子どもだけの問題ではないかもしれません。生成AIを子どもよりも巧みに使いこなす大人も、人生観を語れるとは限りません。
高速道路は整備されたのに、目的地を見失っていないでしょうか。

道徳科は生きる基軸を育んでいるか

「特別の教科 道徳」が小学校で全面実施となったのは、2018年度です。
考え、議論する方向に舵を切りました。
授業では、多様性や対話を大切にするようになりました。教科書には4領域がバランスよく配置されています。道徳科に関わる教育者の努力の結晶がうかがえます。

しかし、です。
道徳科の教科書教材は、子どもの心を揺さぶるほどの熱量をもっているでしょうか。感情が動く瞬間は大切にされているでしょうか。生きる目標や志も大切にしたいものです。
自分はどう生きたいか、どう在りたいかを語れる子はいるでしょうか。生きる基軸はあるでしょうか。

AI時代の学校教育に必要なのは、「押しつけの修身」ではなく、「多様性と対話の道徳」でもなく、「生きる基軸を育む教育」ではないでしょうか。

なぜ子どもには「偉人」が必要なのか

子どもは、誰の背中を見て育つのでしょうか。親、教師、部活や習い事の先輩。

そこに、偉人を加えてはどうでしょうか。
ここでいう偉人とは、歴史上の英雄だけではありません。現役スポーツ選手、自分の祖父母、地域の店主、ドラえもんのような物語の登場人物も含みます。

決して偉人の成功談だけを取り上げるのではありません。むしろ、偉人の失敗や葛藤を積極的に語ります。

坂本龍馬の迷い。野口英世の苦労。瀬島龍三の極限状態。

そこに、人間のリアルがあります。
人は、完璧な英雄には共感しにくいものです。
苦労や困難、失敗や敗北、挫折や喪失、病気や事故。
こうしたものを乗り越える姿に強く引かれるのではないでしょうか。人は理念ではなく、生き方に心を動かされます。

AI時代の学校教育に必要なのは、生きる基軸を育む教育です。「この人のように生きたい」と思える出会いをつくれるかどうかが問われています。

教師は、子どもの人生に何を残せるのか

私は学生時代に北海道を自転車で旅した経験があります。向かい風の中をこぎ続けた日もありました。道に迷った日もありました。
しかし、不思議と今でも鮮明に覚えているのは、景色以上に「出会った人の言葉」です。

人生を支えるのは、正論だけではありません。心に残る一言や、一人の背中が支えになることもあります。
教師という仕事は「知識の配送業」ではありません。子どもの人生に伴走し、生きる基軸の種を渡す仕事でもあります。

子どもたちは、これから不確実な時代を生きます。正解が崩れ続ける社会を歩きます。あるいは、正解が複数ある社会を歩きます。
したがって、必要なのは「正解を覚える力」ではありません。「自分はどう生きるか」を問い続ける力です。

それは誰かの生き方に触れ、自らの人生を編み直すことではないでしょうか。教育とは、人間OSを更新する営みと言えるかもしれません。

生成AIで偉人をメンターやチューターにする

生成AIを利活用し、偉人と対話してみてはどうでしょうか。
歴史上の出来事で、彼らがなぜその判断を下したのかを尋ねてみる。自分が価値の選択に迷ったとき、偉人ならどう考えるかを想像する。
自分の中に生きるロールモデルを複数持つことは、これからの時代にますます重要になるはずです。

戦後、公立学校では特定の宗教のための宗教教育が禁止されました。また、武士道の精神も社会の中で薄れつつあります。
では、私たち日本人は、そして日本の子どもたちは、何を生きる基軸として育んでいけばよいのでしょうか。
私は、そのヒントを「偉人」の生き方の中に見いだせるのではないかと考えています。

小清水 孝(こしみず たかし)

目黒区立不動小学校 主幹教諭


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現場で使える技術、できる実践、リアルな指導法を日々追究しています。
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NPO教育サークル「GROW5th」代表。

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