「オランダいいなあ」で終わらせないために。 自分に余白をつくる(1)
オランダの教育や暮らしに触れて、「いいなあ」と思ったことを、そのままで終わらせないために。
個人で変えられることを言葉にしてみた中から、今回は「自分に余白をつくる」実践を紹介します。忙しい毎日の中でも、少しの選択で空気は変わっていきます。
合同会社Toyful Works 代表社員・元公立小学校教員 川崎 知子
日本でもできる、オランダ式の小さな実践
イエナプラン教育やオランダの話をすると、「いいね」と言われます。そして、「でも、日本では難しいよね」と続くことも多いです。
確かに、制度や文化をすぐに変えることはできません。そこにジレンマを感じた時期もありましたが、今は、個人で変えられることもあるのではないかと思っています。
私は、オランダでの3ヶ月のイエナプラン専門研修を受けました。その後にイエナプランスクールにアシスタントとして通った日々の中で、多くのことを受け取ってきました。学校だけでなく、日常生活の中でもです。
この連載の中でも印象的なことをいくつか紹介してきましたが、今回は、個人で変えられることを箇条書きにしてみました。
自分に余白をつくる習慣
職場に着いたら温かい飲み物を飲む。
オランダの学校では、先生たちは出勤したらまず自分でコーヒーか紅茶を入れて飲みます。飲みながら同僚と雑談をし、その流れで必要なことを話し合い、それぞれ教室に向かいます。時間にすると10分くらいです。
この10分で気持ちを落ち着けることが、とても重要だと思います。
「今日はあれもしなきゃ、これもしなきゃ」ではなく、「今日も一日楽しみながら頑張るか」といった気持ちで子どもたちに接することができます。
家に着いたら温かい飲み物を飲む。
同様に、家に着いた時も、まずはコーヒーか紅茶を飲みます。「すぐに夕飯を作らなくては」ではなく、まず気持ちを落ち着けることが大切です。子どもがいたら、少しおやつを食べてもよいと思います。
もちろん、帰りが遅くなるとその余裕がなくなることは私も経験しています。それでも、10分、いや5分でもいいので、一度この時間をつくってみてほしいです。
「ひとり時間」をつくる。
特に、子育て中の方々におすすめしたいのがこれです。これはオランダで学んだというよりも、忙しい日本だからこそ、本当に大事だと思っています。
私自身、子どもが小さい頃はベビーカーに乗せて昼寝をさせ、そのままカフェでケーキセットを楽しんでいました。教員として働いていると、土日も仕事をしなきゃ、とか、溜まった家事をしなきゃ、と思いがちですが、土日はぜひリフレッシュに使ってほしいです。
土日まで仕事をしなくてよいと思っています。残業や土日に仕事をするのは当たり前ではないというのは、オランダで学んだことです。
スマホを見る時間を決める。
オランダの人と比べると、日本人はスマホを見ている時間が長いと感じます。オランダの人は、もっとリアルでの交流を大事にする印象です。そして、日本の方が仕事の連絡をこまめに受け取らなければならない印象があります。そうすると、とてもせわしなくなります。
私は最近、スマホをなるべく見ないようにしています。いわゆるデジタルデトックスです。SNSも必要なときだけ、パソコンから見るようにしています。そうして、自分の時間をつくることを大切にしています。
深呼吸する。
忙しいと、つい深呼吸を忘れてしまいます。そして、車の運転中に進まなかったり、電車が遅れたりすると、イライラしてしまうこともあります。私も以前はそうでした。
オランダでは、運河が多いため橋も多く、その下を大きな船が通る時には橋が上がります。その間、どの車もゆっくりと待っています。また、乳業大国で牛が多く、「人よりも牛の方が多いよ」と言う人もいます。広い牧場の間に公道があり、牛の行列がゆっくり渡ることもあります。そんなときも、車は静かに待っています。
その光景を思い出して、日本で渋滞にはまったときには、深呼吸をするようにしました。忙しいと呼吸も浅くなりがちなので、思い出したときに意識的に深呼吸をすることが大切だと感じています。
完璧にやらなくていい。小さなことから、一つでも
「自分に余白をつくる」ための実践について紹介してきました。
どれも特別なことではなく、今すぐにでもできることばかりだと思います。
だからこそ、すべてをやろうとしなくて大丈夫です。
まずは一つ、気になったものから試してみてください。
たとえば、職場に着いたら温かい飲み物を飲むこと。
あるいは、ほんの数分でもいいので、ひとりで過ごす時間をつくること。
ほんの小さなことでも、自分に余白が生まれると、不思議と見えるものや感じ方が変わってきます。
忙しさはすぐにはなくならないかもしれません。
それでも、その中に「余白」をつくることはできます。
私自身も、すべてを完璧にできているわけではありません。
「あ、また息を止めていたな」と気づいたり、
「あ、またイライラしてしまったな」と思ったりしながら、ゆるく実践しているところです。
だからこそ、この話は「できている人の話」ではなく、これからも試しながら続けていくためのものでもあります。
そして、その余白は、自分だけでなく、周りの人との関係や、日々の過ごし方にも少しずつ影響していきます。
次回は、「関係に余白をつくる」について書いていきたいと思います。

川崎 知子(かわさき ともこ)
合同会社Toyful Works 代表社員・元公立小学校教員
元公立小学校教員。東京・広島の小学校で約20年勤務。
2017年からは家族とともにオランダに渡り、イエナプラン教育を学ぶ。日蘭イエナプラン専門教員資格を取得し、現地のイエナプランスクールでアシスタントとして2年間勤務。20校以上の小中学校を視察した。
帰国後は、広島県福山市立のイエナプランスクール開校に携わり、現在は日本イエナプラン教育協会理事。
不登校支援や特別支援教育、保護者との関係づくり、対話・探究・遊びを通して、子どもも大人も、安心できる学びの場づくりに取り組んでいる。
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