試行錯誤の世界史探究~KCJ法のアレンジ:知識を再構成するジグソー法よる授業実践~(6)
今回は、「独立後のアメリカ合衆国史」の実践編をお届けします。
やはり教科書以外の資料活用は増やしました。
科目横断的授業にもトライしていますが...。
神奈川県立伊勢原高等学校 教諭 朝倉 由真
生徒も慣れてきた
前回の記事で紹介した通り、その後もアレンジしたKCJ法授業(講義とジグソー法を組み合わせた授業手法)を継続してきました。
授業は、以下の流れを1セット(2~3コマ)として構成しています。
STEP1:単元について概略講義
STEP2:ジグソー法エキスパート活動(生徒が個人で担当課題に取り組む)
STEP3:ジグソー活動(班で知識を共有し、共通課題に取り組んで、学習内容の全体像を組み立てる)
STEP4:解説・現代の諸課題につなげて考える
先に講義をしているので、知識の“再構成”となるります。
本校の、3学年次のみ、3単位という限られた世界史授業の時間数の都合上、扱う単元はアメリカ合衆国の歴史へ移行しました。具体的には「南北戦争~第一次世界大戦後のパクス=アメリカーナ時代まで」に取り組んできました(2年次、歴史総合で合衆国独立までは学んだため)。
前編:拡大と繁栄の裏側を考える
南北戦争~「フロンティアの消滅」までを前編とし、メインクエスチョンを「アメリカ合衆国の拡大・繁栄は、何を犠牲にしてきただろうか?」と設定しました。
STEP2~4では、先住民や黒人奴隷の実態と、現代に残る課題を考察しました。資料には、校内図書館から借りた『これなら分かるアメリカの歴史』(石出法太・石出みどり、大月書店)や『ビジュアル・ヒストリーアメリカ植民地時代から覇権国家の未来まで』(デイヴィッド・ルーベル、アレン・ワインスタイン、東洋書林)などを用いました。
教科書知識からさらに踏み込んで、先住民や黒人奴隷が具体的にどのような扱いを受け、社会的に置かれた立場がどのようなものであったか、等身大で理解できるようになることを目標としました。現在にも根強く残る社会課題や、公民分野で学習してきた人権・公平といった概念を、自分事として考察できるようになってほしいからです。
となると、資料として教科書のみでは不足を感じ、他資料の採用に至りました。興味を抱いた生徒が手に取れるよう、校内図書館から選定しました。読書離れが猛烈に進む今、少しでも本に触れるきっかけとなったらいいなという期待も込めて・・・。
STEP1の概略講義やSTEP4の解説では、映像資料も多用しました(Black Lives Matter関連映像など)。やはり映像の力は強いですね。
エキスパート活動の中で、かなりの文量を読ませましたが、話が具体的だからか、生徒も粘り強く取り組んでくれました。抽象的になりがちな教科書知識が、実在した一人ひとりの人生や部族の生活と繋がることは面白かったようです。同じエピソードでも、私がトークするよりも印象強く生徒の中に定着した様子でしたね。
「今日はワーク~?」などと聞いてくる生徒も増え、要約が苦手な生徒は生成AIをうまく活用する工夫も見られるなど、生徒の主体的な姿勢にも伸びを見て取れます。
後編:つなぐ学習
南北戦争終結後から対外進出、第一次世界大戦への参戦、戦後のパクス=アメリカーナまでを後編としました。イギリス主導の秘密外交から、現在のパレスチナ・イスラエル紛争についても取り上げました。
「イギリス三枚舌外交と、今日のパレスチナ問題を考える」というワークを挟んだ形です。イスラエルとガザ地区の武力衝突に関する直近のニュースなど、映像資料も活用しました。
アメリカ史としてのメインクエスチョンは、「彼らの人生/行動は、それぞれ社会にどのような影響を与えただろうか?」と設定し、ロックフェラーとウィルソンについての資料を読み込んでもらうペアワークとしました。
また、戦時資金の獲得や独占資本主義の成長、米ドルが国際的な基軸通貨となった経緯などの学習を通して、国際金融の動きを基礎的に理解することも副次的な目標に掲げました。
実践を通して見えてきたこと
歴史と公民科目、現代生活がつながる体験をしてもらいたかったのですが、アハ体験(理解が一気につながる感覚)に至った生徒と、知識が整理されないままないまぜになってしまった生徒と二分してしまいました。世界史以外の知識を扱う際の系統整理と説明という点で、私自身の力不足を反省しています。つまり、既習事項を活用した科目横断的授業は理想なわけですが、まだまだ改善の余地があります。
そうした中でも、「ドルは“強い”ってなんとなく思ってたけど、理由が分かった」「イスラエルのこと、ちょっと分かった。ニュース見てみる」といった声が聞けたのはうれしかったですね。生徒が「分かる」「つながる」という実感を繰り返すことが、暗記で終わらない、日ごろに活用できる“生きた社会科知識”の獲得になると思いますから。
「文章多すぎて疲れた~」といった声も出ていますが(笑)、生徒の読解耐性も強まっているように感じます。個別具体のエピソードだけでなく、地理総合、公共での学習内容を組み込みつつ、社会科目での学びを総合的に組み上げやすいこの手法は、もっと磨いていきたいなと考えています。
ジグソー法だからといって、3~4人のグループワークに固執する必要はありません。生徒の実態や学習内容、学校のスケジュール、授業者の仕事量など、状況に合わせながらアレンジを施す、柔軟な発想でKCJ法を実践していければ、実りは大きいだろう、続けていけるだろうと感じています。2学期を貫いてKCJ法授業で進めてきた私なりの所感です。少しでも参考になるとうれしいです。

朝倉 由真(あさくら ゆま)
神奈川県立伊勢原高等学校 教諭
神奈川で高校教員として働き始めて10年ほどになります。教壇に立ち始めた頃、地歴科の大先輩に、「10年授業をして、納得できる授業なんてそのうち2~3あるかだ」と教わり、驚きましたが、まさにそうだなぁと実感している日々です。史学科を出ているわけではありませんが、専門は世界史です。
生徒がそれぞれに生きやすい社会をつくりたい、自分の力でのびのびと生きていく力を身につけてもらいたい、少しでも世界平和に貢献したい、と思って教員を務めています。
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事
「教育エッセイ」の最新記事













アグネスの教育アドバイス
映画と教育
震災を忘れない



この記事をクリップ
クリップした記事
ご意見・ご要望










