探究学習を試みる
昨年度高等学校の学習指導要領の本格実施が始まり、国語科では選択教科である「古典探究」というものが登場し、現場の先生方も四苦八苦されている。その他の科目でも高等学校のみならず探究的な学びとは何かということが課題となっている。そこで小学校段階で実際に取り組んでおられることを紹介しながら、探究学習について考えたい。
大阪大谷大学 教育学部 教授 今宮 信吾
高等学校における探究学習
学習指導要領には、『選択科目「古典探究」は、古典を主体的に読み深めることを通して、自分と自分を取り巻く社会にとっての古典の意義や価値について探究する科目として、主に古文・漢文を教材に、「伝統的な言語文化に関する理解」を深めることを重視するとともに,「思考力・判断力・表現力等」を育成する。』と書かれている。
その上で 『「古典探究」以外の選択科目においても、高等学校で学ぶ国語の科目として、探究的な学びの要素を含むものとする。』とも書かれている。
高等学校では国語科の他にも、「日本史探究」「世界史探究」「地理探究」「理数探究基礎」「理数探究」や「総合的な探究の時間」などまで登場している。
探究学習を試みる
国語科の「大造じいさんとガン」(小学校5年生)、「海の命」(小学校6年生)を子どもたちで課題を決めて、その課題に対して探究していくという学習に取り組んでいる学校もある。そこでは、いくつかの成果と課題も提示された。まず成果については、高等学校における探究学習と同じように子どもたちの主体性が保証されることが挙げられる。また、個別最適な学びと言われるように、それぞれの学習スタイルや興味・関心に寄り添った授業が展開できることも成果として挙げられる。
一方で、学習指導要領に示された身につけるべき資質・能力を育めているのか、評価をどのように行えばいいのかなどの課題も示された。そこで小学校で行える探究学習のタイプを考えてみた。このことは今まで総合的な学習の時間で行われたことを再確認することにもなる。
探究学習とは何か
授業を参観させてもらって、「探究学習」と銘打って行ったものの中でもいくつかのタイプがあることに気づいた。それはSDGsなど持続可能な社会を目指して、今ある問題について考える①PBL(problem based learning)と、一つの目標を達成するために行う②SBL(subject based learning)に分けられるように思う。
PBLが答えのない課題が多いのに対して、SBLは到達すべき目標がある程度見えていてそこに向かって取り組んでいるように思う。その上で、①②両方のタイプの学習においても、A課題・目標発見、B課題・目標設定、C課題・目標提示に分かれるように思う。それぞれが絡み合って単線型の授業ではないが、探究しながら発見するタイプと元々ある中で選択して取り組む場合、学習を終えてようやく課題や目標が見えるタイプに分かれるように思う。
これからの学びを創る
今までとは違う学びが提示されて学校現場が混乱しているようにも思われるが、私は現状は歓迎すべきことだと思っている。学びから逃避してしまっていると言われる子どもたちに、学ぶ楽しさや意味を本気で伝えていこうという姿勢であると思っている。これからの社会を創っていく子どもたちにとって、何が最良であるのかまだまだ先は見えないが、教育がなくなることはないと信じている。教師も子どもも一緒に苦労しながら、日々を楽しめるように自分のキャリア、ライフデザインを探究という視点から考えられる子どもたちに育ってほしい。
今宮 信吾(いまみや しんご)
大阪大谷大学 教育学部 教授
国公私立の小学校で教員を経験し、現在未来の教師を育てるために教員養成に携わっています。国語教育を核として、学級づくり、道徳教育など校内研究にも携わらせていただいております。ことば学びのできる教師と学校づくりを目指しております。
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