2024.07.30
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子どもの哲学(p4c)とは何か p4cのルール(vol.4)

p4cを知っていますか。p4cとはphilosophy for childrenの略称で、子どもの哲学、子どもの哲学対話などと訳される教育実践です。
私は子どもの哲学(p4c)の道徳での活用に注目し、授業実践について日々模索しています。
今回は、p4cを特徴づけるルールをご紹介します。

仙台市公立小学校 教諭 齋藤 祐佳

これまでの記事

これまでの記事でご紹介した、p4cの流れを復習してみます。
p4cの基本的な流れは、以下のようになります。

1.輪になって座る:参加者で輪になって座ります。
2.問いを立てる(問いを選ぶ):今日、みんなで考える問いを、みんなで考えます。
3.対話のルールを確かめる:対話を始める前に、ルールを確認します。(今回の記事は、ここから始めます)
4.対話を行う
5.対話の振り返りをする

今回の記事では、対話のルールを確かめるところからご紹介します。

3. 対話のルールを確かめる

対話を始める前に、参加者全員でルールを確認します。
これらのルールは、できれば画用紙に書いて、輪の中心に置いておくなど、目に入るようにしておくとよいです。

ルールは主に4つです。なお、コミュニティボールについては、前々回の記事でご紹介していますので、ぜひお読みください。

子どもの哲学(p4c)とは何か p4cのルールって?(vol.3)

・コミュニティボールを持っている人だけが話せる
・まだ話していない人にボールを回す
・話せない時はパスができる
・相手を傷つけるようなことは言わない
(『「探究の対話(p4c)」はじめの一歩』より引用)

ルールについて、説明を加えます。

コミュニティボールを持っている人だけが話せる

話し合いや授業の中で、まだ意見を話している人がいるのに、「それって──」「あ!ぼくも──」など思ったことをすぐに口にする児童はいませんか。発言に対して反応しているという面では良いことです。

しかし、それらの発言によって、話し手の考えが途中で遮られたり、話し手が話したかったことを最後まで話しきれなかったりすることがあります。
p4cでは、話をする人が最後まで自分の話をすること、話を聞く人は話を最後まで聞くことを大事にします。そこで、このルールにあるよう、「コミュニティボールを持っている人」すなわち「今、話す人」を明確にし、その人がコミュニティボールを持っている間は、その人だけが話すようにします。

コミュニティボールは話す人が誰なのかはっきりと示す役割も果たします。 話し手は、コミュニティボールを持っている時間は自分の話を最後まで聞いてもらえる、という安心感をもつことができます。さらに、周りの子どもには最後まで話を聞くという態度を養うことができます。

まだ話していない人にボールを回す

コミュニティボールを持っている人だけが話すため、話し終わったら、誰かにコミュニティボールを回すことになります。
話し終わった人が、次の人にボールを回しますが、この時なるべく、まだ話していない人に優先してボールを回すようにします。

そうすることで特定の参加者だけが話す、特定の参加者だけでボールが回っていく、など話す人が偏らないようにします。
コミュニティボールを持っている人が話し終わり、誰かにボールを回す際には、あまり話していない人にボールを回します。

しかし、話したくない人に無理やりボールを回すわけではありません。実は話したい気持ちはあるけれど、他の参加者に遠慮してボールをもらわず話せていなかった人が、話しやすいよう配慮したルールになっています。

話せない時はパスができる

2つめのルール「まだ話していない人にボールを回す」によってボールが回ってきたり、話そうと思ったけれど、やっぱり話すことがためらわれたりする場合には、パスをすることができます。
つまり、このルールは、話したくないとき、話せないときには話さなくてよいという、「話さない権利」を保障したルールです。

p4cでは、哲学的な問いも扱うため、自分の考えを持つのに時間がかかったり、自分の考えを持っても人に話すのに抵抗があったりすることも考えられます。
参加したからといって必ず自分の考えを話さなくても良い、という前提があることで、参加者は安心して対話に参加することができます。

相手を傷つけるようなことは言わない

最も重要なルールになります。
ルールを画用紙などに書き、提示して説明する方の中には、このルールだけ他のルールと色を変えて強調する方もいらっしゃいます。

p4cでは自分の考えを話していきますが、日常的な会話や雑談とは異なり、内容が本質的になったり、普段はなかなか話さないことを話したりすることが多くあります。
じっくり、ゆっくり対話を深めていきますが、相手を傷つけることを言わないことは、参加者の安心を守るために重要です。

特に、子どもは、思ったことを思ったときにそのまま言ってしまうことがあります。
「え~?」「へんなの」と言う、相手の話に笑うなど、相手の意見を否定する発言や行動をしないようにルールを事前に確認します。

ここで例に挙げたような発言は、1つめのルール「コミュニティボールを持っている人だけが話せる」が守られていないときに起こりやすく、このルールを守るためにも、その他のルールを守ることが大事になってきます。

すべてのルールに共通しているのは、safety

すべてのルールは、参加者の心理的な安心安全を守るためにあります。
safetyを重要視するp4cならではのルールです。

p4cでのルールですが、p4cに慣れていくにつれて、授業での話し合い、学級活動の話し合いでも自然にルールが守られ、安心安全な話し合いができるようになってきます。

次回は、p4cの流れの4つ目、対話を行う、からご説明していきます。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。

ぜひ、夏休みに準備をして、2学期以降にp4cの実践をしてみてください。

参考資料
  • 「探究の対話(p4c)」はじめの一歩 宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー 2019年 3月改訂
  • 「探究の対話(p4c)」次の一歩 宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー 2019年 11月発行

齋藤 祐佳(さいとう ゆか)

仙台市公立小学校 教諭


公立小学校にて勤務しながら、よりよい教育を模索している。
宮城教育大学教職大学院にてp4c(子どもの哲学対話)を研究し、現在は心理的安全性を高める学級経営、子どもと対話し考えを深める道徳教育に生かす。
『初任者教師のスタプロ ハッピー学級経営編』(東洋館出版)にてコラムを執筆。
note(https://note.com/haru_kaneko)では、子どもとの日々をありのままに綴っている。
日本教育心理学会所属。

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