2024.06.19
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

子どもの哲学(p4c)とは何か p4cのルールって?(vol.3)

p4cを知っていますか。p4cとはphilosophy for childrenの略称で、子どもの哲学、子どもの哲学対話などに訳される教育実践です。
私は子どもの哲学(p4c)の道徳での活用に注目し、授業実践について日々模索しています。
前回は、p4cを取り入れた授業実践をご紹介しました。今回は、その続きに加え、p4cのルールをご紹介します。

仙台市公立小学校 教諭 齋藤 祐佳

p4cを取り入れた道徳の授業の流れ

これまで、私の昨年度の実践と、『「探究の対話(p4c)」はじめの一歩』を参考にしながら、p4cを取り入れた道徳の授業実践をご紹介してきました。

  1. 輪になって座る
  2. 問いを立てる(問いを選ぶ)
  3. 対話のルールを確かめる
  4. 対話を行う
  5. 対話の振り返りをする

前回の記事(vol.2)では、ステップ1(輪になって座る)とステップ2(問いを立てる)、対話を深める道具:WRAITECをご紹介しました。全員で輪になって座り、問いを立てて選んだら、いよいよ対話の始まりです。
対話を始める前に、重要なステップがあります。
対話を始める前の重要なステップとは、対話のルールを確かめることです。
ここで、ルールに出てくる道具がありますので、先にご紹介します。

対話で用いる道具(コミュニティボール)とは

対話ではコミュニティボールを使います。
コミュニティボールは毛糸で作られたボールです。p4cのルールの1つに、このボールを持っている人だけが話せるというルールがあります。
このコミュニティボールは、持つことによって安心できるよう、毛糸のやわらかい触り心地も大切にされています。

p4cの第1回目に参加者全員で作り、自己紹介などを兼ねながら作られることが多いです。
このコミュニティボールを作るところから、p4cは始まります。このコミュニティボール作りが、対話の参加者のコミュニティづくりの第一歩です。
コミュニティボールの作り方については、以下の動画が参考になります。

「探究の対話(p4c)」コミュニティーボールの作り方

コミュニティボールを実際に触ってみると、毛糸のやわらかい触り心地によって、話す時に安心できます。さらに、話しているときに手に持つので、話すこと以外に意識が紛れ、話しやすくなります。
児童にもこのコミュニティボールは人気で、なぜp4cが好きか尋ねると、「コミュニティボールを使うから」と答える児童が多くいました。
毛糸の色は、様々な意見を大切にする思いから、複数の色を取り入れて作られることが多いです。そのため、私は児童に毛糸の色は何色がいいかな?と尋ねてから用意していました。

3. 対話のルールを確かめる

コミュニティボールが完成したら、いよいよ対話を始めます。ここで、ルールを確認します。これらのルールは、できれば画用紙に書いて、輪の中心に置いておくなど、目に入るようにしておくとよいです。
ルールは、主に4つです。

  • コミュニティボールを持っている人だけが話せる
  • まだ話していない人にボールを回す
  • 話せない時はパスができる
  • 相手を傷つけるようなことは言わない
    (『「探究の対話(p4c)」はじめの一歩』より引用)

実際にp4cをやってみると、これらのルールがいきてきます。

コミュニティボールを持っている人だけが話せる

話し合いや授業の中で、まだ意見を話している人がいるのに、「それって──」「あ!ぼくも──」など思ったことをすぐに口にする児童はいませんか。友達の発言に対して反応しているという面では良いことです。
しかし、それらの発言によって、話し手の考えが途中で遮られたり、話し手が話したかったことを最後まで話しきれなかったりすることがあります。

p4cでは、話をする人が最後まで自分の話をすること、話を聞く人は話を最後まで聞くことを大事にします。
そこで、このルールにあるよう、「コミュニティボールを持っている人」すなわち「今、話す人」を明確にし、その人がコミュニティボールを持っている間は、その人だけが話すようにします。
コミュニティボールは、話す人が誰なのかはっきりと示す役割を果たすのです。
話し手は、コミュニティボールを持っている時間は自分の話を最後まで聞いてもらえる、という安心感をもつことができます。さらに、周りの子どもには最後まで話を聞くという態度を養うことができます。

次回、より詳しいルールの背景、授業の流れの続き(4. 対話を行う~)をご紹介します。これらの記事で、p4cを取り入れた道徳の授業が、より具体的にイメージできると思います。
また次回お会いしましょう!

参考資料

齋藤 祐佳(さいとう ゆか)

仙台市公立小学校 教諭


公立小学校にて勤務しながら、よりよい教育を模索している。
宮城教育大学教職大学院にてp4c(子どもの哲学対話)を研究し、現在は心理的安全性を高める学級経営、子どもと対話し考えを深める道徳教育に生かす。
『初任者教師のスタプロ ハッピー学級経営編』(東洋館出版)にてコラムを執筆。
note(https://note.com/haru_kaneko)では、子どもとの日々をありのままに綴っている。
日本教育心理学会所属。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop