2022.06.06
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公立短大の存在意義について

公立短大は現在、全国に13校しかないため、公立短大があることすら知らない人も多いようです。その公立短大の存在意義とは何なのでしょうか。貧困の連鎖を抱える日本社会だからこそ、またコロナ禍である今だからこそ、求められる公立短大についてお伝えするとともに、簡単な受験情報などもお伝えします。

旭川大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

公立短大があることをご存じでしょうか。近くにある場合には知っているかもしれませんが、そうでない人の方が多いのであまり知られていないと思います。
というのも現在、公立短大は全国に13校しかありません。昔は最大で55校あったようですが、この20年の間にここまで減ってしまいました。廃校という選択をした学校も若干あるようですが、ほとんどが4年制大学へと舵を切っています。
このような全国的かつ時代の流れがある中で、私が所属する旭川大学短期大学部は、旭川大学(4大)の公立化と足並みをそろえ、短大も2023年4月に公立化する準備を進めています。公立短大そのものの存在すらもあまり知らない先生方や高校生も多いですが、現存する公立短大の平均倍率は約2.1倍となっており、学校数が少ないながらも存在価値はあるようです。
そんな公立短大の存在意義についてお伝えしていきたいと思います。(ちなみに国立短大は2009年度をもって完全になくなってしまっているためここでは触れていません)

短期大学について

文部科学省のサイト「短期大学について」では、公立私立合わせて、以下のように述べています。その重要となる部分を3ヶ所、抜粋しました。

①「特に女性の高等教育の普及や実践的職業教育の場として,大きな役割を果たしてきました。」

②「短期大学の個性・特色は,地域の身近な高等教育機関として,短期間で,大学としての教養教育やそれを基礎とした専門教育を提供する点にあります。こうした特徴を明確化するため,平成17年には,諸外国と同様,短期大学卒業者に「短期大学士」の学位を授与する制度が創設されています。」

③「また,短期大学への進学者に関する指標の1つとして,自県内進学率が挙げられます。この値の推移を4年制大学と比較すると,一貫して高い値となってきていることからも,短期大学は,それぞれの地域における高等教育機会の確保の面で,重要な役割を果たしてきているといえます。」

①より、女性を主な対象としてきた短大ですが、この20年で女性の社会進出が増加することにより4大志向が高まり、短大のニーズが減少することで公立短大がここまで減少するに至っています。女子短大として存続し続けている短大もありますが、男女共学化するなどして存続し続けた短大が多いです。まだ女性が多いですが、男性にも同様に門戸を開いています。

②より、短大は短期間で学位を取得できるという特色があります。専門学校とは異なり外国でも通用する資格となります。

③より、過去8年の短大の自県内進学率をみると67~69%くらいとなっています。4大の42~43%くらいと比較すると、20ポイント以上高く、地域の教育水準を支えていることが分かります。その地域にとってはなくてはならない存在です。

貧困の連鎖を断ち切る公立短大

これらのような特徴を持っている短大ですが、公立短大に限定すると、圧倒的に差が出てくるものがあります。それは「学費の安さ」です。
今回、私たちの短大が私立から公立になるにあたって、学費が3割減の7割となりそうとのことです。私立4大と比較し、期間は半分に、学費は4割くらいに抑えられ、早くから学位の取得ができ、また早くから社会に羽ばたくことができ収入を得られます。
そのため現代社会で問題となっている「貧困の連鎖」を断ち切る可能性を秘めていると考えています。20世紀終盤は一億総中流社会と言われましたが、21世紀になりしばらくすると格差社会と言われ、親の低収入という呪縛から抜け出すことのできない子どもが増加しています。またコロナ禍により、その人数は更に増えていることでしょう。
公立短大はそのような子どもたちを救い、不活化している経済を救うことでしょう。特に平均年収が低い傾向にある北海道・東北地方や九州・中国地方に所在している半数の公立短大は、その存在意義が高まっていくでしょう。

編入も考えやすい

短大というと資格取得をするための専門性の高い目的学科が多いですが、公立短大となると「2年後の選択」がしやすいことも特徴となります。
入学後2年後には次の道を決めることになりますが、学費を節約できることから、就職という選択肢にとらわれず、進学(編入)も選択肢として考えられます。ある公立短大では40%近くが編入するところもあるようです。
高校で進路を決めきれず、自分のやりたいことを探すために4大へ進むことを考える高校生や勧める教員も多いようです。しかしその場合、4大では4年間同じ道にとどまることになり、自分探しへの停滞感や閉塞感から退学を選んでしまうこともあります。
一方、短大では2年で次に進むことになるため、2年の間に自分の道を見つけられた人はその道を邁進したり、見つけられなかった人は同じ学校にとどまったり新天地を求めたり、また土地を変えて心機一転したり等がしやすく、新鮮な気持ちを維持しながら歩んでいくことができます。
学費を節約できる公立短大だからこそ考えられる編入の選択肢が出てきます。

公立短大の受験情報

今後、存在感を増していくと推測される公立短大ですが、その数の少なさからあまり認知されていません。公立短大という選択肢を知らないまま受験に挑んでいる受験生が多いようです。
ちなみに公立短大の受験は学科の特性上、学校推薦型選抜や総合型選抜がおすすめです。地域を支える使命を持っているため、地域枠を設けているところがほとんどですが、この少子化が進む日本社会では、地域の受験生だけでは枠は埋まりません。そのため県外の受験生もチャンスがあります。

また知らない人も多いようですが、一般選抜では国公立大学の受験ルールで行う必要がないため、他の国公立大学との併願が可能です。
大学共通テストを利用しない受験を設けているところも多いです。進路を決めている高校生にはもちろんですが、進路に迷っている高校生にもお伝えしてあげてください。

最後に

私の故郷には公立短大がありましたが、私が受験生時代にあまり意識したことがありません。恥ずかしながら今回の当事者となるまでは、よく考えたことがありませんでした。
多分、受験生のほとんどは公立短大という選択肢があることも、何が利点かも知らないと思います。先生方から高校生にお知らせしてあげてほしいとともに、私共としても最新の公立短大・最北の公立短大(現在でも最北の短大ではありますが)に向けて、しっかりと気を引き締め、北海道だけでなく全国に通じる学問を届けられるよう準備に励んでいきたいと思います。

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赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川大学短期大学部 准教授・元パーソナルストレッチトレーナー・バスケットボールコーチ
幼児体育指導、小学校のスポーツ少年団指導、中学校の部活動指導、高校の体育指導、大学の体育指導及び部活動指導と、全年代の子どものスポーツ及び体育指導の経験を生かし、子どもの運動能力の向上を図る研究を行う。

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