2024.02.23
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算数を苦手とする子どもたちと「算数の指導における工夫」(NO.3)

皆さんは、言葉のジェネレーションギャップを感じたことはありますか? 
職員室の中では若手と話すときに、言葉を選ばないと通じにくいと感じることが度々あります。
ということは、若い保護者の方とも通じにくいことがあるということで、子どもたちとのギャップはさらに広がっていると思った方がよさそうです。
言葉のズレが学習の場で起きているとすれば、看過できないと思います。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

また、以前、算数を苦手だと思っている子どもから、「私には分からない言葉で話すのをやめてほしい」と言われたことがありました。それは、ジェネレーションギャップというより、算数で用いる特有の用語の意味が分からないということだと受け止めました。おそらく、それまでに教わったことが記憶として残っていない、早口で説明されても理解できない、あるいは特殊な言葉の意味を分からないと言えないままにしてしまったなどという様々な要因があったと思います。しかし、英語の苦手な私が早口の英語で話しかけられても理解できないように、彼らも授業中に言われていることが分からずに戸惑っているのだということは理解できました。

そこで今回は、算数の授業の中で、言葉一つ一つを丁寧に教えることや、学習内容を復習しながら扱っていくことの大切さについて考えていきたいと思います。


教科書の中で使われる言葉を適切に表現する

例えば、小数の学習では、「はした」という言葉が出てくる教科書があります。以前は、「はした金」のような表現で、日常的にも見聞きした言葉です。しかし、現在では、この言葉を日常的に使うことはまずありません。「はした」とは、ある「一定量に満たない量」を指します。例えば1メートルに達しない半端な長さや、1リットルちょうどにならない中途半端な量などを指すのです。

さて、その「はした」が教科書に登場したときに、ぜひ、「はしたとは、どういうことを意味するのか知っていますか」という投げかけをして確認してほしいのです。そして、半端な量を小数やあるいは分数で表すことの便利さに気づかせていってほしいと思います。

他にも、算数ならではの表現があります。「等しい」も、そのひとつです。3年生に初めてその表現を教えたときに、「『同じ』でもいいでしょ」と子どもたちが面倒そうに呟いているのが聞こえました。しかし、「等分する」「等しい長さ」と表現する意味があるのです。

言葉の意味は分かっていて当然と思い込んだり、漢字も読めて当たり前という先入観をもったりせずに、言葉を丁寧に扱っていってほしいと思っています。

子どものつぶやきを拾う

少人数で算数を教えていると、子どもたちと私の距離はとても近いと感じることがあります。その距離は物理的なものだけではなく、心の距離であっても近いのです。ですから、子どもたちは、分からないことがあると呟いたり質問したりすることが、大人数のときよりは気安くできるのではないかと感じています。もちろん、教師が心を開き、子どもたちに緊張感を与えるような授業をしないということが前提になります。

さて、そんな中で授業をしていると、当然分かっているだろうと思うような簡単な説明も、実は通じていなかったという痛い経験をします。以前、「□×5=15」のような問題があって、□には何が入るのかを考えさせていたとき、「答えは51でしょ」と言い張るので困りました。「なんで3なの?」と何度説明しても分かってもらえなかったのです。図を描いて説明しても納得できないようでした。それでも何回かやり取りをするうち、わり算をすっかり忘れているのだということに気付きました。「わり算は、5の段で15になるのを探すんだよね?」と言ったら、やっと分かってもらえました。

本当はこういったやり取りが必要な場面が、誰にでもあるのだと思います。子どものつぶやきに耳を傾けることの大切さに改めて気付かされました。

計算の仕方を復習しながら扱う

4年生までは四則計算の練習がほとんどですが、5年生ともなると、4年生までの学習が身についているという前提で学習が進んでいきます。しかし、全ての子どもたちが、4年生までに学習した計算力を維持しているとは限りません。

ケアレスミスで最も多いのが小数をともなった計算で、答えの位がズレることが目立ちます。小数点の位置がズレたり、ゼロの数が多すぎたり少なすぎたりするのです。かけ算やわり算を必死で解いても、最後でミスをすると元も子もありません。

そこで、例えば割る数が小数の場合、10倍や100倍、10分の1や100分の1にする場合などの計算の仕方を、手間をかけても復習しながらおこなってほしいと思います。また、小数でわる場合のしかた、小数のたし算やひき算とかけ算の筆算の書き方の違いなども、忘れがちな内容です。

若い先生たちの中には、「こんな計算は、できて当たり前」と思う様子が見え隠れすることがあります。しかし、計算の仕方を忘れてしまったと言い出せない子どもが、数多く存在することを想定すべきです。そして、それを言い出せずにいるのです。簡単に復習すれば、「ああ、そうだった」と思い出す子どもがほとんどだからです。それでも、なかなか思い出せない子どもたちには、何度か個別に指導する必要があります。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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