2021.12.08
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単学級の学級経営~風通しの良い学級経営をするために~(3)

もうすぐ1年が終わります。学年末まで、4か月を切りました......。
学級としてのゴールが見えてきた今だからこそ、残りの期間で気を付けていきたいことを考えます。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

学級担任以外の教職員との教育相談を行った結果…

 まず、学級担任以外の教職員(以下、「サブメンター」と言います)が、児童と教育相談を行ったことで、教育相談の仕事量自体が減ったわけではありません。単純に時間が減るという意味での効率化は図れません。それでも、担任が教育相談を行う時点で、すでに情報が多い状態で実施できるため、聞きたかったことをすぐに聞けたり、児童の話をじっくり聞けたりする良さがありました。

ある年。教育相談後、サブメンターの先生から、児童Aの友人関係について気になる情報が寄せられました。教育相談で児童本人からもじっくり話を聞き、今後どうしていけばよいのか児童にいくつかの提案をしてみました。大きなトラブルにつながるような事案ではありませんでしたが、保護者にも一応連絡しました。
後日、保護者から連絡帳を通して、「昨日、Aが学校から帰ってきたら、今日は教育相談で深見先生にゆっくり話を聞いてもらえてスッキリしたと言っていました」という連絡を受けることができました。返信には、「私以外に話しやすい先生がいたことがきっかけだったと思います」とお返事させていただきました。
児童の学校生活の満足度の向上にもなりましたし、児童をじっくり見ている教職員が担任以外にもいるということを間接的に保護者にお伝えする機会になったと思っています。

サブメンターとなった担任以外の教職員が、その児童をよく見るようになる…

担任以外のサブメンターが教育相談をすることで、相談した内容の報告が担任に行われ、児童についての情報共有が図られます。そして、サブメンターの教職員が設定されることで、サブメンターがメンティ(児童)について、意識的に関心を向けるようになり、休み時間や掃除の時間などで児童への声かけ・励まし・観察を行う機会が増えました。
その結果、児童もサブメンターに親しみを感じ、積極的に話しかけたり、相談したりするようになるということも見られるようになりました。さらに、サブメンターが児童の様子を担任に報告することが増え、その報告を受けて、担任は必要に応じて教育相談を行ったり、意識的な指導を行ったりできるようになるという「好循環」が起きるようになったのです。

例えば、B君のサブメンターである養護教諭から、「B君は、中休みに保健室で一人で本を読んでいました。何か元気がなさそうです」という話があったり、「掃除の時間にCさんが床拭きを頑張っていました」「C君が危険な遊びをしていたので、Dさんが注意していました」という報告があったりするなど、担任が見ていない時間の児童の情報が伝えられるようになりました。
一つ一つの事象はささいなことかもしれませんが、担任のその後の指導に生かせたり,担任が気づかない児童の個性が把握できたりすることで、結果的には児童の学校生活の質の向上につながるのだと思います。

単学級小学校のこれから…チームになるためには

私自身は、初任者として単学級小学校に配属されました。最近、北海道では、以前ほどへき地の単学級や複式学級の小学校に多くの初任者が配置されることは、少なくなってきました。しかし、学校規模が全体的に縮小し、町村部の中心校が単学級小学校であることが増えてきました。また、一定の人口を有する自治体であっても、地区によっては人口減少が急激に進んだ結果、単学級小学校となる学校も増加傾向にあります。

単学級小学校では、初任者が学級経営や生徒指導、保護者対応や学力向上を一手に担うこととなり、教育問題の複雑化・多様化と相まって極めて難しい役割を果たすことが求められます。だからこそ、チームでの相互支援・連携が必要となり、学習だけではなく、生徒指導や学級経営全般での複数での指導体制の確立が重要と考えています。
しかし、現実に目を向けると,単学級小学校における教員の加配措置、特に学級担任を受け持たないフリーの教員がそれほど多くないことも事実です。今回の教育相談の事例のように、限られた人的リソースをいかに効果的に用いるかを提案・構築していけるようなミドルリーダーの存在が重要なのではないでしょうか。

次回は、へき地・小規模校の特別支援学級での実践を紹介します。

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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