2021.08.24
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パラリンピックから学んでほしいこと

コロナ禍ではありますがパラリンピックも行われるようです。
賛成反対は別にして、どうせ行われるのであれば、子どもの学びにつなげましょう。
体育で行うことができるパラスポーツを紹介します。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

<オリンピックの振り返り>

体育科の学習指導要領の中では、オリンピック・パラリンピック教育も求められています。オリンピックでは、前回「オリンピックから学んでほしいこと」でも取り上げた女子バスケットボールが大躍進を続け、オリンピック初メダルでありながら銀メダルを獲得する快挙を成し遂げました。
バスケットボールは高さがものをいう競技でありますが出場12ヵ国中11位で圧倒的に劣っており、またホームコートではありましたがコロナ禍であるため無観客のため声援による後押しは得られず、そして日本の世界10位というランキングは12カ国中9位ですが絶対的エースがケガで不在であったため最下位でもおかしくないなど、絶望的とも言える状況でした。
しかしチームワークと戦術を駆使し、格上の世界の猛者を次々と倒して準優勝した様子を見ると、新学習指導要領で求められる「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力など」の学びにつながる良い例だと思います。ぜひ夏休み明けには教材として取り上げてほしいと思っています。

コロナ禍ですがパラリンピックが始まる予定です。賛成反対は別にして、行われるのであれば子どもたちの良い学びにつながってほしいと思います。

<パラリンピックでの学びの必要性>

昔に比べ障がい者の方が社会に進出できるようになってきたとは言え、まだまだ配慮が足りていません。障がい者用の駐車場に平気で停める人がいたり、点字ブロックを塞いでいる人がいたり、多目的トイレの意図を理解していない人がいたり…それは障がいを抱えている方がどのような苦労をしているのかわからないからではないでしょうか。
そのため学校教育では障がい者の気持ちを汲み取っていけるような取り組みをしていく必要があります。車イスやブラインドウォークを体験する取り組みをしている学校もありますが、更に踏み込んだ取り組みとしてパラスポーツを体育の授業に取り入れてはいかがでしょうか。
取り組みやすいパラスポーツを紹介してみます。

<パラスポーツ紹介>

「シッティングバレーボール」
お尻を床につけたまま行うバレーボールです。移動する際もお尻を床につけたまま行います。腕を上げたり下げたりと思っている以上に大変です。ただボールをあまり高く上げられないため、普通のバレーボールで怖いと思っている子どもでも行いやすいかもしれません。また座った状態からだと寝転がりやすいため、東洋の魔女の専売特許だった回転レシーブのプレーがしやすいのもおもしろいでしょう。ただ早くボールが落ちてくるので人数を増やしたり、ソフトバレーボールを使用したりするといいかもしれません。バドミントンのコートでネットを低く張って行うといいでしょう。どこからも道具を借りずに代用できるので、最も取り組みやすいパラスポーツです。

「ボッチャ」
投球の順番は異なりますが、勝敗のつけ方はカーリングと同じであるため、子どもたちには馴染みやすいのではないでしょうか。立って行う場合と車イスで行う場合で目線の高さの違いから距離の感覚が変わるため難易度が上がります。そのような点からも障がい者の方の苦労がわかるのではないかと思います。またランプスと呼ばれる勾配具を用いて投球する体験もすると選手の凄さが伝わるでしょう。

「5人制(ブラインド)サッカー」
キーパー以外は目隠しをしてサッカーする競技です。ボールは音がするようになっており、また周りにいる人が声で指示を出してもいいことになっていますが、まずボールにたどり着くまでに時間がかかります。いきなり行うと多分試合にならないかもしれません。しかし逆に言うと目の見えない人はこれだけ大変だということを伝えることができます。この競技を体験した後に「ゴールボール」という競技を見ると、その凄さを理解できるでしょう。

「車いすバスケットボール」
​​​​​​​車イスを何台か借りることができるのであれば、車いすバスケを体験させるといいでしょう。一般の高さのゴールだとまずシュートが届きません。勘のいい子どもだと前進しながら投げればいいとわかりますが、それでも届かない人もいます。また片手で車イスをコントロールしたり、車イスのタイヤを回さずに体を左右に振ってコントロールしたり、また片輪を上げてバランスをとったりする選手もいます。そのような技術も見ものです。

<最後に>

いかがでしょうか。体育の授業でも体験しやすいパラスポーツを紹介しました。パラスポーツを体験することで、障がい者の方への配慮や気遣いにつながるきっかけとなっていくといいです。
道具は障がい者スポーツ団体が貸出をしてくれる場合が多いです。彼らは少しでも多くの人に普及したい気持ちがあるので、快く貸してくれます。時には教えに来てくれます。教員が「やったことないから」と諦めずにチャレンジしてみてください。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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