2021.09.06
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教育実習の指導をプラスの視点で考える~実習指導教員を担当することで得られる学び(1)

9月は、大学の夏休み期間を利用して教育実習が行われることが多くあります。

学校現場では、教育実習生の指導は、日常的な業務と並行して行うことになりますので、決して楽な仕事ではありません。

どのようなマインドで教育実習の指導にあたるとよいのか、「教師教育」という切り口から考えてみたいと思います。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

教師になるつもりはないのですが…

「教師になるつもりはないのですが、教員免許はとっておきたいので、教育実習に来ました」。
私がかつて担当した実習生(教員養成系大学ではない大学の学生)が、実習初日の振り返りの際に話した言葉です。私自身、初めて担当した教育実習生だったので、衝撃的でした。「教員になるつもりはない人に、いったい何をどこまで指導したらよいのか」ということに悩み、正解が分からないうちに、いつの間にか実習が終わっていました…。
後日談ですが、ある大学の先生にこの話をしたところ、冒頭の実習生のフレーズは、教育実習の事前指導で、教育実習先で口にしてはいけない「NGワード」として指導していた言葉の一つだそうです。「大学関係者として申し訳ない…」とうつむいておられました(←念のためですが、その先生の大学から来た学生ではありません)。

教育実習の指導を引き受けることは、決して簡単なことではない

学校現場から見た教育実習の状況

©深見智一

教育実習を経て教員免許を取得しようとする学生すべてが、必ずしも教職を志望するわけではありません。「#教師のバトンプロジェクト」などを通して、教師の仕事や教師の働き方が注目され、教員志望者が増加することが期待されています。しかし、人口減少社会に突入した日本においては、働く人の数が減っていくなかで、それに追い打ちをかけるように教員志望の学生の数も減少しているようです。

教育実習に関係するのは、現場経験を積むことに積極的な大学側、実習を契機に採用へつなげていきたい教育委員会、そして、実際の指導に当たる学校です。

学校はご存じの通り、児童生徒への毎日の指導で手一杯である学校が多いです。ただ、新採用で赴任してくる教員が、即戦力となり得る先生であればいいなあという淡い期待もありますし、自分自身も教育実習を経て教職を志したという教員も多いことから、実習指導という「責任」から逃れられないという複雑な気もちを持っておられる先生もいらっしゃるのではないかと思います。それで、学校は、ある意味、大学と教育委員会の「狭間」に立たされているのではないかと私は考えています。

実際、私たち学校の教員は、学校の児童生徒に対して指導することには慣れていても、学生を相手に指導することには慣れていません。それで、「自分が実習生だった時は、こうやって指導してもらったな…」「周りの先生は、こんな感じで指導していたかな…」という感覚的な指導をしていたり、「自分はこういうふうに子どもに指導してきたけど、実習生にも同じことを伝えていいのだろうか?」という不安な気持ちがあったりするのも事実です。教育実習の指導を引き受けることは、決して簡単なことではありません。

それでも、教育実習の指導をするからこそ、学べることもある。

日本の教師教育者について研究してきた武田信子氏(2019)は、教育実習指導について「現場で毎年繰り返される教育実習の指導は多忙な学校教員にとっては負担と思われるが、実は指導教諭も実習生も成長することのできる貴重な教師教育の機会」としています。武田氏は、大学の先生だけが「教師教育者」なのではなく、実習の指導教員や校内研修の担当者、初任者指導教員なども広く「教師教育者」であると捉えています。もちろん、教師教育という概念がより広く認知されている欧州と比べると、教員養成の仕組みが大きく異なることには留意する必要があります。

私自身が行ってきた教育実習指導も、決して楽に行えてきたわけではありません。ただ、「教師教育」という視点から捉え直すと、実習指導を「チャンス」と捉え直すこともできるのではないか、と考えるようになりました。実習生の姿を自分の鏡としながら、学級経営や生徒指導、学習指導について改めて見直すことができるならば、それは実習指導教員にとって「省察」の機会となり、なおかつ、教育実習指導の負担軽減にもなるのではないかと考えています。そうすることで、実習生にとっては実践的で有意義な経験を積む実習の場となり、指導教員にとっては改めて自らの教育実践を見直す場となり、「相乗的に高まる教育実習」とすることができると思います。では、具体的にどのような指導の仕方や見方をもつことができるのかについて、次回に取り上げたいと思います。

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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