2021.06.11
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失敗あれこれ~思いついたことをすぐにやってみた~(4)

夜中に急に目が覚めて、「こんな実践をやってみよう!」というアイデアが頭に思い浮かんだということはありませんか?
まさに今日の未明、目を覚ました時に頭に浮かんでいた実践をその日のうちにやってみました。
できたてほやほやの実践をその日のうちに書いてみたので、ご紹介します。

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭 山川 和宏

くじを引いて…

現在、私は6年生を担任しています。
本来であれば、今頃は愛知・岐阜・三重方面に修学旅行に出かけているはずでした。ところが、県下に緊急事態宣言が発令され、修学旅行は秋に延期となってしまったのです。

そんな修学旅行に行っていたはずの本日のことです。朝から大雨が降っていて、子どもたちは「もしも今日修学旅行に行っていたら大変だったなぁ」なんて話をしていました。その言葉の裏には、コロナ禍で様々な行事が中止になったり延期になったりしていることを受け入れつつも、やはりやるせない気持ちを抱えていることが感じられました。

だからというわけではありませんが、もともとこの日は子どもたちと何か面白いことをやって過ごしたいなと考えていたので、未明に思いついた実践を早速試してみることにしました。
とはいえ、今朝がたまで布団の中で温めていたプランです。子どもたちが朝の会をしているわずかな時間にせっせと準備をしました。

そして、子どもたちにはこんな説明をしました。
今から全員にくじを引いてもらいます。引いたくじには、「ありがとう族」「こんにちは族」「きれい好き族」「整理整頓族」「元気族」「やさしい族」のいずれかが書かれています。

「ありがとう族」を引いた人は、何かしてもらったらどんどん「ありがとう」を云ってください。あるいは、「ありがとう」と云ってもらえるような行動もしていけるとさらにいいですね。

「こんにちは族」は、しっかりとあいさつをしましょう。今日出会ういろいろな人たちに、「こんにちは」と云えるといいですね。

「きれい好き族」は、今日一日かけて、気が付いたところをきれいにしたくなる人たちです。

「整理整頓族」は、身の回りの整理整頓を進んでやる人たちです。

「元気族」は、元気いっぱいに過ごしましょう。

「やさしい族」は、周りの人にやさしくしてあげてください。

最後に「レインボー族」というくじを一つだけ混ぜておきます。「レインボー族」は、七色の虹のように、ここに挙げた全ての「〇〇族」を兼ねるスペシャルな人です。全部を頑張ってください。

そして、今日1日かけて、自分がくじを引いた「〇〇族」として、過ごしてみてください。そして、自分と同じ仲間を見つけてください。ただし、自分が何族かをばらすのはNGです。行動のみで周りの人たちに気づいてもらってください。「レインボー族」はみんなで見つけられるといいですね。答え合わせは帰りの会でしますね。

やってみると…

さて、実際にやってみると、ねらいどおりになった部分と、ねらい以上になった部分と、失敗した部分と、様々なことが見えてきました。

まずは、子どもたちが「〇〇族」を意識して行動していたことはよかったと思います。いつもよりも教室がきれいになったし、机や掲示物がきれいに整えられていました。そのような分かりやすい効果があるという点において、学級の実情と発達段階に合わせてどのような「〇〇族」を設定するかが非常に重要だと感じました。

実はこの実践は低学年や中学年くらいでやった方がよいのかなと思っていたのですが、6年生でも楽しんで取り組んでくれてホッとしました。ある女の子は、「先生は、このクラスからケンカや暴力をなくすっていう約束をみんなで果たすためにこんなことを考えてくれたンだよね」と云ってきました。実際にはそこまで深く考えてやったわけではなかったのですが、教師の意図をくみ取ろうとする姿勢に頭が下がりました。むしろ、そういう意図で実践することもできるということに気づかされました。

こんなこともありました。私がちょっとした親切をしてあげた子がすごく礼儀正しく「ありがとうございます!」と云ってくれたので、「おッ、あなたは『ありがとう族』なんやね」と軽口をたたいてみたら「ちがいます!」と即答されたのです。普段からこの子は「ありがとう」をきちんと云っているんだなと、その子のよさを再発見することができました。

その一方で、冗談っぽくではありますが、「私たちの性格を操作しようとしないでください」と云ってきた子もいました。「性格はそのままでいいンだよ。行動を意識してほしいだけだから」と説明すると納得はしてくれましたが、明らかに普段とはちがうテンションになって張り切っている子がいたのは、初めての試みだったからなのか、それとも子どもたちに過大な負担をかけてしまっているのか、検討の余地がありそうです。特に難しかったのは「元気族」だったみたいで、特に普段おとなしくて控えめに過ごしている子にとっては、どうしていいか分からなかったと云われました。

また今回はあえて、「きれい好き族」と「整理整頓族」や、「ありがとう族」と「やさしい族」といったような似通った設定でやってみたのですが、初めての試みとしては、少々分かりにくくなってしまって混乱が生じました。やはり、「〇〇族」の設定の仕方がこの実践の肝になるようです。

答え合わせについても紹介しておきます。結果的には、正解率100%ではありませんでしたが、だいたいは自分と同じ仲間を見つけることができていました。仲間の行動を観察する視点を子どもたちの生活に盛りこめたことがよかったと感じました。

そんな中、この日一番の盛り上がりは、「レインボー族」の答え合わせです。子どもたちは、この日一番いろいろなことに頑張っていたAさんがレインボー族だと信じ切っていました。ところが、Aさんは「レインボー族」ではなかったのです。その種明かしをした際の、驚きの声の大きかったこと。隣りのクラスには随分と迷惑をかけてしまいました。恥ずかしながら、担任である自分もAさんが「レインボー族」だと信じ切っていたので、びっくりしてしまいました。

普段から頑張り屋さんのAさんの行動にすっかりみんなが勘違いしてしまっていたのです。

そして、実際に「レインボー族」だった子は、ぽつりと「オレも普段はしないごみ拾いとかやってたンだぜ」と照れくさそうに話していました。

そして、修正…

放課後、教室で反省会(ふり返り)をして、子どもたちといろいろなアイデアを出し合いました。

「おしとやか族(お上品におしとやかに過ごす)」「お手上げ族(手を挙げてたくさん発表する)」「まるで先生族(まるで先生のように行動する)」「盛り上げ族(クラスの雰囲気を盛り上げる)」「親切族(だれにでも親切にする)」「ミュージカル族(突然唄って自分の気持ちを表現する)」「なかよし族(いろんな人となかよくなろうとする)」といったいろいろな「〇〇族」がさらに生まれました。どのような組み合わせでやってみるか、いろいろな可能性を探ることができそうです。

次に、どんな「〇〇族」があるかは知らずに自分の引いたくじだけを頼りに仲間を探すやり方でやってみたいという意見が出ました。この点については、私も同感です。そのためには、くじにどんなことをすればいいのか説明も書いておいた方がよいということになりました。

また、「先生もくじを引いて参加してほしい。」という声もありました。実際に自分がやってみることで子どもたちの気持ちを理解できることもありそうです。くじ作りなどの準備を任せてほしいという子もいました。

思いついたことをその日のうちにやってしまうというのは無茶だったかもしれないし、もっとしっかり練ってからやる方がきっとよいのでしょうが、このように失敗も含めて子どもたちと練り直す時間を持つということはとても大切だと思います。失敗も含めた試行錯誤こそが本当の学びをもたらしてくれると云っても過言ではありません。

これからどのようなバージョンでこの実践に再挑戦することができるのか、子どもたちと一緒に考えるという楽しみがまた一つ増えました。

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追伸:後日、追加で実践のつづきを行いました。子どもたちには、これまで通り6種類のくじが設定されていると思わせておいて、実は全員が「レインボー族」のくじを引いてしまっているというものです。ちなみに学級代表だけには、このように仕込んでいることを知らせておきました。さて、どのような結果になったでしょう?!

山川 和宏(やまかわ かずひろ)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。

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