2021.04.28
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失敗あれこれ~まちがいのすゝめ~

教師のまちがいを見つけることは、子どもたちにとって大好物だ。

今回は、教師がまちがえることの教育的効果について、考えてみたいと思う。

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭  富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。 山川 和宏

わざとまちがえてみせる

教師になって間もない頃、頻繁に初任者指導担当の先生に授業を見てもらっていた。そこで黒板に書いた漢字の書き順をまちがえていようものなら、放課後の反省会で細かく指摘されるものだから、誤字脱字はもちろん、書き順一つとってもまちがえることなく板書することに腐心していた。板書こそ子どものノートのお手本であり、そこにまちがいがあってはならないと思っていた。

しかし、いつしか私は、授業の中で教師がいかにまちがえてみせるかを考えるようになった。

わざとまちがえてみせることのメリットには、以下のようなものがあるだろう。

①子どもの興味をひくことができる。

黒板に「わたし」と書くところを「たわし」と書いてみる。最初に見つけた子が「たわしって何やねん!」と思わずツッコむ。「え?」と黒板に注目する子どもたち。そして明るい笑いが広がる……というような細かいネタをよく仕込んでいる。

なぜそのようなことをするかというと、子どもは、まちがいを見つけることが好きだからである。それが普段は子どもたちのまちがいを指摘している教師のまちがいであれば尚更である。分かりやすいまちがいであればあるほど、わざとまちがえていたとは気づかれないようにするのも一つの演出である。

②まちがいやすいポイントを共有し、注意をうながすことができる。

算数の授業や漢字の学習などの時によくやるのだが、子どもたちがまちがいやすいポイントでわざとまちがうことで、子どもたちが同じまちがいをしないように気をつけることができる。「ここはまちがいやすいから気をつけて」というメッセージをこめたまちがいである。

もちろん、子どもたちの中から気づきが生まれるように、子ども同士の学び合いの中から気づかせることができればいうことないが、まちがえた子が傷つかないような学級の土壌づくりの一環として、教師自身がまちがってみせることも必要だと考える

③まちがいを訂正し、説明する力を身につけさせることができる。

「先生、そこちがうよ?」
「え?どこがちがうの?ちょっと教えて」
「(子どもによる説明)」
「すごいね。どうやって気づいたの?」
「だって、それは……」

まちがいに気づいた子は、どこがまちがいで、どうやってまちがいに気づいたかを一生懸命に説明してくれることだろう。

道徳の時間などで、まちがいではなくとも、わざと子どもたちとはちがった考えを教師が述べることで、活発な意見発表を促す「挑発」というテクニックと共通するものがあるかもしれない。

④まちがいから新たな気づきを生み出すことができる。

これはなかなか高等テクニックになるかもしれません。子どもの主体的な学びを進める中で、気づかずに流されてしまうかもしれないけれども、ここに引っかかってくれると新たな学びにつなげられそうというところに、まちがいを忍ばせておく。

「大造じいさんとガン」のワークシートに「大造おじさんとガン」と書いておいたら、大造じいさんの昔語りとしての物語の構成に着目して学習を進める子が現れた……というのがうまくいった例といえるかもしれない。

⑤広い心で互いの失敗を認め合う学級づくりに役立つ。

まちがいや失敗はしたくないけれども、人間であれば、必ずまちがいや失敗はあるものである。まちがいや失敗から学ぶことが大切であり、まちがいや失敗をしてしまったクラスメイトその人について否定しない。そういった学びの姿勢と寛容な心を育むことにつながるだろう。

まちがえることの付加価値

どんな教師にもミスはある。

真剣な話をしている時に、子どもからまちがいを指摘されると非常に恥ずかしい思いをするかもしれない。

しかし、普段からわざとまちがえるテクニックを駆使していれば、わざとではなくまちがえてしまった時にも冷静に対処できるのではないだろうか。場合によっては、うまくごまかすことができるかもしれない。

余談になるかもしれないが、私はテストや問題集などの余りプリントを使って、「まちがいさがしプリント」をつくって子どもたちに解いてもらうことがある。どんなまちがいを仕込むかというと、ひらがなの「さ」に線を書き足して「き」に変えたり、「中」という字を「虫」に変えたりという単純なものから、「cm」を「㎠」に変えたり、解答をわざとまちがえたりと1枚のプリントに20個くらいのまちがいをしこんでおく。これがなかなか好評で、みんな夢中で解いてくれる。こういうことを繰り返していると、不思議とテストなどにおけるケアレスミスが減っていくのである。きっと「見直し力」が身につくのであろう。

事程左様に、まちがいから学ぶことは多いのである。

山川 和宏(やまかわ かずひろ)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。

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