2021.01.15
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涙をこらえるきみのための学級づくりの教室(6)多様な比較実験

明けましておめでとうございます。
もう担任じゃないのに、もう同じ学校じゃないのに、遠くに住む教え子から手紙をもらうことが、我々教師にはあります。
年賀状もその一つ。新年早々、教師という仕事に対する可能性と覚悟を新たにした筆者であります。

さて、今回もUX視点とOODAループ。前回お伝えできなかった、具体例をお話します。主にUX視点の内容になりますが、OODAループも絡んできます。
つまり、管理者視点から抜け出し、子ども視点(UX視点)に転換するためのきっかけを得る思考ツールが、OODAループということになります。
誤解しないで欲しいのですが、管理者視点と子ども視点については、どちらか一方が絶対的に良いというものではありません。あくまでも、偏った思考の癖をほぐすための比較実験です。相手との関係や場の状況によって、複合的に考えられたらよいと思っています。

絶対解よりも多様解。

高知大学教育学部附属小学校 森 寛暁

episode6.〜多様な比較実験〜

A マネジメント視点で作成された学習の流れ

涙をこらえるきみのための学級づくりの教室(6)

「ねえ、ナザシ。早速UX視点について具体例を話してよ」
「学習の流れって使っているか?」
「突然なによ!返事もせずに質問してこないでよ」
「だから、学習の流れを使っているか?学習の流れを書いたボード(写真A)を、黒板に貼っている教室が、本県にたくさんあるって聞いたんだけど」
「うん、知っているし、今わたしも使っている」
「そうか」
「うん」
「なんのために?」
「子どもが見通しをもって学習を進めていけるように」
「それ誰の言葉だ?」
「先輩」
「そうか」
「文句ある?」
「ももが言っているのは活動の見通しだ。もう1つは何だ?」
「わからない」
「めあてへの見通しだ。つまり、授業には2つの見通しが存在する。めあての見通しと活動の見通し」
「ああ、そう」
「どっちが大切か?って聞かれたら、どっちを選ぶ?」
「相変わらず、いやらしい質問の仕方するわね。でも、考えてしまうし、答えたくなるから不思議ね」
「それが発問だ」
「大切なのは、めあての見通しの方じゃないかな。だって、めあてに迫るために活動ってあるから」
「なるほど」
「ちゃんと褒めてよ」
「ねらいによっては活動自体が、ねらいになりうることもある」
「あっそ」
「話を戻すと、学習の流れっていうのは必ず必要か?授業冒頭に必ず確認しているだろ?それがないと子どもたちはねらいを達成することができないのか?」
「そんなに沢山質問しないで!」
「じゃあ、ここにもう1枚写真(写真B)がある」


AとBを比較してみよう

B 子ども(UX)視点で作成された学習の流れ

ナザシが教えてくれたことは、簡単に言うとこういうことだった。

写真Aが、マネジメント(管理者)視点で作成された学習の流れで、写真Bが、子ども(UX)視点で作成された学習の流れになるそうだ。

もっと詳しく知りたかったけど、ナザシはこれ以上のことを教えてくれなかった。答えを言いたくなかったのだろう。

ももの自問自答が始まる。

「AとBの違いは何だろう?」
「時間設定かな?」
「Bの、にこにこ道案内って子どもが命名したのかな?」
「Bの、困ったことを出し合うってちょっといいな」
「Bの、もう一度の矢印ってどういうことなんだろう?」
「自力解決→学び合い→もう一回自力解決ってこと?」
「でも、なんで時間設定を書いてないんだろう?」
「時間設定があると、理解できなかった子どもが置いていかれることがあるんじゃないかな」
「でも、これで授業はちゃんと時間内に終わるの?」
「ああー!頭がゴチャゴチャしてきた。一息」
「一歩引いてよく考えてみると、AとBじゃあ授業者が大切にしているものが違う気がしてきた」
「ひょっとして、Bは子どもと対話して作ったのかな?」

「それにしても、ナザシはどこに行ったのかな?もうモヤモヤして眠れないわ!」

柔軟な授業展開に価値を

応援していただき、ありがとうございます。
これからも、小鳥ももとマ・ナザシの学級経営物語をよろしくお願いします。残り3回となります。
読んでくださる先生方やその近くにいる人が、くれぐれも疲弊しないように。後ろ向きになってしまった気持ちが、0.5ミリちょっとでも前を向くように。

授業づくりで大切なのは、管理者視点の授業計画を遂行するのではなく、子どもの体験(特に困っている子ども)視点に立った柔軟な授業展開ではないでしょうか。
子どもが友だちと遊ぶとき、事細かな時間や計画を立って遊んでいる姿を見たことがありますか。

ドビッシーの『フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ』に場を支配されながら

森 寛暁(もり ひろあき)

高知大学教育学部附属小学校
まっすぐ、やわらかく。教室に・授業に子どもの笑顔を取り戻そう。
著書『3つの"感"でつくる算数授業』(東洋館出版社

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