2020.11.11
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涙をこらえるきみのための学級づくりの教室(3)変えるべきは子どもの「心情」ではなく「行動」

ふと思うことがある。

なんで、あの子は友だちに「ありがとう」と言わないんだろう?

そんなとき、教師は子どもの行動変容を願い、子どもの意識や考え方を変えようとする。

それ、逆です。

本稿では、子どもの行動を変える方法を通して、心情も変容していくことの一端を紹介する。
心は頭よりも体と仲がイイ。

高知大学教育学部附属小学校 森 寛暁

episode3.〜変えるべきは子どもの「心情」ではなく「行動」〜

涙をこらえるきみのための学級づくり教室(3)

「もも、ところで、ピアサポートの実践はどうだった?」
マ・ナザシは、目をグッと近づけながら、わたしに迫ってきた。
「うまくいったよ。ナザシが言った通りになったよ。最初は信じられなかったけど、子どものあの姿勢を目の当たりにするとね。とても納得!」
「それはよかった!」

わたしは今日もナザシに悩みを聞いてもらうつもりでいた。
「ねえ、ナザシ。相談があるの」
「なんだ??」
「子どもが変わらないの」
「またか。それで子どもの何を変えたいの?」
「行動」
「じゃあ、行動を変えればいいじゃないか?」
「はぁ!? 子どもの心情を変えなきゃ、行動なんて変わらないでしょ?」
ナザシはズバリ、こう言った。
「はっきり言うぞ。それ、逆!」
「逆ってどういうこと?」
「行動を変えたきゃ、行動を変えるんだよ」
「それで、心情も変わるの?」
「変わるよ。例えばスキップ。楽しいからスキップする人もいるけど、その逆もあるよね。スキップをすると後から楽しくなってくることないか?」

わたしはスキップを始めた。

「なんだか楽しくなってきたーー!!なんで!?」
わたしは無邪気に続ける。
「じゃあ、子どもが友だちに感謝を伝えられる方法を教えて。ありがとうってなかなか言わないのよ」

選んで使う言葉の箱

使ってほしい言葉を掲示

スキップして楽しくなったわたしは、ナザシの提案を今か今かと待っている。ナザシは淡々と話してくれた。

ナザシが教えてくれたことは、簡単に言うとこういうことだった。

教師が子どもに使ってほしい言葉をいくつか決める。そして、それを短冊にし教室掲示する。日替わりで3つずつ入れ替えていく。これだけだ。

「朝の会や帰りの会で振り返ってもいいけど、あまりすすめない。なぜなら、子どもの素直な言葉が出てこないことがあるからだ。それよりも、休み時間や帰りの会の直後の会話を聞き逃すな。どんな声が聞こえてくるか、もも自身で確かめてほしい」

「うん。分かった。やってみる!」

わたしは今日もナザシの提案をすんなりと受け入れてしまった。前もこうだった。ナザシの眼差しを目の当たりにすると、なぜが受け入れてしまうのだ。
──つづく
(次回:episode4.〜うずくまって動かない子への選択肢「10秒と1分どっちにする?」〜)

*登場する人物や団体、名称は架空のものです

捉え直し

応援していただき、ありがとうございます。
小鳥ももとマ・ナザシの学級経営物語をよろしくお願いします。半年間の連載です。
読んでくださる先生方やその近くにいる人が、疲弊しないように。後ろ向きになってしまった気持ちが、1ミリちょっとでも前を向くように。

子どもの「心情」ではなく「行動」を変えようと捉え直してみると、日々の指導方法の改善アイデアはどんどん出てきそうですね。

サン=テグジュペリ 河野万里子 訳の『星の王子さま』の108ページを開きながら

森 寛暁(もり ひろあき)

高知大学教育学部附属小学校
まっすぐ、やわらかく。教室に・授業に子どもの笑顔を取り戻そう。
著書『3つの"感"でつくる算数授業』(東洋館出版社

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