数学的な考え方を働かす、ってどういう姿? mathematical way of thinking
算数科の目標にある言葉、「数学的な考え方を働かす」とは、一体どのような姿を指すのでしょうか?子どもが何をすれば、数学的な考え方を働かした姿と言えるのでしょうか?
本校算数研究室で、ふと目に止まった古書(『小学校算数実践指導全集8数学的な考え方を育てる指導』日本教育図書センター、1995)に、そのヒントがありました。杉山吉茂氏が整理したその書籍には、このように書かれていました。
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「数学的な考え方」という言葉は、(中略)「考え方」という以上、そこには考える方向や考える順序のようなものを含んでいる。
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また、「数学的な考え方」は英語で、「mathematical way of thinking」と表現されるようです。英語表現から考えてみると、「考え方」は、プロセスや手続きの意味合いをもつようです。
高知大学教育学部附属小学校 森 寛暁
現行の学習指導要領では
現行の学習指導要領では、
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「数学的な考え方」については「目的に応じて数,式, 図,表,グラフ等を活用しつつ,根拠を基に筋道を立てて考え,問題解決の過程を振り返るなどして既習の知識及び技能等を関連付けながら,統合的・発展的に考えること」であると考えられる。
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とあります。中学校、高等学校まで見渡して、整理してみます。
小 筋道を立てて
統合的・発展的に考える
中 論理的に考え
統合的・発展的に考える
高 論理的に考え
統合的・発展的に、体系的に考える
杉山吉茂氏の整理では
杉山氏の整理では、
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「数学的な考え」という言葉の定義としては「数学でよく使われる考え」、あるいは、「数学を創造、発展させるときによく使う考え、あるいは、考え方」というものがもっとも一般的であろう。このように言えば明確に定義されているようであるが、実際には、まだまだ曖昧であり、いろいろなレベルで使われていて一定していない。
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とあります。
さらに、「帰納」「演繹」「類推」といった考え方を数学的な考えとして具体例を述べています。しかし、これらの考え方は、一般にものを考えるときの考え方で、数学特有なものではないと言っています。
また、◯◯化を目指して工夫したり、いろいろ試みたりすることによって達成される考えがあるとも述べています。「◯◯する」よりも「◯◯しようとする」のであって、◯◯化するための方法や手続きがきまっているわけではないとも述べています。
◯◯化しようとする考え
・形式化しようとする考え
・単純化しようとする考え
・一般化しようとする考え
・拡張しようとする考え
・特殊化しようとする考え
・数値化しようとする考え
・図形化しようとする考え
・記号化しようとする考え
・式化しようとする考え
算数・数学ワーキンググループや清水静海氏の資料では
さらに、『教育課程部会算数・数学ワーキンググループ配付資料参考資料2』(平成28年5月24日)と清水静海氏の『説明資料 算数・数学の学びと言語力の育成-「筋道を立てて説明する力」に焦点を当てて-』を参考にして、まとめてみます。
論理的に考える
・帰納的に考える
・順序よく考える
・根拠を明らかにする など
統合的に考える
・関連づける
・既習の事柄と結びつける など
発展的に考える
・適用範囲を広げる
・条件を変える
・新たな視点から捉え直す など
次に、清水氏の資料では、
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「根拠となることを明らかにしそれに基づいて述べること(第一の「なぜ」)」、「着想や方法に気づいたきっかけや動機を明らかにすること(第二の「なぜ」)」であり、自分の考えを他者に受け入れてもらうために必要である。さらに、他者の考えに学び高めるため、質問したりコメントをしたりする。すなわち、批評する際には、「質問したりコメントをしたりする理由を明らかにすること(第三の「なぜ」)」を明らかにすることも必要である。
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と書かれています。
3つの「なぜ」を明らかにすることが、筋道を立てて説明する力だと述べています。
具体的な数学的な考え方 -まとめ [表]-
このように、現行の学習指導要領と杉山氏の考え、算数・数学ワーキンググループ、清水氏の考えを基に、筆者なりに解釈してみました。
右の図を参考にして、数学的な考え方を働かす具体的な子ども姿をイメージしていただければ、幸いです。
参考資料
森 寛暁(もり ひろあき)
高知大学教育学部附属小学校
まっすぐ、やわらかく。教室に・授業に子どもの笑顔を取り戻そう。
著書『3つの"感"でつくる算数授業』(東洋館出版社)
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