2020.11.28
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「新聞スクラップの効用」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

情報ノート作り

 今年度のはじめから、児童は国語科の「情報ノート」として、新聞スクラップに取り組んでいます。児童は週に1回、自分の家で購読している新聞や、学校でもらえる新聞の中からお気に入りの記事や気になった記事を選んでスクラップを行います。具体的には、記事を貼り付けて、記事の要点や感想、分からなかった言葉などを記します。この活動を通して、社会への関心を深めてもらいたいと思っています。今年度は新型コロナウイルス流行による休校がありましたので、児童が登校できない間は私が作成した新聞ワークシートに取り組ませ、新聞への関心をもってもらうようにしました。児童は一般紙の難しい記事も見出しや写真などを手がかりに記事の内容を把握しようとがんばってきました。その活動を生かして、情報ノートによる新聞スクラップを開始しました。

 児童は、毎回、自分の関心事に合わせて記事を選びます。NIE(教育に新聞を)の醍醐味は教材を自分から選べることです。丸ごと一部の新聞から好きな材料を選ぶ活動が楽しさの秘訣です。最初は難しいかもしれませんが、何度か取り組んでいるうちにスクラップになれ、楽しく活動できます。

 最近の児童の情報ノートには、新型コロナウイルス流行に関する記事や、菅総理大臣を取り上げた記事、東京オリンピック・パラリンピックに関する記事などが多く、社会的に大きな話題になっていることに関心をもっていることが分かります。これらの中からいくつかを児童に紹介し、記事の内容について子どもたちと話し合ったり、感想を述べ合ったりしています。この活動を通して、児童に様々な力がついてきていることを実感しています。

児童のスクラップ記事を読んで

 情報ノートによる新聞スクラップを通して、児童には以下の力がついていると考えています。

 <読む力> 

 児童はまず、大きな字で書いてある見出しや記事に付けられた写真を見て、記事の大まかな内容をつかみます。その後で記事を読みます。児童にとって難しい言葉や用語もありますが、分からないところは読み飛ばして、記事の概要をつかめるよう読み方を指導しました。記事を読んで大事だと思ったところにマーカーで線を引き、この記事を書いた記者が読み手にどんなことを伝えたいと思っているのかを常に考えるようにさせました。この活動を通して、文章の大まかな内容を素早く読む力が身についてきています。この力は、多くの情報に触れる現在、大変重要な力になると考えます。

<書く力>

 児童はスクラップした記事を読み、その後で記事の要約をします。記事にはどんな内容が書いてあるのかを短く、そして分かりやすく書くことを心がけることによって、目的をもって書く力が付きます。また、記事を読んで考えたことを理由や根拠を添えて書くことで、説得力のある意見を書く力も付きます。そして、何よりも、毎週繰り返すことにより、書くことに慣れて、楽しく活動に取り組めるようになるようです。

<調べる力>

 児童は記事を読んで分からなかったことや疑問に思ったこと、あるいは難しい言葉などを進んで調べるようになりました。これまで活用してきた国語辞典や図鑑、そしてインターネットを活用して進んで調べるようになりました。そして、スクラップノートに調べたことをまとめることができました。調べたことをうれしそうに話す子どもたちを見るにつけ、どのように調べる技能を教えるよりも、児童に調べたいと思う気持ちをもたせることが大切であると思います。児童が調べることができず、疑問を解決できない時には、私も助言をしたりいっしょに調べたりしました。その活動を通して、私自身も勉強になりました。

<社会への関心>

 最後に新聞スクラップの一番の効果と考えているのが、社会への関心の高まりです。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の問題、総理大臣の交代、アメリカの大統領選挙、東京オリンピックとパラリンピックの話題などいつも大きなニュースがありました。児童はいつも新聞からこれらの情報を得ることができました。時には、教師が知らないことも知っており、逆に教わることもありました。きっと、新聞の活用を通して、社会への関心が高まったからだと思っています。

これからもスクラップを続けてほしい

児童は5年生の間、週に1回ぐらいの割合でスクラップを続けていきます。スクラップが好きな児童はひまを見つけて宿題でなくても取り組んでいます。また、スクラップをした記事を元に家族で話し合いをしてくれている子もいます。学校での学習をはなれて学びが深まっていることを感じます。3月になり、5年生を終えるころにはスクラップをした情報ノートがふくらみ、1年間の貴重な記録となるでしょう。児童にはこのノートをいつまでも大切にしてもらいたいと思っています。そして、できることならば、6年生になってからも情報ノートづくりを続けてほしいと思っています。そして、これからも社会への関心をもち続けてもらいたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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