2020.10.22
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オンラインでインタビューしてみよう!~5年社会科「水産業の盛んな地域」~

ご覧いただきありがとうございます。白馬エリアの小学校では音楽会シーズンとなり、合唱や合奏が各学校で行われます。昨年度(令和元年)、学級の合唱・合奏で人生で初めて指揮をする経験がありました。長野県では、図工専科がない(東京都は全校配置が基本)ことも含め、小学校担任の専科(音楽・図工)への関わりが深いなと感じます。

さて、今回も社会科5年「水産業のくらし」についてです(令和元年の実践報告)。海に囲まれていない長野県ではありますが、他の都道府県同様に学習は進みます。しかし、児童の身近な職業ともいえる産業(特に米作り)と比較すると、水産業は身近な産業とは言えないので、導入の工夫から単元に入ることにしました。

今回は、学習問題設定後の実際の調査活動(いわゆる調べ学習)の様子や学習後の資料の整理等の場面をご紹介します。

長野県公立小学校非常勤講師 清水 智

1.調べる計画を立てる

筆者と授業冒頭の部分。漁法を描く大型教材は効果絶大。

これまでの学習経験(主に理科や社会科)で、学習サイクル(問題→予想→調査・観察・実験→結果の整理→考察→結論→一般化)の大体を理解してきていたので、学習問題の設定後は自分なりの見通しをもつための①結果の予想②調べる計画作りーーに入りました。

調べる方法を考える段階では、既習体験を想起し、教科書・資料集・図書室資料・WEBという4つの方法に加え、社会科らしい「本物体験=見学」という案が毎回のように出ます。が、山間地域にある小谷村ですから、なかなか本物体験と言うわけにもいきません(子どもたちのニーズが高い学び方でもあります)。そこで出てきたのが……。

また、今回は時数の都合上実施はしませんでしたが、この単元では結論後の学習内容の定着を図る一つの方法として、カルタに調べたことをまとめて学級内で遊ぶというのも面白いですし、一人ひとりの学習成果物として形にも残ります。読み札・絵札に漁業に関わる人々の工夫や努力を入れるというカルタ作り・カルタ遊びを通しての学びの深まりと自分では知らなかったことを遊びながら、学びの広がりが出てきます。

2.調べる時間

オンラインインタビューでしよう。このフレーズに関しては1学期辺りから「小谷村と1300km離れた小笠原村とで、いつかライブ中継しよう!」と、大まかなことだけは担任として幾度となく宣言していたので、子どもたちの中でイロイロとつながったように思えました。

*調べる時間*
①教科書・資料集。後に図書室資料 → 2コマ
②WEB。そして上記の① → 1コマ

と合計3コマは校内での調べる時間となりました。②のWEB検索に関してはホワイトリスト(指定したいくつかのサイト)を使用し、WEB活用能力の向上もねらいました。

3.もっと調べる時間~プロに聞こう!~

実際に魚群探知機がどう使われているのかを中継。機器それぞれの役割等を教えてくれる漁師さん。

そしていよいよオンラインインタビューの時間です。

*オンラインインタビュー

◇質問内容
事前に作成した質問リストを予めメールで送らせていただき、漁師さんへの子どもたちの実態紹介としました。また、私も把握していることで、子どもたちがこの本単元のねらいを達成するためのヒントともなっていました。

◇通信環境
①小谷小学校 → Wi-Fi、LINE電話(タブレットから発信) +50インチモニター
②小笠原 → スマートフォン(ネット無制限利用契約)

(Zoom等が流行る以前の時期の授業)LINE電話が手軽に活用できたこともあり、上記の条件で実施をしました。漁師さん側の回線契約については何度も確認しました。なお、小谷小学校(小谷村)は長野県内でも数少ないオープンスペース(廊下とも壁がない)や全館Wi-Fiということもあり、単元の中での自由進度学習やシームレスなICT機器の活用が積極的に行えました。

◇実際の授業
①あいさつ
通常の授業と同じように開始し、児童の目の前で接続をしました。つながるまでの緊張感、つながった時の歓声。そして、全児童が初めて見る(リアルタイムの)小笠原の景色。ここにオンラインの醍醐味がありました。

②改めて学習問題の確認
今日のこの「オンラインインタビュー」の時間は何をハッキリさせるための時間なのか。しつこいくらいに全体確認をしました。これがブレると、この日思いついた質問内容もブレてくると思われます。

③質問タイム
いざ始まってみると、子どもたちは予め考えておいた質問を矢継ぎ早に質問していました。漁師さんは質問に即座に回答するとともに、関連する様々な情報も教えてくれました。ここに、事前に質問内容を送っておいた意味が出ました。質問内容を把握していることで、漁船内のアイテムの紹介などこちらの期待以上のお話を聞くことができました。

④お礼のあいさつ
質問タイムはあっという間に過ぎ、子どもたちのノートにはメモがびっしりとなりました。脱線する話もありましたが、そここそオンラインでのホンモノ体験の面白さとも言えるかもしれません。リアル感が感じられる一瞬とも言えます。

4.調べたことをまとめる

その場で思いついた質問は付箋紙に書いて提示。音声で質問するのはなかなか難しい。

インタビュー後、次の時間を使って結果の整理に入りました。ノートに書き綴ってきたことを、思考ツール等を使って整理し、自分なりにまとめる時間とも言えます。最終的にはノート1ページ程度の文章表現やイラスト等でコンパクトに結果をまとめました。 ここまでが個人の時間。ここから先の結果の整理は学級全体での時間とし、黒板(模造紙)全体を使い、結果の整理をしました。ここでも、大まかに表のようにして結果を整理されて見やすいようにしました。思考ツールをこうやって使うというサンプルの意味合いもあります。

指導内容・目標と照らし合わせ、結果の整理が一段落したところで、考察に入りました。結果と予想を比較して、どんなことがハッキリしたのか。また、どんなことが違ったのか。そして、その要因はどのようなものなのか……。

ここまで考察として詳しく書けるようになるまでは、時間と積み重ねが必要ではありますが、理科や社会科等で繰り返ししていくことで、結果と考察の違いが分かりはじめ、結果を分析する面白さに気付いてくるように思えます。高学年だからこその思考の高まりを5年生後半では感じます。

5.結論は表現に一工夫

学習問題に対する結論の場面では、理科のように正対するような書き方が書きづらいなと社会科では思います。そこで、私が社会科で結論付けるときに使う言葉があります。それは「つまり」という言葉です。

今回の学習問題は「水産業の盛んな地域ではどのような工夫をして、私たちの生活を支えているのだろうか」でしたので、この問いに対する結論として……。 「水産業の盛んな地域'小笠原'での(私たちの)生活を支える工夫とは、つまり……」  (少し強引ではありますが)接続語を使って、結論を書くことで幾分マイルドな表現になるように思えます。また、つまり……の後に書かれている言語表現や本人との会話の中で、どの程度この学習単元について理解が深まったかという、見取りの児童理解にもつながります。

清水 智(しみず さとし)

長野県公立小学校非常勤講師


元東京都公立小学校主幹教諭/現長野県公立小学校非常勤講師/教育ICT・学級経営コンサルタント/Google認定教育者レベル2

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