2020.08.08
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「日々勉強そして、教材研究!」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

社会科が嫌い?

社会科の授業

現在5学年を担当しています。子どもたちに授業についてのアンケートをとると、社会科に苦手意識をもつ子が多いことが分かります。その理由として、児童が学習内容と生活との関係を感じられないからではないかと考えました。また、自分で関心をもって学習内容について考え、調べたい課題を設定して活動するような主体的な学習になっていないからであるとも思います。

そこで、毎回の授業で新聞を活用して、学習する内容が具体的に社会とどうかかわっているのかを実感できるようにしました。例えば、以下の実践を行いました。

・暖かい地域である沖縄の暮らしについて学習する際に、沖縄の家屋などを取り上げた記事を示しました。
・長野県の高原野菜について学習する際に、高原野菜の出荷に関する記事を取り上げました。
・米作りの現在の課題を理解させるために、農家の高齢化に関する記事を取り上げました。
・米作りの機械化について理解させるために、ドローンを活用して農薬をまく様子が記された記事を取り上げました。

これらの取組により、児童が学習していることが社会とどうつながっているのかを理解できると考えました。

また、授業では沖縄県や長野県の気候について学習し、気候に合わせた作物が栽培されていることを学びました。その学びを生かして、作物の産地について興味をもってほしいと思いました。そこで、毎日の給食を学習の素材として活用し、具体的には、給食に出されるメニューの中から野菜を1つ選び、野菜について解説した子ども用の新聞記事を読み、その野菜がどこから運ばれてきているかを予想する活動を行いました。児童は、

「きっと、夏は高原野菜がたくさん出荷されるから、今日のキャベツは長野か群馬のものだと思うよ」
「ジャガイモは北海道で作られているものが半数以上だから、今日の肉じゃがに使われているジャガイモも北海道産じゃないかな」
「今日のおかずに入っている小松菜は埼玉県産だよ。埼玉県は小松菜の生産量が1位だからきっと埼玉県産のはずだよ」

など、理由もはっきりさせながら産地の予想をすることができました。毎日、栄養教諭の先生が教室に来てくださり、児童に産地を教えてくれました。児童は予想が外れると、どうしてなのだろうと続けて栄養教諭に質問をしていました。このような学習を通して、児童は社会科が好きになると考えていました。

「社会科がつぶれればなあ…」

これまでの取組により、児童は社会の学習への興味を高めていると考えていました。しかし、ある時、児童がこんな発言をしました。

「明日は、国語ではなく社会がつぶれないかな……」

この言葉を聞き、これまで社会科を好きにさせるための取組をしてきていたので、「どうしてだろう?」という気持ちになってしました。

しかし、児童の気持ちになって考えると、学習する素材は私が用意したものであり、児童が自ら求めて得たものではありません。また、このところの新型コロナウイルス流行の影響で授業の行い方にも制限があり、グループで調査をしたり、調べたことから自分の考えをまとめて発表し合ったりする学習ができませんでした。おそらく、児童は自分が学習内容についてさらに知りたいという気持ちを深められていなかったのではないかと思います。この点を反省して、これからの授業に生かしていきたいと考えています。

新たなチャレンジを

2学期はまだコロナウイルス感染症の影響が残っているかもしれませんが、児童が主体的に協働して取り組める学習を計画したいと考えています。児童が学習内容について課題をもち、友達と協力して調べて、考えを形成し発信するような実践にしたいと思います。そして、多彩なゲストティーチャーも生かしていきます。

一つは、「食料生産」についての学習で地産地消の取組について学ぶ学習です。ここでは、毎日の給食の献立を立てている学校の栄養教諭や地域で農園を経営している方をゲストに招き、地産地消に取り組む大切さを学びます。その学びをベースに、児童が地産地消を進めるために必要なことを調べたり、聞いたりして、自分の考えを形成する活動を行っていきます。

まずは、「食料生産」について学ぶ学習において、児童が今後、地域で地産地消を進めていくための具体的な方策を考える活動を取り入れます。そのために、学校の栄養教諭や地域の農園を経営する方と連携し指導を進めたいと考えています。具体的には、学校の給食や地域の農園を題材に、地産地消を進めるかたの話を聞いて、さらに知りたい課題を設定し、グループで調べていきます。そして、分かったことをもとに、今後地産地消を進めていくための方策を具体的に考える活動を取り入れたいと考えています。

また、「防災」や「エネルギー」に関わる内容の学習もあります。そこでは、10年前の東日本大震災の被害や原発の問題などを取り上げて、児童が現前する問題として学習内容を捉えられるようにしていきます。そのために、被災地を取材した新聞記者と連携し、児童に問題提起を行う予定です。また、地域で活躍する防災士の方とも連携し、児童が情報収集において生きた情報を得られるようにしたいと考えています。

これらの実践を通して、児童と一緒に学びながら楽しい社会科授業づくりを目指していきたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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