2020.07.08
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「新聞を読もう」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

新聞トークで関心を持たせる

今年度より完全実施になった指導要領では、引き続き各教科での新聞の活用が明記されました。

さらに、今回は総則においても、情報活用として新聞活用を行う重要性が盛り込まれています。

そこで、児童が使う教科書にも様々な単元で新聞記事が掲載されています。例えば、高学年の国語では「新聞を読む」活動が言語活動として取り上げられています。教科書にも「新聞を読もう」という単元があり、複数の新聞を読み比べる活動が例示されています。今回はこの単元の学習をもとに、児童が新聞を使えるようになってほしいと願い、指導を行いました。

教科書に新聞を扱った単元がありますが、それ以前に大切なことは児童が新聞に興味関心をもち、授業以後も新聞を進んで読むようになることだと考えています。そこで、単元の学習に入る前に児童の関心を高める目的で、朝の会で「新聞トーク」をはじめました。

「新聞トーク」は私が児童に紹介したい記事を示し、感想などを交流し合う学習です。社会科や理科などの学習に関連のあるものから、社会の中で話題になっている記事を選びました。そして、記事の見出しを隠して、見出しを当てるクイズなども行いました。児童は毎回楽しみにしていました。

「見出し」に注目

毎回、児童に新聞記事を紹介する中で、特に注目させたのが「見出し」です。

見出しは最高の要約とも言われ、記事の一番伝えたいことが短い言葉に凝縮されています。そこで、新聞を読む際には記事のすべてを読む必要はなく、まずは見出しを見て、記事の大まかな内容をつかむように話しました。 また、ある記事を示して、「この記事にどんな見出しがつけられたと思う?」と発問をし、児童からいろんな考えを引き出しました。児童はこれまで読んだ記事のことを思い出しながらいつも楽しそうに記事の見出しを想像していました。

例として挙げた新型コロナウイルス流行の影響で、校庭で15分という短い時間で行われていた小学校の入学式の記事では、

  • 「入学式短時間」
  • 「はじめての学校、明日から休校」
  • 「入学式を校庭で」
  • 「15分だけの入学式」
  • 「児童不安な入学式」

など、自分なりの見出しをつけることができました。これまで新聞を読んだことのない児童も見出しに注目することで、新聞に苦手意識を持たずに読めるようになってきました。また、新聞を読むこと自体にも興味をもってきました。

新聞の特長を学ぶ!

これまでの学習を生かして、いよいよ教科書の「新聞を読もう」の単元に入りました。教科書では新聞の特長を確認し、同じ内容を取り上げた新聞記事を複数読み比べて、違いなどを話し合う学習が取り入れられています。この活動において、学校の近所にある新聞の販売店と連携し、児童分の新聞を提供していただきました。

児童に1部ずつ新聞を配り、気づいたことなどを話し合う活動を行うことができました。

  • 「先生、記事の大きさが違うね。」
  • 「先生、やっぱり見出しがあると分かりやすいね。」
  • 「スポーツ面などもあるよ。」
  • 「たくさんの広告もあるね。」
  • 「写真がついている記事もあるよ。写真は1日の新聞にどのくらいつかわれているのだろう。」

など、気がついたことを友達にたくさん発表することができました。

その後、新聞記事は始めに大切なことが書かれている、いわゆる「逆三角形」の形になっていることや、新聞に関する様々な用語も学んでいきました。新聞は記事の価値付けがしてあり、記事の大きさや見出しの大きさでその重要度が分かることも学びました。
これらの学習を生かして、教科書に掲示されている、同じ内容について書かれた別の記事を読み比べる活動を行いました。

書いた記者の視点によって、取り上げられている内容が違い、記事につけられた見出しも違っていることに気がつきました。教科書に掲載されている記事以外にも新型コロナウイルスに関する同じ日の別の新聞も読み比べてみました。児童は実際の新聞を読むことでたくさんの気づきを得ることができていました。

新聞スクラップで新聞が大好きに!

新聞に関する学習を終えたあとから、児童と新聞スクラップに取り組むことにしました。

新聞スクラップとは、丸ごと一部の新聞から気になった記事を切り取り、ノートなどに貼り付けて感想や考えたことなどを書いていく活動です。授業の時間を活用してスクラップのオリエンテーションを行い、やり方を学びました。その後は児童に自由にスクラップを行わせるようにしました。児童は、新型コロナウイルスに関する記事や東京オリンピックの記事など、自分が興味を持った記事を進んでスクラップして提出しています。児童のノートを添削しながら私自身も勉強になっています。これから3月までスクラップノートの作成を続けていきたいと思います。3月になった時に、児童の1年間の記録となるようなノートができるとうれしいと思っています。そして、新聞からいろんな情報を得て、自分の世界を広げられるようにしてほしいと思っています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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