盆栽職人の話を聞き
さいたま市には昔から続く盆栽村があり、盆栽づくりで有名です。数年前には市内で、盆栽の世界大会が行われました。盆栽村には大宮盆栽美術館があり、多くの学校が社会科見学で訪れます。私の担当する学年でも今年度、社会科見学で訪れ、盆栽の見方や育て方、そして歴史などを学びました。児童は盆栽について学んだことを新聞にまとめて発表する活動を行いました。
私自身、さいたま市の盆栽について興味をもち、授業の教材研究を越えて、盆栽について学ぶために、盆栽美術館をよく訪れるようになりました。今回は、現代の盆栽界で代表的な盆栽家である山田登美男さんのお話を聞きに行きました。山田さんは、江戸嘉永年間よりつづく盆栽園・清香園の四代目であり、日本盆栽作家協会代表幹事でいらっしゃいます。1975年、毎日新聞社主催の第1回日本盆栽作風展入賞を皮切りに、毎日新聞社賞受賞、外務大臣賞受賞、内閣総理大臣賞受賞などを受賞されています。さらに、国内最大の盆栽展である国風盆栽展において、その年の一番良い盆栽に与えられる最高栄誉の国風賞を5回受賞されました。名実ともに、日本を代表する盆栽家のお一人です。
山田さんの講演の中で、
- 盆栽を作るときには「木と対話をしている」
- 盆栽を作るときには「木に愛情を注いでいる」
- 盆栽の仕上げは「天(自然)に任せる」
という3点が大変心に残りました。これまでは、盆栽は人の力で作り上げるものだと考えていました。ところが、山田さんは木の個性を見取り、それを生かして作品を作っていらっしゃいます。また、完成は人間の手で行うというよりは自然に任せる点もあるということでした。今回お話を伺って、盆栽づくりについてさらに詳しく理解することができました。
児童の指導に生かしていきたい
山田さんのお話を伺い、今回学ばせていただいたことは、教師である私の仕事にも生かせるのではないかと考えました。山田さんは、素材である木の個性を生かそうと、木と対話し、愛情を注いで育てていました。また、すべてを自分で完成させるというのではなく、最後の完成は自然に任せるというスタンスをとっていました。
教師として、私はこれまでどちらかというと子どもたちを自分が思うような枠にはめようとしていることが多かったように思います。もちろん、子どもたちにどのような力をつけさせたいのかをはっきりさせ、モデルを示しながら指導をすることは大切であると思います。しかし、子どもたちと授業や学習を共に創っていくという視点が少なかったように思います。
私自身、ここ数年防災を取り上げた教育に取り組んでいます。これは、決まった教科書があるわけではありません。そのような場面を積極的に取り入れ、子どもたちと対話をしながら、授業を進めていけるようにしたいと思いました。そして、子どもたちがそれぞれにゴールを設定し、主体的に学習に取り組めるようにもしていきたいです。
今回、盆栽家の山田さんから学んだことを自分自身の実践にどのように生かしていけるか今から楽しみです。
菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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