2019.01.31
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部活動について考える(3)

大学の部活動のあり方

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

今回は大学の部活動から中高生の部活動について考えていきたいと思います。

大学の部活動は、サークル的な部活動、競技力向上を目的とした部活動、学生主体の部活動、指導者を置いての部活動など様々な形態で活動しています。その部活動ですが、私は大学という最高教育機関及の部活動が、ただ競技の勝敗を求めるためや学生の趣味を満たすためだけに存在してはもったいないのではないかと感じています。今回はそのような観点から、実体験を交えながら、大学の部活動について述べていきます。

以前、大学で教員兼部活動(女子)コーチをしていたときがあります。TVの番組で日本のオリンピック選手が「『才能は社会に還元すべき責任がある』と祖父に言われた」と言っていたのを聞いて「ハッ」と気付かされました。大学の教員として、大学生にもそのような感覚を芽生えさせなくてはいけないのではないかと思いました。そして部活動の中で様々な活動をするようにしました。

同時期に中学校(男子)の外部コーチも行っていました。まずはじめの取り組みとして、異なる市でしたが、毎週、合同練習を行うようにしました。お互い勝ったり負けたりで、力的にちょうど良かったことも幸いしました。

力の差はなかったですが、中学生の生徒や保護者たちは大学生を敬い、合同練習ができることにとても感謝していました。大学生たちは先輩としてしっかりとした姿を見せるようになりました。それを続けた結果、大学生は高校時代に試合に出場できない選手ばかりでしたが、やる気いっぱいだった学生たちは急成長し、創部4年目にして東海1部リーグ昇格をし、少人数で小兵軍団でしたが強豪校の仲間入りをすることができました。

大学生にはそれだけでなく、プロリーグやスポーツ系NPO法人とボランティア交流をしたり、スポーツ教室などの学生コーチとして指導したりと、数多くの社会交流や社会貢献の機会を作りました。当時の大学生は技術的には高くなかったかもしれないですし、練習時間も減ってしまいましたが、社会の中の一員として自分の置かれている立場やそれに伴った心構えをもってくれていました。言ってみれば、日本の一般の大学生らしくない大学生で、私が言うのも何なのですが、どこに出しても恥ずかしくない学生たちでした。

このように行っている大学の部活動は、次のような地域の発展につながります。

  1. 地域が大学生の意識などを育てる
  2. 交流が盛んになると地域民は応援してくれる
  3. 学生だけでなく地域民も大学に愛校心を持つ
  4. その大学へ行きたくなる。または行かせたくなる。
  5. 次第に循環ができる。
  6. 大学を中心に地域が発展する。

大学の部活動はこのような可能性を秘めています。「才能は社会に還元する責任がある」と最初に言いましたが「才能がなくても社会に還元できることがある」ようなシステムの構築が、大学の部活動にできるのではと感じました。そして学生にも地域民にもWin-Winとなるような活動につながります。

これだけ中高の部活動が全国的に盛んに行われながら、その上の大学や社会につながりにくい現状が、子ども達の部活動に対する目標を持ちきれないでいる一因となっているのではないでしょうか。「部活をがんばってもスポーツで生きるのはプロに行く一握りだけ。だから勉強をがんばれ」と言っている先生の気持ちもわかります。しかし部活をがんばっていることも個性です。上手い選手だけの部活動進学ではなく、やる気がある子のための部活動進学もあって良いと思います。上=大学から変えてあげる必要があるのではないでしょうか。

大学改革が求められています。日本の文化と言っても過言ではない部活動をなくしていく改革ではなく、逆転の発想で、生かしていく改革を進めると良いのではないでしょうか。「大学部活動改革」考えていく価値があると思います。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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