2023.02.28
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大学スポーツ(大学の部活動)の現状と未来について

10年ぶりに大学スポーツの指導に戻ってきました。そこで感じたことをお伝えします。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

この度、今年1月より、教員養成を専門とする近隣大学の女子バスケットボール部で外部コーチとして指導させていただいております。勤務先は旭川大学短期大学部(4月から公立化して「旭川市立大学短期大学部」になります)で変わりませんが、大学バスケの舞台に10年振りに戻ってきました。

私を指導に招いてくれた選手達はとても気持ちのいい学生達で、礼儀正しくやる気に満ち溢れています。これまで指導者がいなかったこともあり、上手く試合や練習ができなかったこともあり、何が正しいのかどの方向に向かって行ったらいいのかわからず、教わることに飢えていたようです。まだ指導し始めて1ヶ月ですが、話をよく理解して取り組みどんどんチームが変わってきています。大会では格上のチームに下克上を起こすほどに急成長しています。秋季大会には国立大学でのインカレ出場ができるよう、チーム一丸となり楽しく激しく逆説的に取り組んでいます。

大学スポーツ界の現状

私が戻って来て思ったことは、やはり指導者不足です。私学の強豪校など一部の大学では指導者がいるのですが、多くの大学で指導者がいません。そのため学生コーチでがんばっているところもあります。学生コーチ自体について私は賛成の立場です。しかし学生コーチは上級生がなることがほとんどであるため、すぐに卒業を迎えることになってしまいます。卒業後は持続が難しいため、やはり正規の指導者がいることが前提での学生コーチが望ましいでしょう。

主体性と放任

学生の主体性という話にもなります。主体性を考えるうえで放任との区別をつける必要があります。学生に丸投げは主体性ではなく放任となってしまいます。指導したうえでどの部分を学生たちに任せるかということが主体性につながるものだと思っています。

バスケットボールの場合ですと、1891年にジェームズ・ネイスミス氏により発案されて以降132年の歴史があり発展してきました。時代と共に求められるプレースタイルが変わり、指導理論も変わります。現在行われているバスケットボールもそんな時代の流れの中の1つにすぎません。他のスポーツも同様です。学生コーチだと現在のバスケットボールだけになりがちです。大学スポーツはある意味、最高学府で行われているスポーツです。強い弱い、上手下手ではなく、指導もプレーも理論的にこだわったものであってほしいと思っています。ベースとなる理論があったうえでの主体性だと思っています。

最後に~大学スポーツ界の動きに呼応して~

2019年に大学スポーツ協会の設立という大きな変革があり。これまで各スポーツで学連による運営がされているだけでしたが、これからは競技間が連携しながら巨大組織として運営していくことになります。スポーツ庁長官室伏氏の言葉に「2016年リオデジャネイロオリンピックにおけるオリンピアンの約3分の2を大学生または大学卒業者が占めております(大学スポーツ協会メッセージより)」とあり、大学スポーツが担う日本スポーツの発展への期待は大きいです。大学スポーツ協会で学生のデュアルキャリア(学業とスポーツ両方のキャリア)を身に付けられるようなプログラムを提供したり、大会を動画配信したり、などプロに匹敵し巨大なスポーツ産業となっているアメリカの大学スポーツ協会「NCAA」を目指して取り組んでいます。しかしまだ一部の大学頼みとなってしまっており、下部までは浸透していないようです。

私たちのチームはまだまだ力は及びませんが、秋にはこのチームで大学スポーツ界を変えるきっかけが作りたいと思っています。また地域の中学生等に普及していくような活動もしていきたいと思っています。どうか応援の程よろしくお願いいたします。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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