2023.04.10
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公立短大誕生

私の職場が公立短大化しました。このことは全国的に見てかなり珍しいことです。公立短大になることで見えた景色をお伝えします。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

皆様、いつも教育つれづれ日誌をご愛読いただきありがとうございます。この度、第33期も執筆させていただけることになりました。気持ちを新たに取り組んでいきますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

私事ですが、これまで旭川大学短期大学部に勤務しておりましたが、2023年4月1日より所属が旭川市立大学短期大学部となりました。新しい学校に移ったということではなく、設置者変更で私立から公立となり、それに伴い名称が変更したということです。これは全国的にかなり珍しいことであるため、今回の公立化で見えた景色について述べていきます。

公立化の背景

私たちの学校は経済学部・保健看護学部(看護学科・コミュニティ福祉学科)・短期大学部(食物栄養学科・幼児教育学科)がある総合大学で、北海道の第二の都市である旭川市にあります。この旭川市にはかつて超有名私立大学が存在していました。しかし少子化の影響を受け学生募集が立ち行かなくなり、撤退してしまいました。
もし私たちの学校もなくなってしまうことになると、看護・介護・食・保育といった社会の基盤を支える成り手がいなくなってしまい、地域が崩壊してしまいます。そのため有名大学の二の舞とならないようにしたい旭川市の思惑と、少子化により学生募集が難しくなっていた私共の大学との思惑が一致し、公立化していくことになりました。

時代の流れは…

全国的に見て四年制大学の公立化は珍しいことではありません。ここ10余年で地方都市を中心に10校を超える大学が公立化しております。公立化の人気は凄まじく、ここ数年の志願者数をみると10万人以上増加しています。現に私たちの大学も志願者倍率は高騰しました。

一方、以前にも書きましたが、公立短大はここ20年で55校から13校にまで減っています。そして1年前にも関東圏の公立短大が四大化し、また一つ公立短大がなくなりました。これは女性の社会進出やキャリア形成が認められ、その割合が高くなってきたことが大きく関係しています。そのため短大においては公立私立関係なく厳しい現状がありますが、特に公立短大ではその傾向が顕著になっています。また短大の公立化というのはかなり珍しく、調べても過去に1件しか見つけることができませんでした。短大に関しては、時代に逆行している感が否めません。現に短大の方は過去最低の入学者数となっております。このことからも公立大学と公立短大と一緒のくくりで考えられないことがわかります。

高校生が求めるもの

ちなみに1年間の授業料と卒業までにかかる学費を見てみると… 
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 国立大学 …   535,800円(約2,500,000円)
 公立大学 … 約 540,000円(約2,500,000円)
 私立大学 … 平均959,899円(約5,000,000円)
 私立短大 … 平均723,368円(約2,000,000円)
 公立短大 … 約 390,000円(約1,000,000円)
 ※( )内は卒業までのおおよその学費
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上記のようになっており、年間の授業料を見ても、卒業までにかかる学費を見ても断トツで安くなっています。しかし、近隣でたまたま授業料を半額にした学校がありましたが、そこも定員割れをし、しかも前年度よりも入学者数が減っていました。学費を基準に進学を考える時代ではないようです。

また、専門学校へも流れている傾向があります。ここ数年の状況を見てみると大学進学は緩やかに減少、専門学校は僅かに減少しているがほぼ横ばい、短大は激減、で短大が一人負けしている状況となっています。専門学校は短大よりも学費がかかりますが、より自分に合った専門的な進路を選ぶことができます。
また短大は2年という修業期間で忙しい学生生活となってしまいますが、大学や専門学校は比較的ゆとりがあります。これらのことから、学費より、QOL(Quality of Life) を求める傾向にあることが分かります。日本経済が停滞しているとはいえ、生活の質は上がってきている証拠でしょう。しかし一方で、貧困世帯の負の連鎖が社会問題としてあげられています。経済格差=教育格差で、家庭が経済的に難しいと良い教育を受けることが難しくなってしまっています。

そのため、これまでの公立短大では公立ということで学力の高い受験生を求めていたかもしれませんが、これからはその逆の視点を持たないといけなくなっていくのかもしれません。

最後に

昔は短大が重宝されてきました。私大バブルと言われた時期もあります。種別は異なりますが、現在は通信制高校の需要が高まっています。現在、学校現場はICTを導入したりなど大きく変わっています。この変化は決して特別なものでなく、常に行われるべきもので、学校とは不変ではなく、時代により移り変わっていくものであることがわかります。公立短大に限らず、柔軟な学校体制や教員の姿勢が必要だと感じました。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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