2024.01.31
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「振り返り」に値する中味が大事 子どもにとっての中味のある授業(2)

「小学校の楽しい思い出」と問われたら、何と答えますか?
大学生だったら、どう答えるでしょうか?
「授業」って答えるでしょうか?

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

「小中学校の思い出」って何だろう?

大学3年生を対象とした「特別活動の指導法」という授業があります。
この授業の冒頭で、
「小中学校で『楽しかった思い出』って何ですか?」
と尋ね、付箋紙に書いてもらいました。
その後、それをグループで話し合い、共有していきました。

学生たちが書き出していったのは、
〇 「小学校6年の時の運動会。大玉転がしや騎馬戦、白熱の応援合戦が最高だった」
〇 「中学生の時の修学旅行。京都、奈良に行き、おいしいご飯を食べてうれしかった」
〇 「小学校5年生の時の林間学校でウォークラリーをしたこと。グループで協力してクリアできたことがうれしかった」
〇 「小学校6年生の時、委員会活動で劇をしたこと」
〇 「中一で行った遠足!友達ができるきっかけがコレでした」
〇 「学級活動で、小学校の最後にお別れ会を行ったこと」

このような内容でした。
どのようなことに気付きますか?
そうなんですね。
全て「特別活動」なんですね。
子どもたちの記憶に残っているものの多くが、学校行事や児童会活動をはじめとする特別活動なんです。
「特別活動の指導法」の授業としては、とても好ましい反応であるのかもしれません。

「卒業文集」にみる小学校の思い出

私がこの授業で参考にしていた「特別活動の理論と実践」という書籍によれば、小学校の文集で取り上げている題材の多くは、特別活動の内容が圧倒的に多いというのです。
最も多いのは、「林間学校」、次いで「宿泊行事」「友達」と続きます。
この結果には、納得しますよね。
自分の小中の「卒業文集」をめくってみれば、同じような結果が見えてくるのではないでしょうか。

学生たちが振り返る、「学んだこと」とは、

そして、学生たちは、ここに挙げた多くの「特別活動」から、様々な事柄を学んできています。
声をいくつか拾ってみると、

〇 「運動会では、友達と協力する力、見通しを持って計画する力、最後までやり抜く経験、伝統や文化、集団行動力」
〇 「林間学校では、人間関係形成、家族のありがたみ、普段の生活(電気ガス)のありがたみ、問題解決能力」
〇 「学級活動(クラスのルール決め)では、もめ事を解消するため、クラス全員で意見を出し合い、考えていく、相手を尊重する気持ち」
〇 「音楽発表会では、集団に役に立てる喜び、目標に向かって皆で努力するよさ」
〇 「校外学習では、バスの乗り方、施設の使い方等公共の場の利用法。地域の歴史と場所」

教科学習では、なかなか学び得ないことを学び、身に付けてきているのだと思います。

授業の思い出は?

しかし、「小中学校の思い出」といって、学校生活の大半を占めている「授業」が出てこないのは、なぜなのでしょう。
冒頭の大学生が挙げてくれた中には、

〇 「6年生の時の理科の実験と観察が楽しかった」
〇 「小学3年の春。理科の授業で学校の裏にある川に学級の皆で行った」

少数ですが、「授業」に関する思い出も見られました。
やはり、国語や算数で、「楽しかった思い出」には、ならないのですね。

「小学校での思い出」は、……

先日、全国でも伝統的な研究校として、知られている横浜市立大岡小学校の授業研究会に参加しました。
6つの教室の授業が公開されました。
授業は、いずれも総合や生活科でした。
そして、どの教室でも、子どもたちの実に生き生きとして学び合う姿、課題を追求していく姿に圧倒されました。
そして、そこで私が考えたのは、この子どもたちの学びは、きっと生涯の財産になるであろうということです。
そして、もし成長して「小学校の楽しかった思い出は?」と尋ねたら、「授業」を挙げる子どもは決して少なくない、と思わせる授業ばかりでした。

むすびに

そう。
授業こそ、子どもたちの心に楽しい思い出として残せるようにしたい。
そんな中味の詰まった授業を創りたい。

私自身も、学生が卒業時に
「大学時代の思い出は?」と、4年間を振り返ったとき、
「授業です」と言葉として発せられるよう精進しなくては、とあらためて感じたところです。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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