2018.06.24
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道徳学習で新聞を活用する(その2)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

道徳の教材と社会を新聞でつなぐ

 道徳が今年度から特別の教科として扱われることになりました。これまでの道徳は、児童が主体的に考えたり討論をしたりすることが大切になると言われています。そこで、児童にとって、授業で扱う資料と実際の社会との距離を縮め、児童がより主体的に学習をしてく工夫が必要であると考えています。今回は新聞を活用して道徳の資料をより児童が身近に感じられるようにする実践を行いました。

 道徳の教科書(教育出版6年)には、東日本大震災の被災地である岩手県・大船渡市で海の中のがれき撤去のボランティアを行ってきた、ボランティアダイバー・佐藤寛志さんが取り上げられた資料があります。佐藤さんが、困難な作業や漁師さんから活動を理解してもらえない状況の中でも、あきらめずにがれきの撤去を行ってきたときの気持ちを考え、児童が社会のためにできることは何かを考える活動を行います。

 この授業を行う1週間前から、朝の会で佐藤さんを取り上げた新聞記事を紹介しました。佐藤さんが海の中でがれきを撤去していることを取り上げた記事や佐藤さんや地元の漁師さんが、これまで支援していただいたお礼に熊本地震の被災地の方にホタテを送っているという記事、さらには佐藤さんの考えに共鳴して各地からボランティアダイバーが集まった記事などを取り上げました。児童は記事の紹介を通して、佐藤さんの活動について興味をもってきました。

「佐藤さんはこんな活動をしてきたけれど、最初のうちは漁師さんから理解されなかったみたいだよ。なぜだろうね。」

と、授業にも関係する問いを児童に投げかけておきました。

新聞スクラップで意欲を高める

 ボランティアダイバーの佐藤さんを取り上げた記事の紹介と並行して、記事のスクラップに取り組みました。児童は普段から新聞のスクラップに取り組み、好きな記事をノートに貼り、感想や記事を読んで考えたことを書く活動を行っていますので、その一環として佐藤さんを取り上げた記事を読み、スクラップをしました。
 
 スクラップした記事は佐藤さんが海から大きながれきを撤去している写真が付けられた記事です。写真では佐藤さんが、がれきにロープを付けて一つひとつ撤去しています。また、被災地全体で500万トンのがれきが出ていることも記事は伝えていました。児童は記事を読んで、どれだけがれきが多いか、また作業がどれだけ大変かを感じることができました。

「この作業にどれだけ時間がかかったのかな。」

「佐藤さんはどうしてこの活動をしようと思ったのかな。」

「どのくらいの人がボランティアとして活動しているのかな。」

など、授業にもかかわってくるような問いを児童はもつことができました。

授業をよりリアルに

 新聞を活用した学習を行った上で、道徳の授業に臨みました。児童は佐藤さんの活動について詳しく知っているので、教科書を活用して佐藤さんの気持ちを考える学習に積極的に取り組みました。考えを友達と発表し合ったり、意見交換をし合ったりする場面でも真剣に取り組んでいました。これも、事前の新聞学習で、児童の学習材に対する興味関心が高まっているからであろうと考えています。

 授業の最後に佐藤さんからのメッセージを紹介しました。佐藤さんに事前に連絡をして、「佐藤さんの活動の原動力になったことは何か」ということについて、児童にメッセージを送っていただきました。児童は、佐藤さんからのメッセージを真剣に読んでいました。

<佐藤さんからのメッセージ>

「海を愛する心と、郷土愛、人と人との繋がりのあたたかさが原動力になっていると思います。それと、以前働いていたタイでもスマトラ津波からの復興した経験があり、みんなに背中を押してもらいました。」

 児童は、これまでの活動で、佐藤さんの活動を身近に感じ、きっと「自分にもできることがあるのでは」と考えるようになったはずです。今回の実践が、子どもたちの心にずっと残ってくれるとうれしいです。これからも、新聞などを活用し、児童と道徳で扱う資料をつなぐ工夫をしていきたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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