2018.05.24
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セーフティの構築

私は授業の中にp4c(=philosophy for children「子どもの哲学」)という手法(正解のない問いについて皆で輪になって対話する)を取り入れています。
p4cについてはコチラをご覧ください↓
https://www.manabinoba.com/tsurezure/016000.html

 この中でもっとも大切なのは、いきなり対話するのではなく、その集団の「セーフティ」(いわゆる安心・安全の場)をしっかりと構築することにあります。
「セーフティの大切さ」については、以前の記事をご覧ください↓
https://www.manabinoba.com/tsurezure/016054.html

 今年度は、1年次の担任ということもあり、まずは皆が安心して過ごし発言できる場づくりを最優先に考えています。今回は、そうした取り組みの一部を記事として紹介したいと思います。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

p4cスタート

新年度が始まり、1年次のクラスでも「p4c」をやってみました。冒頭に次のようなルールを簡単に説明。
(ルール)
① コミュニティボールを持った人だけが発言できる。
② 発言をバカにしたり、頭ごなしに否定したりしない。
③ 考えても分からないときは「パス」してもOK!


全員でも15名弱なので、皆で輪になって、自己紹介も含めながら「宝くじで6億円当たったら、どうする?」
初めてやる生徒も多く、「ザワザワ・・・ザワザワ・・・」
沈黙する生徒がいると、また「ザワザワ・・・ザワザワ・・・」

正直、皆が安心して発言できる場とは言い難い雰囲気でした・・・。授業の最後に、対話のルールを守れたかどうかを確認したところ、案の定、「イマイチ・・・」という生徒もいました。さて、ザワザワし始めたら、そこですぐさま注意すべきか・・・なかなか悩ましい問題ではあります。が、今回は、ある意図を持って、そこはあえてスルーしました。

ルールは自分たちで考える

 授業の中での対話のルールについては、最初にこちらから提示しましたが、実際の対話を通して自分たちでいろんなことを感じ、考え、「こうした方が良いかな?」と考えられるようになってほしいと思っています。前回の反省を踏まえ、次の時間には、「前回の対話で、話しやすかったときはどんなとき? 話しにくかったのはどんなとき? 聞きやすかったのはどんなとき? 聞きにくかったのはどんなとき?」と投げかけてみました。

 まずは色の異なる付箋に自分が感じたことをメモしてもらいました。次に3~4人グループでその内容をシェアします。シェアした内容は、グループごとにホワイトボード(裏面がマグネット)を4分割し、「話しやすいとき」「話しにくいとき」「聞きやすいとき」「聞きにくいとき」にまとめてもらいます。その後、ホワイトボードを黒板に貼り、全体でシェアしました。やはり、話しやすいor聞きやすいときは「周りが静かにしてくれている」「あいずちをしてくれる」「こちらを向いてくれている」といった内容、逆に話しにくいor聞きにくいときは「周囲がざわついている」「こっちを見ていない」といった内容が出てきました。こちらから一方的にルールを押し付け、騒がしい生徒を押さえつけるのではなく、皆でルールを考えたいというのがねらいです。

 このワークで出された内容は、模造紙にまとめて教室に掲示しています。ただ、画びょうで貼ってしまうと、「絵に描いた餅」になってしまいがちなので、教室後方の黒板にマグネットで貼り、SHRや授業の冒頭など、必要に応じて活用するようにしています。

他者を受け入れる

「p4c」の対話では、他者を受け入れるということが非常に重要です。自分と異なる意見が出てきても、冷やかしたり排除したりせず、まずは受け入れるという姿勢を持ってほしいのです。ただ、口で言うのは簡単ですが、実践しようとするとなかなか難しいものがあります。前述したような事例と同様、冷やかした生徒をすぐさま注意するのは簡単なことです。ただ、そうした教員からの一方的な注意が積み重なることで対話の深まりがなくなり、当たり障りのない話し合いになっては本末転倒でもあります。

 そこで、今年度から「インプロ(improvisation=即興演劇)」というワークショップを授業の中で行っています。もともとは俳優のトレーニングのようなものだそうですが、海外をはじめ教育の中にも取り入れているところもあるようです。その名のとおり、即興で様々な動きをするワークショップなのですが、「失敗してもよい」「自分らしく無理なく参加」「とにかく受け入れる」ということに重点を置いているそうで、「p4c」の対話の場づくりにも適していると考えました。私たち教員は、どうしても「うまくできていたか?」「ルールどおりやっていた?」「盛り上がっていた?」という視点で見てしまいがちなんですが、「こうしたワークショップが苦手な生徒がいても無理に周囲に合わせるのでなく、周りもそういう状況を受け入れているか?」「ルールどおりでなくても、何とか物事は流れるということが分かったか?」といった新たな視点に気づかされました。

 インプロのワーク関しては、記事の文章のみで説明することが難しく、以下のリンク等を参照していただければと存じます。リンクは今年度、勤務校で指導・助言いただいている「インプロ仙台PAGE☆ANT」のウェブサイトとなっています。
https://www.improsendai.com/

 今回は、セーフティ(安心・安全の場)の構築に向け、どのようなことが考えられるか、書いてみました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。もちろん、年度途中や生徒の実態に応じて、臨機応変な対応が求められるとは思います。また、教科の中だけでなく、HR等での取り組みもたくさんあると思います。ぜひ、コメント等でご教示いただければ幸いです。よろしくお願いします。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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