2017.06.01
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授業に対話(p4c)を取り入れる

私の授業(地歴・公民)では、
p4c「=philosophy for children(子どものための哲学)」
という教育手法を取り入れ、
生徒同士が対話する時間を
設けるようにしています。


手法自体は世界中で
取り組まれているものですが、
自分の担当するクラスに合わせて
だいぶアレンジもしています。


今回は、
そのねらいや内容について
紹介したいと思います。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

導入のねらい

地歴・公民の授業に限りませんが、
ディベートや発表など、
授業の中で
皆の前で話す活動が
行われることがあります。


しかし、
生徒だけでなく私たち大人であっても、
人前で話すことは緊張しますし、
それが苦手だという人も
多いと思います。


そこで、
少しずつでも
一人ひとりが
自分の考えを話すことが
できるような場を
設けたいと考えました。

p4cとは?

p4c(=philosophy for children)とは、
直訳すると
「子どものための哲学」


具体的には、
クラス全員が輪になって座り、
毛糸でつくった
コミュニティボールを回しながら、
正解のない問いについて
対話をしていく
というものです。


ルールとして、
 ・ボールを持った人だけが話せる
 ・名前を呼んでボールを回す
 ・発言を否定したりバカにしたりしない
 ・パスしてもOK
といったものがあります。


小学校や中学校の
研究授業を何度か拝見し、
自分なりにアレンジして
取り入れてみました。

効果は?

1回や2回やっただけで
すぐに効果が見えるものではありませんが、
年間通してこうした対話を続けてみると、
少しずつですが、
変化が見えてきました。


ボールを持っている間は
周りの人たちも
じっと待ってくれます。


私たち大人は、
黙っている生徒を見ると、
「パスする?」「考え中かな?」などと、
ついつい助言しがちですが、
この対話では、あえて待ちます。


すると、
やや長い沈黙の後、
パスをするのではなく、
自分の考えをしっかり
話し始めることが多くなりました。


生徒の感想でも、
「◎◎という考え方は新鮮だった」など、
通常の授業よりも
多様な考えに触れることで
得られる気づきがあったようです。


昨年度、同じクラスで
春と秋にp4cを導入した研究授業をやったのですが、

春の研究授業では、
「話すことが苦手な人も話せるように」というけれど、
そういった生徒たちはほとんど話していなかったのでは?
といった指摘を受けました。

それに対し、秋の研究授業では、
話すことを苦手としていた生徒も、
ボールが回れば必ず話せるようになり、
その頻度も増え、
明らかな変化が見てとれました。

どのように取り入れているか

この対話を、
教科・科目の授業に
どのように取り入れているかを
紹介したいと思います。


自分で導入する前に
見せていただいた研究授業は、
小中学校の「道徳」として
1コマのほぼすべての時間を
対話に使っているものでした。


高校では「道徳」の時間がないこともあり、
教科・科目の授業1コマすべてを使うことや、
それを継続的に実施するという点で、
見たものをそのまま取り入れることは
難しい状況にありました。


そこで、
数回の通常授業ごとに実施する、
単元のまとめの授業の中に
取り入れることにしました。


単元のまとめの授業の流れとしては、
 (1)単元の復習・・・生徒が発表、発表者以外は評価
 (2)p4c・・・生徒が考えた問いを皆で話し合う
 (3)振り返り・・・その日の気づきや自己評価を記入
といった感じです。


ちなみに通常の授業では、
授業の最後に、
「今日の授業内容に関する正解のない問い」と、
それに対する自分なりの答え
を記述させています。


ここに記述してあった問いの中から1つ選び、
その問いを考えた生徒が
「なぜその問いを考えたか」
を話し始めるところから対話をスタートしています。

生徒に合わせてアレンジ

こうした手法を取り入れる際には、
研究授業を見たり、
研究論文や書籍を読んだり、
様々な勉強をすると思います。


ただ、熱心に研究するあまり、
その手法の「正しいやり方」に
こだわり過ぎてしまうのは
注意が必要だと思います。


大切なのは手法ではなく、
なぜやるのか?
という目的ではないでしょうか。


そこを忘れず、
目の前の生徒たちにとって
最良のやり方になるよう
アレンジすることの方が
非常に重要だと考えています。


今回のp4cで言えば、
ボールを持った人だけが発言できる
というルールがありますが、
そもそも対話を導入した経緯や目的が、
「話すことが苦手な生徒にも話せる場をつくりたい」
ということでしたので、
あまり厳密にはしていません。


もちろん、相手を頭から否定したり、
冷やかしたりしない
というルールが守られていることが
前提にはなります。


また、黒板に模造紙を貼り、
ファシリテーショングラフィックのような感じで
(厳密には教員はファシリテーターでなく一参加者ですが・・・)
対話の流れを記録・図化し、
生徒全員に分かるようにもしています。


といったように、
様々アレンジして取り組んでいます。


これからも生徒の成長によって
また違ったやり方に
変えていく必要があるかもしれませんが、
それも教員としては楽しいことです。


今後も、当初の目的を忘れず、
継続して取り組んでいきたいと思います。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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