2017.07.05
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セーフティの大切さ

先日、私の勤務校で、
「対話的な学びをめざす公開授業」
が行われました。


内容は、これまでの記事で紹介した
p4c(philosophy for children=子どものための哲学)
を取り入れた公開授業や研修会です。


p4cに積極的に取り組まれている
ハワイの研究者・教員の方々もお招きしての
大変貴重な機会でした。


今回は、そのときに感じたことを
書きたいと思います。


p4cについては、
以前の記事を参照してください。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

公開授業の概要

今回の公開授業は、以下のとおり、
p4cをまったく知らない方に紹介するところから、
p4cを導入した授業まで行いました。


《当日の日程》
(第Ⅰ部) 「p4cとは」
 公開授業①・・・全日制40名のp4c初体験のクラス。
           ハワイの先生主導での授業。
 研修会・・・教員向けにp4cの紹介。

(第Ⅱ部) 「p4cの授業への導入」
 公開授業②・・・定時制9名のクラスが対象。
           私が授業を担当し、ハワイの
           先生方にも入っていただきました。
 意見交換会・・・公開授業②について意見交換。


ハワイの先生方と国内関係者だけでも10名おり、
本校教員や外部からの参加者もあって、
生徒たちはかなり緊張したようです。

公開授業①の様子

公開授業①は、
p4c初体験のクラスで、
ハワイの先生が主導した授業でした。


1時間しかないので
事前に問いを考えておいてほしいということだったのですが、
その問いをいきなり生徒たちに投げかけるのではなく、
生徒たちの様子を見ながら「場づくり」に
じっくり時間をかけていました。


当初の予定からは内容が大きく変わり、
対話する時間はほとんどなくなりました。


しかし、これが非常に良かったと思っています。


p4cという手法の紹介を優先するあまり、
初対面の生徒と無理に対話しようとしても
うまくいくはずがありません。


もしかすると、対話を強制された生徒たちには
対話に対する悪いイメージが残り、
今後は対話しようとしなくなるかもしれません。


今回の授業を受けた生徒たちや参観者の方の
感想を聞いてみると、
「時間が足りなかった」「もっと話したかった」
というものが多くありました。


これは、またやってみたいという気持ちの表れであり、
初めてのp4c体験としては成功だったと言えると思います。

公開授業②の様子

公開授業②は、
私が担任している定時制のクラスで、
普段から授業の中にp4cを取り入れています。


慣れているとはいえ、生徒数9名に対し、
20名以上の参観者に囲まれての授業となりました。


授業時間のすべてをp4cというわけではなく、
普段のスタイルを崩さず、
 (1)生徒による学習のまとめのプレゼン
 (2)p4c(今回のテーマは「文明が発達することは良いことか?」)
 (3)振り返り
といった具合に進めました。


プレゼンする生徒は大丈夫だろうか?・・・
普段どおりの対話ができるだろうか?・・・


どうなることか、内心ドキドキしていましたが、
そんな心配は無用でした。


生徒たちは周囲の参観者に臆することなく、
普段どおり堂々と対話し、
振り返りシートにも、深く考え記述していました。


この日の授業で感じたのが、
授業を皆で作り上げるんだ!という
一体感のようなものでした。


例えて言うなら、
クラス全員で取り組んでいる合唱を
見てもらっているような感覚でしょうか。


うまく言えませんが、
周囲にいた大人たちも引き込まれ、
授業後の意見交換会では、
「頭がエキサイトしている!」「鳥肌がたった!」
といった声が聞かれました。

セーフティとは

では、公開授業①②ともに、
何がそんなにうまくいったのでしょう?
と、自問自答してみました。


p4cという「手法」が見事にハマったのか?


それは違うと思います。


手法うんぬんではなく、どちらの授業でも、
授業をする「場づくり」に全力を注いだことが
功を奏したのだと思います。


対話がうまく成立するには、
場の雰囲気がとても重要です。


何を言っても否定されない、
バカにされない、
自分の話をしっかり聞いてもらえる、
じっくり待ってもらえる・・・


そんな安心感のある場が不可欠です。


p4cでは、そのような安心感のある状態を
「セーフティ」と呼び、
対話をする上で最も大切にしています。


「安心・安全の場」とか
「親和的な関係」とか、
言葉は違えど、教育の世界では
よく言われてきたことだと思います。


少し前に「アクティブラーニング」という言葉が
脚光を浴び(?)、様々な教育の「手法」が注目されました。


しかし、どんなに優れた手法であっても、
p4cで言う「セーフティ」が確立されていなければ
うまくいかないし、
逆に「セーフティ」さえ確立されていれば、
どんな授業スタイルであっても
生徒たちは大きく成長していくと思います。


公開授業のときの意見交換会でも、
こうした話題が出ました。


ハワイでも、
新年度早々、いきなり対話を始めるのではなく、
長いときは数か月かけて「セーフティ」を
確立していくそうです。


当然、教師側が一方的に
「これがセーフティだ!」
と押し付けるのではなく、
皆で考え作り上げていくといったことを
おっしゃっていました。


ということで、
教育手法が注目されがちな昨今ですが、
そのベースにあるべき
「セーフティ」の大切さを感じた一日でした。


高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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