道徳で人物が取り上げられている
道徳が今年度から特別の教科として扱われることになりました。これまでの道徳は、主人公の気持ちを考えようというような「読み物としての道徳」という面が強かったのですが、これからは問題解決的な学習や体験的学習を取り入れて指導方法を工夫改善していく必要があるとされています。また、臓器移植など答えがない問題も取り上げることも求められています。
児童が活用している教科書を読むと、具体的な人物に焦点を当てた教材が見られます。例えば、リオパラリンピックで活躍したトライアスロンの秦由加子さんや、松下電器を創業した松下幸之助さんの資料が盛り込まれ、自分自身について見つめていく活動が促されています。このような教材をあつかう場合に、児童がもっと取り上げられた人物について詳しく理解できていると授業がやりやすくなると感じることがあります。そこで、今回は道徳において新聞を活用する意義について考えてみたいと思います。
授業でよりよく人物について理解するために
担当する6年生児童が使用する教科書に、リオパラリンピックで活躍した秦由加子さんの話題が盛り込まれています。秦さんが子どもの頃足を不自由にして、挫折しそうになったのですが、コーチからの励ましにより、がんばってアスリートを目指そうと思ったという内容です。この資料から、児童が諦めないでがんばる態度を学んでほしいとしています。
しかし、秦さんについて詳しく知らない児童が多くいました。秦さんが実際にパラリンピックでどんな活躍をしたのかを理解することで学習への意欲も高まり、意欲的に授業に取り組めると思います。そこで、秦さんを取り上げた新聞記事を事前に読む活動を取り入れました。児童は、秦さんを取り上げた記事をスクラップして、感想などをまとめることで秦さんへの興味が高まりました。道徳の時間に秦さんが資料に出てきた際には、「この間記事で読んだ秦さんだ」と歓声を上げていました。
道徳で取り上げられている人物について、事前に新聞記事をもとに知っておくことで、学習の導入が大変盛り上がります。ここでも新聞の有効性を確かめることができました。
さらに学習を発展させるために
学習の前に新聞を読む活動の他に、学習後に新聞を活用する場合もあります。児童が活用する教科書には、松下電器の創業者である松下幸之助さんが取り上げられています。松下さんが、若いころに働いていた会社での安定した仕事を捨ててでも自分が作りたいものつくる道を選んだことなどから、自分が思ったことをやり遂げる大切さについて学びます。
児童はこの学習を行った後に、さらに松下さんについて知りたいという気持ちがわいてきました。また、書店などで松下さんに関連した書籍を見たことがあり、興味をもっている児童もいました。そこで、授業後に松下さんを取り上げた記事を読む活動を取り上げました。松下さんが、残した名言をまとめた記事を読み、松下さんが経営者としてだけでなく、人間としても多くの方から尊敬されていたことを知りました。児童からは、「さらに松下さんのことを知りたい」という声が聞かれました。学習をした後にさらに興味を広げる意味でも新聞が大変効果的であると分かりました。
これからも、道徳の学習において、積極的に新聞を活用して、児童の興味関心を高めていきたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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