2022.06.29
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やさいげんき2年1くみGOGOGO!!(3) 【食とくらし】【2年・生活科】 

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。
第185回目の単元は「やさいげんき2年1くみGOGOGO!!③」。前回は、一人一つ自分の育てたい野菜を決め、栽培活動に没頭し、個別に学び深めていく子どもの姿を紹介しました。第3回では、他学年の子どもとの交流や出会いから、協働的に学びが生まれ、深めていった子どもの姿を紹介します。

【スイカを育てるDさん~協働的に学び合う~】

1.雌花と雄花について調べてきた ~不完全な知識~

図1 Dさんが調べてきたスイカの育て方

スイカを育てていたDさんは
「家で、スイカについてしらべてきたから、みんなに言いたい」
と、話してきたため、野菜研究会(野菜について話し合う授業の場)を開いた。

図1は、家で自主的に調べてきた資料である。
以下は、そのときの対話場面である。

野菜研究会でスイカの育て方を全体に伝える際の対話場面

Dさん「スイカについて言います。スイカの人は、肥料のやりすぎに注意です。寒いときは、ホットキャップをかぶせます。スイカには、雄花と雌花があって、それを直接、(花を)くっつけます。雌花は、丸いつぼみがついていて、雄花はついてません。それで見分けます。すると、スイカができます。実がついてから小玉スイカは、35日、大玉スイカは、40日で収穫できます」

先生「おたずねはないですか」

子どもたち「雄花と雌花ってなんですか」「雄花はオスの花で、雌花は、メスの花です」

先生「Dさん、雄花と雌花をくっつけなかったらどうなるの」

Dさん「雄花と雌花をくっつけなくてもスイカはできるけど、甘くならない」

この発表をDさんから聞いたとき「雄花と雌花を直接くっつけなかったらどうなるのか」尋ねた。すると、Dさんは「雄花と雌花をくっつけなくてもスイカはできるけど、甘くならない」と答えた。この段階では、知識として間違っていた。間違いをその場で訂正することを考えたが、私は、スイカを育てながら知識として獲得してほしいと考えたため、学びが生まれるまで待つことにした。

2.協働的な学びの演出-5年生との出会いから受粉について知識の更新へ-

Dさんは朝、スイカのお世話をしていると、同じスイカを育てているEさんの雌花がとれてしまっていること(図2)に気づいた。
そこへ、5年生の子どもがやってきて、以下のような対話が見られた。

スイカの知識が更新された際の5年生との対話場面

5年生「スイカは、雄花をとって、雌花にくっつけないとできないよ。」

Dさん「でも、スイカはできるんじゃないの?」

5年生「ある程度まで、スイカは大きくなるけど、ぽろって とれてしまうんだよ。」

  • 図2 Eさんが育てていたスイカの雌花がとれてしまった

  • 図3 5年生にスイカについて教えてもらったときの様子

雌花と雄花をくっつけないと、甘くならないだけでなく、スイカができないことを5年生の子との対話から学んだ。スイカを育てるという経験をもとに、子ども同士で協働的に学びを深め、既存の知識が更新される姿が見られた。(図3)

私が、授業の際に、スイカの受粉に関して知識を訂正しなかった理由は、2つある。

1つ目は、調べてきたDさんの高まった思いを尊重したかったからである。自分の調べてきたことをみんなに知らせたい、スイカを育てる仲間に伝えたい、そんな思いの高まりを大切にしたかったからである。

2つ目はこの後、子どもたちがスイカを栽培するにあたって、雌花と雄花を受粉しなかった場合、スイカの実ができないことに気づくと考えたからである。スイカの実がとれたときに、「どうしてとれたか」を問いかけることで、くっつけない(受粉させない)と実ができないということに気づかせたいと考えたからである。

実際には、Eさんの実がぽろっととれてしまったとき、「水のやりすぎ」「雨が続いたからかな」「雌花を触りすぎて痛んでとれたかも」と、スイカができない理由を予想していた。そんな予想を話していた時に、5年生の子がやってきた。5年生の子がスイカを育てた経験があることを知った私は、「スイカを育てているから、2年生の子に教えてあげて」と声をかけ、5年生の子と対話が生まれるように仕組んだ。こうして、実際にスイカができなくて困るという経験を通して、雌花と雄花をくっつけることの重要性(=受粉)に気づき獲得した学びとなった。

子どもは、本や図鑑で学ぶこともある。Dさんは、本や図鑑からスイカについての知識を学んだのだが、間違って理解をしていた。こうした場合、先生として教えるということも支援の一つである。私は、今回は「待つ」という支援をした。スイカがぽろっととれて、実が大きくならなかった事実をもとにDさんは、5年生から学び、知識を更新した。

スイカを育てたいという切実な思いを持って獲得した知識は、5年生の理科「花から実へ」の学習を学ぶ上で強固な足場となって積み上げられていくと考えられる。

3.スイカの雌花が咲かない。夏休みに突入。「持ち帰って世話をしたい」

  • 図4 Dさんの一日のふりかえり

  • 図5 雨の中、受粉を行うDさん

Dさんは、スイカのお世話を、人一倍熱心に取り組んだ。ネットをかぶせて虫を防いだり、肥料を与えてみたりするなど、一生懸命お世話をしていた。

資料(図4)は、Dさんの一日のふりかえりである。毎日、お世話をして花が咲くことを心待ちにしている様子がわかる。お世話をする中で、朝、花が咲き、お昼にはしぼんでいることに気づき、雌花と雄花をくっつけるタイミングは朝だということも学んでいた。さらに、つぼみの段階で、スイカの花が雌花か雄花か見分けられるようにもなった。

図5は、雨の日に雌花が咲いたため、雄花をくっつけて受粉に取り組んでいるところである。しかし、この実は雨の影響からか、スイカの実が大きくなることはなかった。

図6  Dさんの1学期の振り返り

1学期の最後には、自分の1学期を振り返って作文を書いた。図6は、Dさんの振り返りである。1学期の学びについて「やさい」を育てたことを振り返っている。Dさんは、切実にスイカの成長を望んでいることが見て取れる。また、自分の野菜だけでなく、友達もいっしょに栽培して収穫することで、よりよい学校生活に繋がっていることがわかる。さらに、Dさんは、夏休みに入っても、世話をしたいと考え、家にスイカを持ち帰った。諦めずにお世話を続け、何としてもスイカを育てたいという思いの高まりが見られ、粘り強く学びに向かう姿として確認することができた。

4.スイカはならなかったけど、漬物にして食べたDさん

夏休み明け、Dさんは、自由研究には、スイカの栽培した観察日記を提出した。
また、2学期に書いた作文には、大きくならなかったスイカの実も漬物にして食べたことが綴られていた。

こうして、栽培活動に没頭したDさんは、夏休みに入っても自ら進んで学ぶ姿としてみることができた。

授業の展開例

〇受粉の仕組みや農家の受粉の工夫を調べてみよう。

〇自分の育てた野菜をタブレットを使って撮影して、栽培日記をつけよう。

箱根 正斉(はこね まさなり)

兵庫県西宮市立北六甲台小学校 教諭
教員11年目。生活科・総合的な学習の時間を中心として子どもが切実に学び続けることができる姿を目指して、単元づくりや授業づくりに日々取り組んでいる。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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