パイナップルの授業 【食と地域】[小学2年生・生活科]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子どもたちの興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第208回目の単元は「パイナップルの授業」です。
授業情報
テーマ:食と地域
教科:生活科
学年:小学2年生
石垣島は、温暖な気候と豊かな自然環境に恵まれ、さまざまな新鮮な食材が手に入ります。「パイナップル」もそのひとつですが、子どもたちの中には、生のパイナップルを見たこと、食べたことがない子どもたちもいます。
石垣島の特産品であるパイナップルについて、沖縄県石垣市立白保小学校で実践された子どもたちの興味・関心を高める授業を紹介します。
石垣島のおいしい食べもの
授業の冒頭、石垣島のおいしい食べ物は何でしょうと聞きます。子どもたちからは、石垣牛、パイナップル、バナナ、八重山そば、牛乳、パパイヤ、もずく、まぐろ、豚肉(南ぬ豚)の意見が出てきました。こうして自分の住んでいる地域の食材に興味・関心を持たせるようにします。石垣島でとれる特産品について引き出し、石垣島は、豊かな自然環境に恵まれていることに気づかせることができました。
次に、給食に出てくるパイナップルの献立を提示し、本時の学習につなげます。紹介したのは以下の献立です。
~もずく丼、冬瓜のみそ汁、パイン、牛乳~
石垣島でとれた食材は、米、もずく、南ぬ豚肉、にら、とうがん、當銘さんのパイン、牛乳です。
お米は、6月に収穫された日本一早い新米です。お米の品種は、「ひとめぼれ」です。
~ハヤシライス、フルーツポンチ、牛乳~
石垣島でとれた食材は、米、南ぬ豚肉、パパイヤ、當銘さんのパイン、牛乳です。
子どもたちからは、「パインは缶詰じゃなく、石垣島でとれたものなんだ」「フルーツポンチ大好き」「パイン食べたい」などの声がありました。石垣島では、海のもの(もずく)や米、野菜、牛乳なども生産されていることを確認し、地元食材への興味を深めました。
給食を「生きた教材」として活用することで、子どもたちの食への興味関心を深めることができました。
パイナップルがどうやって実るかな
今度は、パイナップルがどうやって実るかのか、絵にかきます。
「パイナップルは、どんなふうに実っているかな? パイナップルは、木の枝になっているのかな、土の中にできるかな、パイナップルの形はどうかな、色は何色かな?」と問いかけ、パイナップルのイメージを膨らませます。友達と相談しながら、一人ひとりがイメージしたパイナップルを描くことで、積極的に参加させるようにします。
パイナップルは、植物なので、花が咲いて実がなること、果実が集まって作られる「集合果」であることを説明します。実物のパイナップルとパイナップルの花を身近に見ることで、学習意欲を高めます。 子どもたちは、パイナップルの花が、小さくうす紫色であること、花がしぼんで実がなることについて確認しました。初めて見るパイナップの花に、「かわいい」「きれいな紫色」と感激していました。
また、パイナップルの実物も触らせることで、五感を刺激し、「いい匂い」「食べてみたい」と答える子が多く、食べる意欲を高めました。
パイナップルクイズ
子どもたちに「パイナップルのひみつをもっと知りたいですか」と聞くと、全員が「知りたいです」と答えてくれ、「それでは、クイズをしましょう」、というと、「クイズやりたい」と、大喜びでした。子どもたちの興味を引きつけながら学びを深めました。
子どもたちは、全員が積極的にクイズに参加してくれました。クイズで正解すると、歓声を上げて喜んでいました。「パイナップルの食べ比べをしてみたい」と答える子や、「パイナップルを食べて育つ豚がいる」ことにびっくりする子がたくさんいました。
子どものふりかえりより
・はじめてパインをさわりました。
・パイナップルの花、うすむらさきの花を見たことがうれしかったです。
・パイナップルの一番あまいところを知りました。
・パイナップルが肉をやわらかくすることがわかりました。
・パインを食べて育つブタがいてびっくりしました。
・パイナップルは、舌がしびれるけど、こんな効果があることがわかりました。
・クイズがたのしかったです。
授業の展開例
・はたらく人とわたしたちのくらし(3年 社会科)の学習で地域の産物を生産する方のお話を聞きましょう。
知花 江梨子
栄養教諭。沖縄県石垣市立学校給食センターに勤務。
日頃から地域の食材を積極的に給食献立に活用し、地産地消を推進しています。子どもたちに「自分の体(健康)は、自分で作る」ことを伝え、自分で調理ができる子どもたちの育成に取り組んでいます。常に自己研鑽に努め、新しい知識やスキルを積極的に学び、食育指導に生かしていきたいと考えています。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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